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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
67/201

『演武』

 その戦闘法は訓練生の誰も目にしたことがないものだった。

 訓練生が取り囲んだ時、レンナの周囲にサッカーボールほどの光の玉が人数分転がり落ちた。

 それだけでも驚くことなのに、レンナが足先でトントンと床を叩くと、光の玉は意志を持ったように、彼女の腰近くまでバウンドを始めた。

 だが、その奇妙な現象は、取り囲んだ訓練生に警戒心すら抱かせなかった。

 血走った目が状況判断に狂いが出ていることを物語っていた。

 彼らのタイミングで奇声を上げ、レンナに襲いかかる。

 突然,彼らの一角が吹き飛んだ。

 サクシードは見た。

 光の玉が《《あの》》神足で超高速で蹴り込まれ、ひしゃげて訓練生三人の肚にめり込んだのを。

 嫌な音がした。肋骨が折れたのだ。三人は戦闘不能になった。

 それでやっと、訓練生たちは事態を把握した。

 光の玉は規則正しくバウンドを続けている。

 訓練生たちは光の玉を警戒して、バラバラに攻撃しようと目配せし合った。

 一人が囮となって突っ込む。レンナはスッと光の玉の間に体を滑り込ませて、真横から光の玉を蹴り込んだ。

 奇跡が起きた。その訓練生が光の玉を間一髪避けたのだ。しかし、それを予測してか、レンナは後ろの光の玉を流れるように蹴り込み、彼の顎にクリーンヒット。訓練生は宙を飛んで上半身から落ちた。

 もうなりふり構ってはいられなかった。

 訓練生の……男のメンツにかけて、負けるわけにはいかない。

 三人が目配せして一斉に襲いかかった。

 ダン、と弾む光の玉。

 レンナは空いたスペースに走り込んだ。神足は使っていない。

 追いかける三人に向かって、レンナが方向転換して突っ込んできた。

 しめた! と彼らがレンナに手を伸ばした。

 刹那、レンナは一回転捻りで宙を飛んで彼らの背後に回ると、驚くべき身体能力で光の玉を三連続蹴り込み、男たちの背面やら横っ腹をエビのようにひん曲げた。

 残りの三人は、とにかくレンナを捕まえようと躍起になった。

 だが、指一本触れることはできないまま、手が空を掻く。

 次にレンナが彼らに隙を見せて背を向けた時、それが最後になった。

 いつの間にか光の玉はレンナと残りの訓練生の間に集まっていた。

 彼らが突っ込んできたとき、レンナは振り向きざま、光の玉を集めてボレーシュート。

 男たちは三人仲良く吹っ飛んだのだった。


「——というわけで、万武・六色がどういうものかは、その目でしっかり確かめてもらえたと思う」

 担架で運ばれていく訓練生を背景に、ドギュストは平然と言った。

 レンナはとっとと退場している。

「入門したくない人——?」

 そんな訓練生は一人もいなかった。

 目の前で繰り広げられた戦闘は、常人では対処不可能だ。

 思いっきり油断していたとはいえ、猛者揃いの訓練生を、いともたやすく、木偶でも倒すように。

 視覚的な効果を完全に狙ったデモンストレーションだった。

「まぁ、あんなの見せられたら、イエスって言うしかないよね……」

 ドギュストは訓練生の心情を汲んで言った。

「彼女が万世の秘法の最高位、修法者だ。これからおいおい学科も含めて、体系づけて訓練してもらうが。見た目の派手さを追うよりも、確かな戦闘技術を培ってもらいたい。僕からは以上だ」

「押忍、ありがとうございました」

「ありがとうございました――!」

 ガルーダに続いて、訓練生は声を張り上げた。

 彼らの前に新たな幕が上がろうとしていた――。

  


 

 

 

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