『演武』
その戦闘法は訓練生の誰も目にしたことがないものだった。
訓練生が取り囲んだ時、レンナの周囲にサッカーボールほどの光の玉が人数分転がり落ちた。
それだけでも驚くことなのに、レンナが足先でトントンと床を叩くと、光の玉は意志を持ったように、彼女の腰近くまでバウンドを始めた。
だが、その奇妙な現象は、取り囲んだ訓練生に警戒心すら抱かせなかった。
血走った目が状況判断に狂いが出ていることを物語っていた。
彼らのタイミングで奇声を上げ、レンナに襲いかかる。
突然,彼らの一角が吹き飛んだ。
サクシードは見た。
光の玉が《《あの》》神足で超高速で蹴り込まれ、ひしゃげて訓練生三人の肚にめり込んだのを。
嫌な音がした。肋骨が折れたのだ。三人は戦闘不能になった。
それでやっと、訓練生たちは事態を把握した。
光の玉は規則正しくバウンドを続けている。
訓練生たちは光の玉を警戒して、バラバラに攻撃しようと目配せし合った。
一人が囮となって突っ込む。レンナはスッと光の玉の間に体を滑り込ませて、真横から光の玉を蹴り込んだ。
奇跡が起きた。その訓練生が光の玉を間一髪避けたのだ。しかし、それを予測してか、レンナは後ろの光の玉を流れるように蹴り込み、彼の顎にクリーンヒット。訓練生は宙を飛んで上半身から落ちた。
もうなりふり構ってはいられなかった。
訓練生の……男のメンツにかけて、負けるわけにはいかない。
三人が目配せして一斉に襲いかかった。
ダン、と弾む光の玉。
レンナは空いたスペースに走り込んだ。神足は使っていない。
追いかける三人に向かって、レンナが方向転換して突っ込んできた。
しめた! と彼らがレンナに手を伸ばした。
刹那、レンナは一回転捻りで宙を飛んで彼らの背後に回ると、驚くべき身体能力で光の玉を三連続蹴り込み、男たちの背面やら横っ腹をエビのようにひん曲げた。
残りの三人は、とにかくレンナを捕まえようと躍起になった。
だが、指一本触れることはできないまま、手が空を掻く。
次にレンナが彼らに隙を見せて背を向けた時、それが最後になった。
いつの間にか光の玉はレンナと残りの訓練生の間に集まっていた。
彼らが突っ込んできたとき、レンナは振り向きざま、光の玉を集めてボレーシュート。
男たちは三人仲良く吹っ飛んだのだった。
「——というわけで、万武・六色がどういうものかは、その目でしっかり確かめてもらえたと思う」
担架で運ばれていく訓練生を背景に、ドギュストは平然と言った。
レンナはとっとと退場している。
「入門したくない人——?」
そんな訓練生は一人もいなかった。
目の前で繰り広げられた戦闘は、常人では対処不可能だ。
思いっきり油断していたとはいえ、猛者揃いの訓練生を、いともたやすく、木偶でも倒すように。
視覚的な効果を完全に狙ったデモンストレーションだった。
「まぁ、あんなの見せられたら、イエスって言うしかないよね……」
ドギュストは訓練生の心情を汲んで言った。
「彼女が万世の秘法の最高位、修法者だ。これからおいおい学科も含めて、体系づけて訓練してもらうが。見た目の派手さを追うよりも、確かな戦闘技術を培ってもらいたい。僕からは以上だ」
「押忍、ありがとうございました」
「ありがとうございました――!」
ガルーダに続いて、訓練生は声を張り上げた。
彼らの前に新たな幕が上がろうとしていた――。




