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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
66/201

『開かれた門扉』

 翌朝、サクシードが訓練ドームに来てみると、状況は一変していた。

 入口近くにホワイトボードが設置され、張り紙が貼られていた。

 そこには、万世の秘法入門心得、と印刷されてあった。

 一人残らず集まって、ざわざわと話し合う。

「万世の秘法——? なんじゃそりゃ!」

「わっかんねー」

「すっげぇ怪しい響きがあるんだけど」

 大抵の訓練生はその言葉を知らなかった。

「ガルーダさん、わかります?」

「——聞きゃあわかる」

 さすがにガルーダは知っていた。

 そんな中、ジャンティは腕を組んで深く考え込んでいた。

「ジャンティ、何考えてる?」

 イーリアスに聞かれて、ジャンティは珍しく声を潜めた。

「……俺、前に聞いたことがあるんだよ。アウェンティヌスで」

「えっ」

「何とかの里ってところから来た人間に、その経歴を生かしませんか、ってな。胡散臭い宗教団体に目をつけられたかと思って、袖にしたんだが。——巡り巡ってこんなところで鉢合わせるとはな」

「ふーん、宗教なのか?」

「いや、思想だって言ってたな。あんまり変わらんと思って聞き流した」

「思想ねぇ……」

 知性派のイーリアスも、だいぶ、いかがわしく感じたようだった。

「……」

 サクシードは二人の会話を聞きながら、そう思うのも無理はない、と思った。

 信頼できる人間に言われるならともかく、初対面の相手に、そんな話を切り出されたら、ジャンティでなくても拒絶する。

 その沈黙を不思議に思ったのか、ジャンティがサクシードに言いかけた時、教官たちが現れた。

 そして、執行部部長ドギュスト・グランクの姿が。

「はいはい、みんなお待たせ。整列しなくていいから、ホワイトボードの前に座ってくれ」

 ドギュストが手を二回打って、訓練生らに指示した。

 訓練生たちはがやがや言いながら、適当にスペースを開けて座る。


「この中で万世の秘法という言葉を聞いたことある人——?」

 ドギュストがそう切り出した。

 サクシードを含む四、五人の手が上がった。

「どういう内容なのか、知ってる人——?」

 これはガルーダしかいなかった。

「うん、なるほどね。よくわかった、ありがとう」

 教官たちが人の悪い笑みを浮かべている。

 ドギュストが話を続ける。

「まず、万世の秘法が何なのか、ということだが。所謂、超能力を有している者を、管理・保護する団体だ。よく思想というふうに解釈されるが、啓蒙を目的としてないし、いかがわしい宗教団体でもない。ましてや、国絡みの陰謀でもないからね。それだけは断っておくよ、ホント」

「超能力——? 胡散臭せぇっ」

「俺たちがそいつを開発するってのかい」

 訓練生とドギュストの距離は近い。

 遠慮がないからこそ、話せることがある。

 ドギュストたちの狙いはそこだった。

「いいねぇ、その食いつき! そうこなくちゃね。万世の秘法はPOAを統括している団体でもある。必然、君たちが有識の戦闘員になることは、運命づけられている、ということだ。前述したように、君たちには万世の秘法の裏闘技、万武・六色の訓練を受けてもらう」

「はい」

 ゲルツが手を上げた。

「どうぞ、ゲルツ君」

「それは……他に選択肢はないんですか?」

「断ってもいいよ」

 ここでガクッと身体を傾けた訓練生は多かった。

「断って、今の延長線上で任務に就く。それもアリだ。その場合も柔軟に対処させてもらう。ただねぇ……血気盛んな君たちが、万武・六色を目の当たりにして、無関心でいられるかな」

「んじゃまず、そいつを拝ませてくれよ!」

「そうだ! 理屈並べられてわかるかよ」

「そうくると踏んでたよ。特別講師を紹介しよう」

 その場に現れたのは、何とレンナだった。

 前が開いた薄手の白いライフジャケットに、Tシャツ・黒のスパッツにスニーカーという出で立ち。

 しかし、そこで巻き起こった反応は――。

「うぉぉっ、めっさ美少女やん!」

「部長、わかってんじゃん」

「お嬢ちゃん、むさくるしい男の世界にようこそ!」

「ヒュー、ヒュー!!」

 思わぬことで、訓練生たちのテンションはだだ上がりになった。

(レンナ―—!)

 言葉にならない驚きを込めて、レンナを射るように見るサクシード。

 だが、レンナがその視線に答えることはなかった。

「誰かこの子の相手をしてくれる人——?」

 ドギュストが言うが早いか、速攻で十人ほどの手が上がる。

「よしよし、やる気があって何よりだ。みんな、出てきて好きなように陣形組んでいいよ」

「部長——! どうなっても知らねぇぜ」

 スケベ心全開の訓練生たちの野卑た声が、阿鼻叫喚の地獄絵図となったのは言うまでもない。

「ギャ——ッ!!」


 




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