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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
64/201

『すれ違う姉弟』

 フローラが淹れる香り高い紅茶を楽しみながら、寛いでいると、ラファルガーが席を外した。

 次にサクシードがトイレに行くため席を立った。

 終わらせて戻ってくると、レンナがリビングのドア前の廊下で待っていた。

「サクシード、話があるの。ちょっと付き合って」

「?」

 言われるままについて行き、階段を上って東側のバルコニーの手前にある部屋に入る。

 そこは書庫室だった。

 東と西の壁が一面書棚になっていて、真ん中に長方形の木のテーブルと、椅子が四脚ある。

 南の大きな窓は、ベランダに出られるようになっていて、レースのカーテンが掛かっている。

 二人は入り口近くに立って話し始める。

「ごめんね、急にこんな形を取って」

「いや……話ってなんだ」

「午前中に、お姉さんのところへメール便を送りました。その時に、一緒に私からも挨拶文を添えさせていただきました。……ここまではいいかな」

「ああ、ありがとう」

 すっかり忘れていた。いろいろなことがありすぎて、気を回すこともできなかったと、サクシードは振り返った。

「そのせいだと思うんだけど、お姉さんからすぐに電話があったの」

「姉貴から――?」

 意表を突かれて、サクシードはそのあとが続けられなかった。

 いったい何を言ってきたのだろう。

「私が応対して、いろいろお話させてもらったんだけど、サクシードには個人的に伝えた方がいいかなと思って」

 レンナの気遣いに感謝する。

「そうか、助かる。で、何だって」

「サクシードがどんなところに住んでるのか、世話人の私はどんな人間なのか、知りたかったみたい。それで、私から下宿のことと、私自身のことをいくつか話しました。……お姉さん、ずいぶん心配してらしたわよ」

「そうか……」

 姉貴のやつ、レンナに何を言ったんだ。

 サクシードはなぜか空恐ろしくなった。

「お姉さんはPOAに入ることを反対していたの?」

 レンナに聞かれて、サクシードはその時のことを思い出した。


 三週間前、蒼水の三月運観の十日——。

「なんですって、POAに入る?!」

 アニスは繊細な顔の作りを、目一杯強ばらせて言った。

「ああ、でも一度、再訓練のためにパラティヌスに行く」

「な、何言ってるの。POAって言ったら、テロの矢面に立つ最前線の仕事じゃない」

「よく知ってるな」

「あなたみたいな弟を持つと、自然に詳しくなるのよ。そんなことよりPOAなんて絶対ダメよ。命がいくつあっても足りないわ」

「命を無駄にするような仕事はしない」

「冗談じゃないわよ。命を賭けるような仕事なんて、反対だって言ってるの!」

「もう決めた。後には引けない」

「大事なことなんだから、ちゃんと聞いてよ。おじいちゃんがあなたに託したのは、命を粗末にすることじゃないわ。大切な人を見つけて、絆を作るように言ったのよ。——末永く幸せに生きていきなさい。そういうことよ」

「俺は姉貴のようには生きられない」

「そんなことはやってみなくてはわからないわ。サクシード、お願いよ、思い留まって。あなたが危ない目に遭うかもしれないのに、自分だけ安心して暮らせないわ。じっくり話し合いましょう、時間を作って」

「悪いけど、こっち(エスクリヌス)で事後処理が残ってる。終わったらすぐパラティヌス行きの船に乗る。そっちに行ってる暇がない」

「サクシード……こんなに頼んでるのに」

 アニスは泣いてしまった。

 しかし、サクシードの決心は揺るがない。

「ごめん、姉貴。じゃあ」 



 

 

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