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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
63/201

『夕食中の話』

 夕食のメニューは盛り沢山だった。

 鶏肉のソテーに野菜サラダ。ライス、クレソンのグリーンポタージュスープ。エビのハーブパン粉焼き、ブロッコリーの粒マスタード和え、キノコの炒め煮、フルーツヨーグルト。

「では、いただきます」

「いただきます」

 レンナが言って、食事が始まる。

「うまそうだ」

「いっぱい食べてね」

 サクシードが言うので、レンナも嬉しそうに勧めた。

 しばらく楽しそうに食べていたが、男性陣が大体食べ終わる頃、話題はサクシードのことになった。

「サクシード、どうだった? 訓練の方は」

「今日は午前中は二時間研修だったし、午後は救急法の訓練だから、あまり体力は使わなかった」

 ファイアートに聞かれ、サクシードが答える。

「あれ、でも、持久走をしたのよね」

 レンナが言った。

「ああ、一万メートル走っただけだった」

「一万メートルだけ?!」

 サクシードを除く五人がハモる。

「きっついわぁ。いきなり十キロも走らされるのか」

 ファイアートが聞いただけで嫌そうに言った。

「てっきり千メートルくらいかと思ってた」

 レンナも唖然として言った。

「レピア湖一周マラソンで体を慣らしてて正解でしたね」

「そうだな」 

 ロデュスが言うと、サクシードは笑った。

「今朝のことといい、サクシードの能力の高さは並みじゃないな」

 改めて驚くラファルガー。

「そうそう、サクシード。今朝、電車の中で、倒れた老婦人を介抱したんだって?」

 ファイアートが言うと、サクシードは怪訝な顔をした。

「なんで知ってるんだ?」

「俺が同じ車両で、遠くから見ていた」

 ラファルガーが種明かしをする。

「そうだったのか」

 全然気づかなかった。まぁ、ラファルガーの性格からいって、声をかけないのは当然か、とサクシードは思った。

「サクシード、すごいわ。並みいる大人を前にして、堂々と能力を発揮するなんて。普通、気後れしてなかなかそうはいかないと思うのに」

 レンナが手放しで褒めた。

「どうするかわかってて、放っておけないだろ」

「そうね。でも、そのおばあさん、サクシードが側にいてくれたことを、本当に感謝していると思う。嬉しいわ、人助けを迷いなくできる人が、シンパティーアの仲間になってくれて」

 惜しみない賛辞に、照れるサクシード。

「レンナさんの言う通りですよ。同じ場所に僕がいても、おろおろするだけだったろうなと思うと、情けないです」

 ロデュスが恥じ入って俯いた。

「ロデュスのいいところは、何でも我が身に置き換えて考えることだけど。サクシードの場合は職業意識から行動に移ったわけだし、何が幸いするかわからないのよ。答えは簡単。これをきっかけに、気になるなら勉強を始めること。できれば身につけること。そうでしょ、サクシード」

 レンナの梳いて聞かせる言葉に感心して、サクシードは頷いた。

「ああ、そうだな」

「僕でも身につけられますか?」

 期待に胸を膨らませてロデュスが聞いた。

「俺でよければ、少し教えようか」

「本当ですか?! よろしくお願いします」

 サクシードの申し出に、ロデュスが飛びついた。

「もしもし、皆さん。誰か忘れてませんか?」

 ファイアートが話に割って入った。

「あら、そう言えばフィートって、医大生だったわね」

 レンナの言葉にがっくり項垂れるファイアート。

「そこまで忘れ果ててたわけね」

「ファイアートさんも是非教えてください。僕もやるからには応急手当をマスターしたいんです」

 ロデュスが興奮そのままに言った。

「僕でよければ手取り足取り。寝違いからテーピングまで教えてあげるよ」

「うわぁ、楽しみです。あ、楽しみにしちゃいけないのか」

「よかったわね、ロデュス」

 レンナが嬉しそうに笑った。

「あの……よかったらわたくしにも、教えていただけないかしら?」

 フローラが遠慮がちに言った。

「もっちろん! フローラちゃんには、貧血から失神、人工呼吸までみっちりと……」

「バカッ」

 ファイアートが調子に乗ったのを途中で遮って、レンナが離れたところから、何と空気圧でファイアートの頭を殴った。

「いってぇ――」

「みっちり反省しなさい。私がきっちり監視してるのを忘れないようにね」

 痛そうだな、とサクシードは思った。

 レンナがとファイアートは本当に遠慮のない間柄だ。

「フローラはどうして応急手当を身につける必要があるんだ」

 ラファルガーが何事もなかったように聞いた。

「わたくしもロデュスと同じ理由なの。緊急の時、おろおろして役に立てないことを考えたら怖くなって……。いつも側で誰かがやってくれると思い込んでいたらいけないでしょう。だから」

 出自が王女だけに、緊急に対処するのは家臣だったのだろう。フローラの危惧はもっともだった。

「なるほど」

 納得するラファルガー。

「それなら、サクシードとファイアートを講師に、定期的に応急手当の講習会を開きましょうよ。この際だから全員参加して、いざという時に備えるってことで。異議のある人!」

 レンナが提案して可否を問うと、誰も異を唱えなかった。

「決まりね。よろしく、講師のお二人さん」

「ああ」

「任せとけ」

 思わぬ方向に展開した食後の話は終わり、レンナとフローラは皿洗い。男性陣はリビングに行って寛ぐのだった。


 



 


 

 


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