『報告と帰宅』
下宿シンパティーアでは、集まったサクシード以外の四人が、ラファルガーの話を聞いていた。
今朝、電車の中で、サクシードが老婦人に行った、応急手当のことを、淡々と話すラファルガー。
珍しいことに驚いていたレンナたちは、次第がわかると顔を綻ばせた。
「へぇ、すごいじゃないか。やるなぁ、サクシード。そんなこともできるんだね」
ファイアートが腕組みして唸った。
「そのおばあさんは大事に至らなかったのね」
フローラが尋ねると、ラファルガーは頷いた。
「そう思う。すぐ薬を飲んで落ち着いたようだった」
「かっこいいなぁ、尊敬しちゃいますよ」
憧れたようにロデュスが言った。
「ありがとう、ラファルガー。話してくれて……サクシードの性格から言ったら、そういうことは話さないと思うもの。でも……あなたはその場に関わらなかったのね?」
レンナに聞かれて、ラファルガーが詰まる。
「……誰でもサクシードのように行動できるわけじゃない」
「その通りね。でも、あなたが勇気を出して側に来てくれたら、サクシードも心強かったと思うわ。もう少しね!」
「……」
「なんで僕が居合わせなかったかな――? そしたら新聞の三面記事ぐらいにはなってたかもよ。『世知辛い世の中に、現れた天の御使いの如き三人』なんてな」
「フィートは論外よね……」
「なんで?!」
レンナが溜め息混じりに言って、ファイアートの妄想を止めた。
サクシードが帰ってきたのは、七時近くだった。
リビングに入ると、ファイアートとロデュス、ラファルガーがいた。
「ただいま」
「お帰り。寄り道しないで帰ってきたのかい」
ファイアートが聞く。
「ああ、帰りは何もなければ、この時間に帰ってくる」
「そいつはレンナに言った方がいいよ」
「そうだな」
すると、キッチンからレンナが顔を出した。
「お帰りなさい」
「……ただいま」
サクシードはレンナの顔を見て、なぜかホッとした。
「どうだった? 初日の訓練は」
「午前中は研修と持久走、午後は救急法の訓練だった」
「やっていけそう?」
暖かく聞かれて心安らぐ。
「ああ」
「そう、よかった。詳しいことは後で聞くわ。疲れたでしょ、すぐ夕食にするわね。リビングで待ってて」
「わかった」
リビングを出て、荷物を置きに二階の自分の部屋に行く。
明るい廊下を歩いていると、今までの生活になかった温もりが感じられた。
部屋に入り、照明を点ける。
ベッドと平机以外、何もない部屋なのに、漂う安堵感。
慣れずに戸惑っていたのが嘘のように肌に馴染む。
椅子にボクサーバッグを置き、紐を解くと、訓練で使ったTシャツとスパッツを引っ張り出す。革ジャンを脱ぎ、クローゼットから紺色のパーカーを出して着ると、日向の匂いがした。
急にお腹が空いてきた。
洗濯物を持って、部屋を出た。




