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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
62/202

『報告と帰宅』

 下宿シンパティーアでは、集まったサクシード以外の四人が、ラファルガーの話を聞いていた。

 今朝、電車の中で、サクシードが老婦人に行った、応急手当のことを、淡々と話すラファルガー。

 珍しいことに驚いていたレンナたちは、次第がわかると顔を綻ばせた。

「へぇ、すごいじゃないか。やるなぁ、サクシード。そんなこともできるんだね」

 ファイアートが腕組みして唸った。

「そのおばあさんは大事に至らなかったのね」

 フローラが尋ねると、ラファルガーは頷いた。

「そう思う。すぐ薬を飲んで落ち着いたようだった」

「かっこいいなぁ、尊敬しちゃいますよ」

 憧れたようにロデュスが言った。

「ありがとう、ラファルガー。話してくれて……サクシードの性格から言ったら、そういうことは話さないと思うもの。でも……あなたはその場に関わらなかったのね?」

 レンナに聞かれて、ラファルガーが詰まる。

「……誰でもサクシードのように行動できるわけじゃない」

「その通りね。でも、あなたが勇気を出して側に来てくれたら、サクシードも心強かったと思うわ。もう少しね!」

「……」

「なんで僕が居合わせなかったかな――? そしたら新聞の三面記事ぐらいにはなってたかもよ。『世知辛い世の中に、現れた天の御使いの如き三人』なんてな」

「フィートは論外よね……」

「なんで?!」

 レンナが溜め息混じりに言って、ファイアートの妄想を止めた。


 サクシードが帰ってきたのは、七時近くだった。

 リビングに入ると、ファイアートとロデュス、ラファルガーがいた。

「ただいま」

「お帰り。寄り道しないで帰ってきたのかい」

 ファイアートが聞く。

「ああ、帰りは何もなければ、この時間に帰ってくる」

「そいつはレンナに言った方がいいよ」

「そうだな」

 すると、キッチンからレンナが顔を出した。

「お帰りなさい」

「……ただいま」

 サクシードはレンナの顔を見て、なぜかホッとした。

「どうだった? 初日の訓練は」

「午前中は研修と持久走、午後は救急法の訓練だった」

「やっていけそう?」

 暖かく聞かれて心安らぐ。

「ああ」

「そう、よかった。詳しいことは後で聞くわ。疲れたでしょ、すぐ夕食にするわね。リビングで待ってて」

「わかった」

 リビングを出て、荷物を置きに二階の自分の部屋に行く。

 明るい廊下を歩いていると、今までの生活になかった温もりが感じられた。

 部屋に入り、照明を点ける。

 ベッドと平机以外、何もない部屋なのに、漂う安堵感。

 慣れずに戸惑っていたのが嘘のように肌に馴染む。

 椅子にボクサーバッグを置き、紐を解くと、訓練で使ったTシャツとスパッツを引っ張り出す。革ジャンを脱ぎ、クローゼットから紺色のパーカーを出して着ると、日向の匂いがした。

 急にお腹が空いてきた。

 洗濯物を持って、部屋を出た。

 


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