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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
51/201

『電話』

 午前十時になった。

 レンナは一通り家事を済ませると、オービット・アクシスで、サクシードの姉にメール便を出す準備を始めた。

 リビングのテーブルに半球画面とキーボードを用意して座る。

 画面にサクシードが打ち込んだメールを呼び出し、開けることなく、メール二便を選択する。

 恐ろしく速いタッチタイピングで文章を打つ。

 


拝啓

 初めてお便りします。

 下宿『シンパティーア』の世話人のレンナ・モラルと申します。

 先週の蒼水の三月秘縁ひえんの十九日に、サクシードさんを下宿にお迎えしました。

 サクシードさんは初めから、穏やかで誠実な態度で接してくださり、下宿人一同、喜んでおります。

『パイオニアオブエイジ』に配属されるということで、いろいろ大変かと存じますが。世話人として微力ながら、心を込めてお力添えさせていただきたいと思います。

 至らない点などございましたら、どうぞご指導くださいますよう、宜しくお願い致します。

                  蒼水の三月衆交しゅうこうの二十六日

                              レンナ・モラル



「よし……と、こんなもんかな」

 一気に打ち込んで、文章を再確認しながら何度も頷く。

 そこへフローラが、ティーセットを持ってリビングにやってきて、テーブルに置いた。

「レンナさんも、サクシードのお姉さんにお便りを?」

 レンナは照れて言った。

「そうなの。出過ぎたことかもしれないんだけど、一緒に住む以上、お世話はお互い様だから、きちんとしておきたくて」

 フローラはにっこり笑って後押しした。

「出過ぎだなんて……そんなことありませんわ。男の人は大抵、こういうことが苦手ですもの。お姉さんなら弟さんのことが心配でしょう。どんな人が側にいるのか、知りたいと思いますわ」

「そうかな」

「ええ」

「フローラ、内容を見てくれる?」

「わたくしでよければ」

 そう言って、フローラは画面をのぞき込んだ。

 簡潔明瞭な文章はとてもわかりやすい。

 彼女としては、レンナ個人がサクシードをどう思っているのか、わかると楽しかったが、それは言うまい。

「……レンナさんの立場がよくわかっていて、いい文章だと思うわ。初めての人に送るなら、十分礼を尽くしている、この文章で大丈夫」

「よかった、じゃあ送るね」

 半球に触って、メール便を相手方の住所に送った。

 レンナはオービット・アクシスを片付けて、フローラの淹れてくれた紅茶を楽しむ。

「サクシードのお姉さんって、どんな方かしらね」

 フローラが聞いた。

「もう結婚してるって言ってたよ。年も離れてるって、前に言ってたよね」

「そうだったかしら」

「うん。サクシードは顔立ち整ってるから、お姉さんもきっと美人だと思うな。それで、優しくて朗らかで心の温かい人……なんてね」

「フフッ、わたくしもそう思うわ」

「やっぱり? サクシードからは変わったお姉さんを想像できないもんね」

と言った途端、オーケストラが鳴り出した。

 オービット・アクシスの呼び出し音だ。

「誰かな……」

 レンナが立って行って、受話器を取る。

「はい、下宿シンパティーアです」

 すると、半球画面が切り替わって、そこに線の細い優しそうな女性が映っていた。

「初めまして、私、アニス・フェオークと申します。——サクシードの姉です」



 

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