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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第一部
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『サクシードの目的』

 入国管理局での手続きを済ませ、二人は昼食をとるため、肉料理店に向かう。 

 メーテスの町並みは、どこも明るいクリーム色の壁にレンガ色の屋根で統一されている。

 主街道を左(西)に入って、一区画目の裏路地。手前に噴水公園がある場所に、肉料理店『タウロス』はあった。

 船旅の様子など、当たり障りのない会話をしてきた二人は、店内の昼時の混雑に巻き込まれた。でもすぐにボックス席が空いて、座ることが出来た。

 「ラッキーだったね」

 レンナが言いながら、サクシードにメニューを手渡した。

 「私は決めてあるから、サクシードはメニューを見て決めて。お勧めは牛ロースの二百グラムコースかな」

 「じゃ、それでいい」

 あっさり決まる。

 店員が来たので、サクシードの分と、鶏の照り焼きを注文するレンナ。

 「ここのスタッフは、みんな一流レストランでの修行経験があるのよ。だからよく引き抜きの話があるんだけど、誰も抜けないの」

 「詳しいな」

 「ここじゃないけど、料理店でアルバイトしていた時に小耳にはさんだの。本当はそっちに行きたかったんだけど、駅とは反対の区画(東)だから。

 「アルバイトは、下宿の運営のためか」

 「そう。やっぱりただ始められないじゃない」

 「他にも何かやっていたのか?」

 「うん。リフォームのためにDIYの資格を取ったり、経理の勉強とか、一応一通りね」

 「結構大変なんだな」

 「でも、ずっとやってみたかったことだから。サクシードこそ、臨時警備士なんて大変でしょうに」

 「俺の場合は生活がかかっていたんだ。面倒を見てくれていたじいさんが亡くなって、姉貴は嫁いじまったし、一人で無人島暮らしするわけにもいかないからな」

 「そうだったの……それでカピトリヌスの、警備士養成学校に」

 「ああ、体力しか取り柄がなかったから、警備士を選んだ」

 「パラティヌスでも、警備士で身を立てるの?」

 「いや……パイオニアオブエイジにスカウトされてる」

 レンナが驚いた顔をした。

 「POA(ピーオーエー)に?」

 「ああ、知っているかと思った」

 「ごめんね、事前に知らされていたのは、経歴だけだったの」

 「迷惑だったか?」

 「えっ、違う違う。POAにスカウトされるなんて、有能な人材なんだなぁと思って」

 「そんなことはない。ただ目的が重なっただけだ」

 「目的?」

 サクシードは真剣な表情で告げた。

 「テロの撲滅だよ」

 射すくめられたように、動かなくなるレンナ。

 水を呷ったサクシードは、レンナの様子を見て、しまったという顔をした。

 「悪い。食事時に話すことじゃないよな」

 その言葉で、レンナの強ばった顔は、優しく包むような笑顔に変わった。

 「ううん……崇高で立派な目的ね。各地を転々としていたのは、独自で捜査するため?」

 「ああ」

 「危険な目には遭わなかったの?」

 「一度だけ、カエリウスで接触してる。不意を突かれて怪我をしたし、いいとこなしだな」

 頭を振るレンナ。

 「危ないわ。でも無事でよかった。その時何かあったら、こうして出逢っていないのよ。命を守ってくれたすべてのものに感謝するわ」

 「……ありがとう」

 まるでその場に居合わせたようなレンナの言葉に、サクシードは感謝した。

 頼んだ料理が運ばれてきたので、食事をしながら、POAにスカウトされた経緯を話す。

 

 パイオニアオブエイジ(POA)とは ――?

 一言で言えば、対テロ組織である。

 本部はパラティヌスにあり、他の主要宮廷国、カピトリヌス・カエリウス・アウェンティヌス・エスクリヌス・ウィミナリス、クイリナリスにも支部がある。

 世界情勢の混乱を目論むテロリストの無差別攻撃に対抗し、武力を持って排除する。

 軍備、情報・諜報活動、捜査・警備などを行い、国際的に強力な布陣を敷く。

 設立二年目の、新しい組織であり、人員を随時選定している。

 

 サクシードは当時、テロの頻度が高いエスクリヌスで、街頭警備士をしていた。

 そこへ研修と称して、ある人物が入り込んだ。

 その人物とは、ジュリアス・ゼム・ゼピュロス。

 パラティヌスの時期統治者となるべく、諸国で外交を学んでいる、現カピトリヌス親善大使だった。

 サクシードが警備士として自立した時点で、追跡調査していたことを明かし、POAにスカウトしたのだった。

 突然の話に戸惑いながらも、目的が一致することを確認したサクシードは、スカウトを受けた。

 パラティヌスに来たのは、POAで再訓練を受けるためだ。

  

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