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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
42/201

『サクシードの失態』

「おはよう」

 キッチンにサクシードが現れた。

 ガス台で野菜スープを煮ていたレンナは、くるっと振り返って笑顔で挨拶した。

「おはよう、サクシード!」

 近づいてくるサクシードの顔を見て、レンナは、ハッとした。

 とても希望に満ちた、清々しい顔つき。POAに賭ける心意気が感じ取れた。

 まるで母親のような寛容な気持ちになって、優しく笑いかける。

「とてもいい顔をしているわ。今日の準備は万全ね」

 サクシードはそう言われて、顎に手をやった。

「顔に出てるか? だが、隠しようがないからな」

 クスッと笑って、レンナがお玉をひと混ぜした。

「今日が新たなスタートだもの。無理ないか」

 その言い方が、年の離れた姉に似ているような気がして、サクシードは懐かしく思った。と、同時に、しまったと思った。

「どうしたの?」

 レンナが聞くので、サクシードはチラッと彼女を見て打ち明けた。

「いや……姉貴に知らせるのを忘れていた」 

「あっ」

 レンナも出会った初日に聞いていたのに、すっかり取り紛れていた失態に気づいた。

「慌ただしかったからな。POAに入ることしか言ってない」

「連絡取れなくて、お姉さん心配してるわね……」

「そうだな……」

と言ってもどうしたものか。今日は時間が取れない。

「オービット・アクシス(通信機器)で入力できる?」

レンナが助け舟を出す。

「ああ」

「メールをタイピングしてくれれば、午前中にでも送ってあげる。こっちに来て」

 サクシードを伴ってリビングに来たレンナは、サイドボードの上にある、透明な半球状の通信機器をテーブルに移動する。

 キーボードを持ってきて、電源を入れると、半球の中に青い長方形のディスプレイが映し出された。

 レンナが半球に触れながら操作すると、ディスプレイが切り替わって、メールマークが表示される。

 あとはキーボードで文書を打ち込むだけだ。

「はい、あとは大丈夫?」

「ああ」

「じゃあ頑張って。今日が特別な日なんだって知らせてあげて。あ、ここの住所は、   

レピア湖畔区バッソール町湖岸通り17-3よ。覚えきれないか、メモに書くわね」

 至れり尽くせりだった。

 姉が二人いるようだ、とサクシードは思った。

 


姉貴へ

 連絡が遅れて悪い。

 POAに入ることが決まって、パラティヌスに再訓練のために住むことになったのは、言ったとおりだ。

 推薦人のジュリアス親善大使の計らいで、今は下宿にいる。

 住所は、レピア湖畔区バッソール町湖岸通り17-3、下宿『シンパティーア』だ。

 POAのことは、今日が初日だから詳しいことは言えないが、下宿の仲間は気の好いやつらだから、何の心配もいらない。

 姉貴は季節の変わり目で、体調崩してないか?

 子ども産みたいとか言ってたけど、無理するなよ。

 義兄さんと仲良くな。

 とりあえず、今日はこの辺で。

                               2980.3.26 

                             サクシードより                      

        


 サクシードはキーボードで手紙を打ち終えて、文章を再確認しながら、最後の方を見て「俺は親か」と額に手をやった。

とそこへ、フローラがやってきた。

「おはようございます」

「おはよう」

 挨拶を返すサクシード。

 フローラは、オービット・アクシスを前に、疲れているようなサクシードを見て、気遣った。

「あまりオービット・アクシスを使ったことがないんですの?」

「え? あ、いや……文章はもう打ち終わってる。ただ保護者みたいだと思って」

「どなたに送るんですの?」

「姉貴なんだ」

「まぁ……!」

 クスクスとフローラは笑って、一言置いた。

「お互いを思う気持ちから出た言葉なら、そうなると思います。気にしなくても大丈夫ですわ」

 ——姉貴が三人になった。

 オービット・アクシスを元の位置に戻して、サクシードもフローラに続いてキッチンに入った。

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