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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
35/201

『サクシード、因果界へ』  

 百聞は一見に如かず。

 というわけで、フローラを除く四人は因果界へ《《往く》》ことになった。

 パラティヌス上層は呪界法信奉者も手が出せないが、万が一のため、フローラは因果界に入らない。

 そして、異界に向かった経験のないサクシードを引っ張り込むには、レンナの手ほどきが必要だった。

 カウンター前の空いたスペースに、二人が向かい合う。

「動かないでね」

 そう言ったレンナの右手に、突然、光の槍が出現した。

 くるっと華麗に回してから、言葉も殺気もなく、槍をサクシードの胸に繰り出した。

 一瞬の逡巡が決定打だった。

 かくして五人は因果界にテレポートしていた。

「まんまとしてやられたな、師匠」

 苦笑するサクシードに、レンナはウインクして手を合わせ、仕草で「ごめん」と謝った。

「ここが因果界か……」

 現実世界(真央界)そっくりの湖岸の景色が広がっていた。

 だが、建物がない。

 下宿があるはずの場所には、草原がぽつねんとあって、西側に並ぶ林はそのままあった。

 とても見晴らしのいい、健やかな自然が息づく場所だった。

「浸ってるとこなんだけど、サクシード。これから世にも恐ろしい思いをするかもしれないのに、なんでそんなに余裕ぶっこいてんのよ?」

 ファイアートが腕組みして睨む。

「さぁ、どうしてかな」

 サクシードが傍らのレンナを見やる。

「?」

 レンナはきょとんとしている。

 この奇妙な間合いに、立会人のファイアートたちの方が顔を見合わせている。

「準備はいい?」

「ああ、頼む!」

 望むところだ。

 サクシードは間合いを取って、レンナと対峙した。

 風が、流れが変わった―—。


 レンナが左手を斜め上に上げた。

「我が左手は、風纏い放つべし!」

 よく透る声が、異次元の彼方から風を呼ぶ。

 サクシードはそこにさしたる変化を認めなかった。

 しかし、一瞬にして間合いを詰められた、その驚くべき速さ。

 至近距離から風の塊が、一極集中して鳩尾に命中した。

「ぐっ」

 風が体の外へ逃げ場を求めて吹き荒れる。

 その圧に抗っていると、レンナが次の攻撃に移る。

「出でよ、闇の陣!」

 突然、足元から這い上る闇。辺りが暗転する。

 これで風の動きが読みにくくなった。

 だが、レンナは近くにいない。

 サクシードがそう判断した矢先、右側から何かが飛んでくる気配があった。

 直撃を避けると、次々とサクシード目がけて風刃が襲う。

 派手に巻き上がる草の混じった土煙。

 その中に紛れて、レンナが再びサクシードに迫る。

「凪! 律! 烈!」

 風を治め、自在に駆け、体の自由を奪う。

 ヒットアンドアウェイが繰り返された。

 サンドバック状態になりながら、サクシードは考えていた。

 風の弱点は——?

 レンナがサクシードの懐に飛び込む。

「スパイラル・ローリング!!」

 巻いた風圧のアッパーカットが決まった―—かと思われた。

 なんとサクシードは、間一髪それを躱して、レンナの背後に回り、両腕を固めて羽交い絞めにした。

「!」

「それまで!」

 サクシードは言った。

「風は風上から吹くから命になる。背後を取られては、攻撃に出られない」

 レンナはさらなる攻撃に移ろうと、今度は右手に炎を纏おうとした。が、唐突に諦めた。

「……その通りね、私の負け」

 勝負は決した。

 サクシードはその言葉を潮に、レンナの腕を離した。

「やっぱり、最後は戦いの勘が勝負を分けるのね」

 振り返って、レンナは左手を腰に置いた。

 土埃にまみれた顔で、サクシードは、にっと笑った。

「いや……初めて見る戦法だった。万武・六色の名は伊達じゃないな」

 ポン、とレンナはサクシードの胸板を叩いた。


 

 


   

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