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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
32/201

『異変』

 その後、「レンナほどではないけど……」と言いつつ、ファイアートのバイオリン演奏も披露され、フローラとのピアノ合奏も実現した。

 楽しい曲ばかりだったが、みんなのリクエストでフローラのピアノ独奏で、演目の幕を引くことになった。

 ——サクシードはまたしても驚かされた。

 フローラの音楽は、咲き乱れる花園だった。

 風待つ中にも揺らめき、万色溢れる花々が一面に広がる。

 癒しがこんこんと湧き出ている。

 花たちはそう在ることに喜びながら、泉のようにエネルギーを(ほとばし)らせて歌っているのだ。

 ただ、夢幻のように美しかった。 

 そうしていながら、サクシードには、フローラが活けた白とピンクのチューリップに目を向ける余裕があった。

 風にかすかに揺れながら、一緒に歌っている——!

 こんなことがあるのだろうか。

 サクシードは目を疑った。

 歌っているという表現が適当でないなら、エネルギーが花芯から躍り出ている、とでも言うべきか。

 シンパティーアに来てから、鋭敏になっていたサクシードは、その現象をしっかりと捉えていた。

 突然、ガクンと後頭部を殴られたような衝撃が彼を襲った。

「サクシード!」

 右隣に座っていたレンナが、よろけたサクシードを支える。

 ピアノ演奏はピタリと止まった。

「おいおい、大丈夫か?!」

「しっかり、サクシード。私の声が聞こえる?」

「あ、ああ、大丈夫だ。急にブラックアウトしたから、意識が飛んだ……」

 目を覆っていた右手をゆっくり下ろし、心配そうに二の腕に両手を添えた、レンナに笑いかける。

「ありがとう、もう心配ない」

「サクシード……」

 その様子を見ていたフローラが処方箋を出した。

「レンナさん、ロックウォーターのフラワーエッセンスを、飲ませてあげてくださいな」

「わ、わかった!」

 慌てて母屋のリビングにフラワーエッセンスを取りに行くレンナ。

「あー、びっくりした。これってもしかして、意識の限界を超えたから?」

 ファイアートの言葉に、ゆっくり頷くフローラ。

「そうです……サクシード、心配いりませんわ。目眩は一過性のものです」

「ああ、わかった。肝に銘じる」

「無理しないでくださいな。そういう状態の時は、自分を叱咤激励するのは逆効果なのです。力を抜いて、安静に。今、レンナさんが特効薬を持ってきますから……」

「……」

 ロデュスは張り詰めたように、サクシードを見つめていた。

 その肩を叩いて、ラファルガーが目配せして頷く。

 意味を悟って、ロデュスも頷き返すのだった。


 三分も経たずに、レンナは離れに戻ってきた。

 サクシードの左脇に両膝を立てて座ると、こう言った。

「あのね、サクシード……これはロックウォーターというフラワーエッセンスよ。自分に厳格な人に、心のゆとりや柔軟さを呼び起こしてもらうためのものなの。是非飲んでほしいんだけど、いいかしら?」

 心配そうな顔をして自分を見つめるレンナを見て、ノーと言えるだろうか?

 逆効果と言われてはいたが、サクシードは肚を決めた。

「わかった」

「よかった! じゃあ早速、飲み方を教えるわね。キャップの先がスポイトになっているから、こうやって中の液体を吸い上げて……舌の裏に七滴垂らすの。こうよ」

 言ってレンナは自分も舌の裏に液体を垂らして見せた。

「……あとは、口の中に広げる感じで馴染ませて飲み込んでね。副作用はないと思うから……はい!」

 小さな茶色の花の絵のラベルが張られた遮光瓶を手渡されて、サクシードは言われた通り、口に含んだ。

 スコンと心のどこかが嵌ったような感覚がした。

 いささか恐れながらチューリップを見てみたが、花はいつもの通り花だった。

 やっと安堵して、レンナを安心させた。

「……大丈夫、何ともないよ。ありがとう」

「うん……」

 レンナはそっと立ち上がって、サクシードのソファーの後ろから回って、彼の右隣に戻って座った。

 だが、それで終わりではなかったのである。


 





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