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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第一部
19/201

『キュプリス宮殿』

 いよいよキュプリス宮殿内に入る。

 入口は丘の下から、南に真っ直ぐ延びて階段になっている。その途中から入り、紺と白の詰襟服を着た警備員に身元確認される。レンナもサクシードもIDカードを提示し、カードスキャナを通して許可が出た。「結構です、お通りください」と通され、奥に進む回廊が終わると、なだらかな階段がジグザグに縫っていた。

 上っていく途中に、騎馬像や群像の彫像が配置されている。他にも休憩所や小庭園などがある。もちろん手入れされた大きな花鉢が、至るところに置かれ、花の宮廷国を演出している。

 宮殿は洗われたような白堊の壁と、深紅の屋根が印象深く、古めかしい感じはしない。階段も石壁も台座も白で統一されていて、幾分眩しい。

 それにしても凄いのは、装飾の見事さだ。

 サクシードにもわかるほど、繊細で緻密でありながら優雅な……それが程よく、至る所に施されている。葉一つ、花一つデザインするにも、葉脈や花びらのグラデーションまで表現している。まるで芸術家が妥協せずに作り上げた作品のようだ。

 これらを保護するために、パラティヌスでは修復家を育成、擁護しているとレンナは教えてくれた。

「……平和は隙を許さないものなのかな」

 こんなところからも、サクシードはパラティヌスが平和な理由を感じ取ろうとしていた。

 レンナは、サクシードの意識が完全にPOAにあることを理解して、案内もそこそこに階段を昇った。

 

 階段を昇り切ると、巨大な石柱が等間隔に三本建つ神殿風の入口があった。

 入口を潜り、中に入ると急にしんと静まり返った。天井は高いが、光がどこからも差し込まないので、シャンデリアが吊り下げられていた。床には赤い絨毯が敷かれている。

 真っ直ぐ歩いて行くと、巨人が通るのかというほど、大きな鉄扉があった。すぐ右脇に普通の通用門があり、通常はここから出入りする。

 レンナはインターホンで受付と話す。

「レピア湖バッソール町在住の、レンナ・モラルと申します。今日はパイオニアオブエイジに推挙されているサクシード・ヴァイタルさんをお連れしました」

 すると返事があった。

「照会します。スキャナにIDカードをスラッシュしてください」

 二人のIDカードをスキャナに通すと、ピンポーンと音がして扉がスライドした。

 通り抜けると、そこは吹き抜けのフロアになっていた。

 受付のところに行く。警備員が二人いたが、視線をくれることはなかった。

 レンナが話を通す。

「POAの本部に行くようにと伺っているのですが……」

「はい、承っております。ただいま本部に照会致しました。少々お待ちください」

 きりっとしたまとめ髪の受付嬢に促されて、二人は視線を交わした。すぐに応答はあった。

「はい……はい、ではそのように致します」

 受話器を置いて、受付嬢はサクシードを見た。

「サクシード・ヴァイタル様」

「はい」

「案内の者が参ります。お一人でPOA本部においでください、とのことです」

「わかりました」

「レンナ・モラル様」

「はい?」

 レンナは意外そうに返答した。

「面会をご希望される方が、貴賓館にいらっしゃいます。是非お出で願いたいとのことです。どうなさいますか」

 サクシードは、横でレンナがたじろいでいるのがわかった。

「お、お伺いします」

 しどろもどろに答える。

「ご案内は必要ない、とのことでしたが」

「はい……大丈夫です」

「畏まりました。それではあちらでもう少しお待ちください」

 指し示されたソファーに行き、座る。

「はぁっ」

 座るなり大きな溜め息をつくレンナ。

「誰なんだ、面会希望者って」

 サクシードが聞くと、レンナは目を泳がせた。

「え? えっとあの……前に私、ウィミナリスに留学してたことがあるって言ったかな」

「そうなのか」

「うん、その時のね、知り合い。しばらく会ってなかったから」

「でも貴賓館にいるとか何とか……」

「それは……うーんと、しばらく会わないうちに、偉くなっちゃったのかなぁ」

 どうも躱し方が不自然だ。あまり会いたくない相手のようだが……。

「本当に……」

 大丈夫なのか、と聞こうとすると、後ろから声がかかった。

「サクシード・ヴァイタル君」

 見ると、黒髪をオールバックに撫でつけた若い……二十代後半くらいの男性が立っていた。

 サクシードはすっくと立った。

「私です」

「君か……いい体格してるじゃないか。これは即戦力かな」

「いえ、再訓練を受けるようにと指示されています」

「うん、そうなんだけどね。ああ、そんなに緊張しなくてもいいよ。今日は登録だけだからね」

「はい……」

 何やら気勢を削ぐ話し方をする人物だ。サクシードは拍子抜けしそうだったが、気概は保った。

 サクシードは後ろで、レンナが必死に両手でバツを作ってブロックサインを送っていたことに気づかなかった。吹き出す男性を見て、サクシードは怪訝に思うのだった。

「それじゃ、行こうか」

 促されてサクシードが行こうとすると、レンナが走り寄ってきて、紙片を握らせた。

 開いてみると

 ”二時間後に、正面入口で”

と書かれていた。

 フッと笑って、心置きなくPOA本部へ向かう。

 レンナは姿見えなくなるまで見送った。 

 





 

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