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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第一部
18/201

『首都キュプリス』

 九時半になった。

 レンナとサクシードは早めに下宿を出た。

 バッソール駅で、十時二分の首都行きの電車に乗る予定だ。

 余裕があるので、朝のバッソール町を歩く。

 まばらな家々はどれも大きく、広い敷地を持っていた。下宿の広さも珍しくないことがわかる。

 やがて商店街に差し掛かり、道路の両脇に二十軒ほどの店が並ぶ。

 食料品店、精肉店、パン屋、米屋、文房具店、手芸店、洋品店、クリーニング店、花屋、雑貨店……。

 日常生活はこれだけあれば足りるだろう、というぐらいの店が揃っている。首都近郊なだけある。

 そこでレンナの知り合いの店主と挨拶を交わしたり、サクシードと一緒なのをからかわれたりした。


 バッソール駅構内——。

 下りのホームである、三番線の真ん中辺りの列に並ぶ。三、四十人ぐらいの客がいて、ざわめいている。

 十時二分発の電車は時間通り到着し、乗り込むとかなり混んでいた。

 二人は入口付近の吊り革を掴み並んだ。

 電車はゆっくり出発すると、すぐに森の中に入った。と思うと森は終わり、突然広い湖に出た。

「水甕湖よ、レピア湖の五倍の広さがあるの」

 レンナが説明した。

 サクシードは湖面の光の反射に目を細めながら、湖島の宮廷国と呼ばれるエスクリヌスの風景に似ていると思った。エスクリヌスも島々を橋で中継していた。パラティヌスの湖には島はないが、高い石柱が建てられた上に、道路や敷地が作られている。人工島同士は橋で繋がっている。

 電車は湖面の二メートルほど上を走り、水甕湖駅に滑り込んだ。

 駅は人工島の一つのようだったが、石造りの重厚な建物だった。首都だというのに二本しかない線路のためか、利用客の割にホームは狭い。

「首都の地下には地下鉄が通ってるから。ここは人工島で生活している人のための駅なの」

と、レンナが説明する。

 電車はやがて発車して、目指すキュプリス駅に向かった。

 車内アナウンスが定刻通りの到着と、乗換案内を伝える。

 押し寄せる客から庇うように、サクシードはレンナの後ろに立った。それがわかったレンナはサクシードに笑いかけた。

 駅に到着し、吐き出された客の数は三百人はいただろう。階段が客を消化するのにしばしかかり。上りきったところで、レンナが「こっち!」と右を示した。

 改札口を抜け、混雑するエントランスを通り、幾つもある出口から真ん中を選んで向かった。


 サクシーは目の前に広がる光景に圧倒された。

 真ん中に道路が一本通っている。その両脇が見渡す限り花園だったのだ。

 入口に建てられた、二つの塔を抜けると、もっとはっきりわかった。季節的にパンジーやビオラ、葉ボタンや葉物だけだが、植えられている数が半端じゃない。

「すごいな……」

「さすが花の宮廷国って感じでしょ」

「ああ」

「今は冬仕様の庭園だけど。春と夏はもっと彩り豊かよ。ここは花翔(かしょう)の五月の『女神の祭典』のメイン会場だから、こんなに広い庭園になってるの。その時その時で様相が違うわ」

 歩いていくと、中央がすり鉢状になった舞台がある場所に出た。

「ほら、あそこでフローラが献舞を踊るのよ」

「へぇ」

 あんなところで踊っていて、なだれ込まれたらどうするんだろうと、サクシードは思わず考えた。

「フローラ、すごく綺麗なのよ。サクシードも見れるといいんだけど」

「どうだろうな」

 POAに祭典も何もないだろう。浮足立つのは考えものだ。

 つと、視線を湖のある方角に移すと、十数メートルはあろうかという石像がある。

「あれは……」

「え? ああ、花の女神フローラの神像よ。パラティヌスには女神が降臨して国造りを望んだっていう伝説があるのね。その伝説になぞらえて造った物なの」

「ずいぶん大がかりだな」

 他の宮廷国にも守護神はいるが、ここまで誇張された奉られ方をしているのは初めて見た。

「今はパラティヌスの平和のシンボルね」

「なるほど」

 右奥に視線を転じると丘があって、その上に宮殿らしき立派な建物が見える。あれがパラティヌスの中枢、キュプリス宮殿かと見当をつける。

 その下に大きな建物が一列にずらっと並んでいる。レンナによると、官公庁や公共施設(博物館や図書館)ということだった。  




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