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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第一部
16/201

『朝の風景』

 三十分も経った頃だろうか、誰かがリビングのドアを開ける音がした。

 キッチンに顔を出したのはフローラだった。

「おはようございます」

「おはよう!」

「おはよう」

 丁寧な挨拶の後、フローラはサクシードがいたことについて何も言わなかった。

「よく眠れまして?」

「おかげさまで」

 フローラはランチョンマットや食器、箸などを用意しながら、レンナと会話する。

「今日一日快晴みたいだね」

「ええ、洗濯日和ね」

「うん、洗濯機フル稼働させなきゃ」

「昨日、出来なかったから……」

「まぁね。もう回そうかな」

「もういいわよね」

「よし、回そう! ちょっと行ってくる」

「いってらっしゃい」

 レンナが行ってしまい」、サクシードはフローラと二人きりになってしまった。

 サクシードが何を話したものかと思っていると、フローラから話しかけられた。

「偉いのね、早起きしてお手伝いするなんて」

「いや、早く目が覚めたので」

 心持ち畏まると、フローラは気持ちを読んだように言った。

「そんなに畏まらないで。みんなに接するように、普通に接してくださいな。みんなそうしているし、誰も咎めたりしませんから」

「……難しいです」

「警備士さんですものね。でも、あなたが守るべきなのは、危険にさらされている市民社会であって、わたくしではありませんわ」

 きっぱりそう言われて、サクシードも思い直した。

「なるべく早く慣れるように……する」

 フローラはサクシードの努力に微笑み返した。

「ところで……起きる時間は、レンナさんと重ならないようにしてあげてくださいね。寝起き顔で挨拶するなんてことがないように」

「——!」

 さっきのことを見ていたように言うフローラに、恐れ入るサクシードだった。

「おはようございまーす」

 明るい声とともに、ロデュスがやってきた。

 サクシードやフローラと挨拶を交わし、手伝うことがないとわかると「すみません」と言いながら席に着いた。

「疲れてるサクシードさんより遅いなんて、たるんでますよね。僕もあと三十分早起きしますよ」

 などと言い出したので、戻ってきたレンナが止める。

「いいの、いいの! みんなで早起きしてもしょうがないんだから。ロデュスは徹夜することもあるんだし、普段はペースを乱しちゃダメよ。サクシードも、POAの訓練で大変なんだから、疲れたら休んでいいんだからね」

「そうですか……なんだか申し訳ないな」

 ロデュスは頭を掻いた。

「……」

 サクシードは無言だったが、朝は早起きして手伝うことにした――その方がメリハリがつく。

「グッドモーニング!」

 ファイアートが妙なイントネーションで挨拶しながら、両手を広げてやってきた。

 フローラとロデュスがくすくす笑う。

「んもう、気が抜ける。挨拶くらい普通にできないの⁈」

 怒るレンナに、ちっちっと人差し指を振って見せる。

「ノンノン! 挨拶は日替わりって決めてるから、野暮なこと言わない」

「あっ、そ」

 レンナは呆れて打ち切った。ガス台の前で腕を組んでいるサクシードに、こっそり詫びる。

「ごめんね、朝からこんなで」

 サクシードは笑って言った。

「面白くていいんじゃないか」

「よかった」

 レンナも笑って、みんなに向き直った。

「さて! 朝食にしよっか」

「まだラファルガーが来てないよ」

「来たぞ」

 出し抜けにラファルガーが現れた。

「うーわっ、まるで計ったよう」

 ファイアートがくねくねと身体を揺らしながら、背筋を伸ばした。

「おはよう、ラファルガー」

「おはよう、キッチリ君」

 要らないことを言うファイアートをレンナが叩く。

「おはよう」

 無表情で返すラファルガー。

 他のみんなも挨拶して、ご飯が茶碗に盛られ、味噌汁が配膳された。暖かな湯気が立ち上る中、全員が手を合わせる。

「それでは、いただきます」

「いただきます」

 朝食は好評だった。

 焼き魚が絶妙の焼き加減で、ファイアートを始め、みんなでサクシードを褒めちぎった。味噌汁としらすご飯も、男性陣が二杯目をおかわりして、鍋と御櫃は空っぽになってしまった。さすが食べ盛りが揃っているだけのことはある。

 食べ終わって、ほうじ茶を飲んでいる時、全員の今日の予定を話し合った。


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