表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パイオニアオブエイジ  作者: どん
第一部
12/201

『自己紹介』

 リビングに戻ると、みんなソファーに座っていた。

 レンナとサクシードも、ドア側のソファーに並んで座る。

 テーブルにはティーセットが揃っていて、フローラが給仕し、全員に紅茶が配られた。湯気とともに立ち上る香は深く柔らかで、その場を和ませる。

「では、これから自己紹介します」

 レンナが仕切って話が始まる。

「順番はサクシードから右回りに、ぐるっと一周ね。内容は個人に任せるけど、わかりやすいように心がけて。じゃあサクシードお願いします」

「わかった」

 サクシードは一拍置いてから、話し始めた。

「サクシード・ヴァイタル、十七歳です。出身はカンタセルゴ諸島チアフル島で、家族は年の離れた姉が一人います。十四歳の時に自立して、カピトリヌスの警備士学校で半年訓練を受けて、それから世界各地を転々として、臨時警備士をしていました。今回、POAに所属し、再訓練を受けるためにパラティヌスに来ました。慣れないうちは迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします」

 ぐっと頭を下げる潔さに、拍手が起こる。改まって敬語を使う礼儀正しさも好ましい。

 しかし、その次からはいきなり砕けだした。

「次は僕の番だね。みんなのニュースソース、ファイアート・メイタリス、十九歳。メーテス生まれのメーテス育ち。両親は健在で一人っ子。自然治癒力に興味があって、医学を志してるけど、医者になるつもりはなかったりする。陽気に楽しくがモットーで、趣味はバイオリン、演劇、ダンス、サーフィン、テニスetc……。好きなのは賑やかさとユーモア。嫌いなのは湿っぽい雰囲気と厭世観。最近はまってるのが、ニューエイジ探検。これが刺激的で、目からウロコが落ちる。神秘体験・心霊・超常現象! 日は浅いけど、これからも邁進するつもりさ。よかったらみんなも……」

「ストーップ!」

 レンナが待ったをかける。

「もう! だからそういうことは、人それぞれ段階があるんだから。いきなり”あなたの知らない世界”の扉を開かないでよね。次、ラファルガーお願い」

「ちぇっ」

 ファイアートの舌打ちをかき消すように、ラファルガーが話す。

「ラファルガー・サインス、十八歳だ。クイリナリス、アルガミス領サラサード出身。家族構成は父と妹二人。パラティヌスには生物学の研究員になるために来た。趣味は読書と演芸だ」

と、そこで終わってしまった。

「……ありがとう。次、ロデュスどうぞ」

「はい。ロデュス・スカルフ、十六歳です。出身はカピトリヌス、リテラチュア領ユーガナンスで、家族は……いません。彫刻が盛んなところで育ったので、勉強をしたくてパラティヌスに来ました。今はこのバッソール町で、名産の木彫り工芸品を作るのが楽しいです。趣味……というか、やっぱり美術に関することなら何でも好きです。あ、サクシードさん、工作好きじゃありませんか?」

 突然話を振られたが、サクシードは丁寧に答えた。

「生活に必要な物しか作ったことがない。それとは別だろ?」

「そうですね。僕の言うのは、生活のちょっとした雑貨小物を作ることなんです。箱とか額縁とか、飾り物とか。いっぱいあるんですけど、自分で作ってみるのも面白いんじゃないかと思って。サクシードさんの部屋には飾り棚があるし……どうでしょう?」

「ああ、だったら簡単なものを見繕ってくれ」

「はい」

「ナイスよ、ロデュス。きっといい息抜きになるわ。サクシードは物作りが好きなのね」

「割とな」

「なるほど。じゃあ次はフローラね」

「はい。フローラ・フラメン、十六歳です。出身は北端国セライです。家族は父だけで兄弟姉妹はいませんわ。パラティヌスの祭典奉仕者の斎官、フラメンを務めています。小さい時から舞踊を習っていて、大好きなのですが、たまに気がつくと踊っていたりするので、驚かないでくださいね。他には花に関するすべてのことと、編み物、ピアノ、乗馬、それからお茶を淹れるのが好きです」

 見かけによらず、活発なんだな。とサクシードが思っていると、周りから補足があった。

「サクシードは知らないと思うけど、斎官っていうのは、女の子なら誰でも憧れる役職なんだよ。まず、国伝統の献舞(けんぶ)が踊れなくちゃならないし、作法も厳しいし、もちろん容姿端麗じゃないと選ばれないんだ」

 男のファイアートが言うと、違和感があるが、次にレンナが言ったことは、サクシードの意表を突いた。

「それだけじゃなくて……フローラ、言っていい?」

「ええ」

「フローラは、北端国セライの王女様なのよ」

「⁈」

 驚いてフローラを見たが、彼女はただ微笑むだけだった。

「びっくりでしょ。でも、フローラは斎官の厳しい審査基準をちゃんとクリアしてるのよ。周りが無条件に斎官にしようって、祭り上げたのをきっぱり断って。なかなか言えないと思うわ」

「そんなことないわ」

「そんなことあるよ!」

 頬をほんのり赤らめるフローラを褒めるレンナ。

 しかし、サクシードにはもっと気になったことがあった。

「……ここにいていいのか? 警備は?」

 王女ともなれば、国の重要人物。テロリストの標的にもなる。それが民間の下宿で暮らしている。あり得ないことだった。

「さすがサクシード、着眼点が違うわね。大丈夫、心配しないで。一般にはもちろん知られていないし、この家の周りはセライ国の警護団がついて、二十四時間監視してるから」

 レンナが事情を説明すると、サクシードは一応納得した。

「物々しくてごめんなさい。でも、なるべく生活に干渉しないように配慮しますから」

「おかげでパラティヌス(いち)、安全な下宿なのよね、ここは」

 明るく笑うレンナを見て、度量の広いヤツだと、サクシードは認識を改めた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ