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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第三部
103/202

『春の食卓』

 もう献立は考えてあった。

 たけのこ御飯に、はまぐりの潮汁。鰆の西京味噌焼き、菜の花のお浸し、デザートに旬の苺と甘酒アイス。

 たけのこは昨夜から灰汁抜きしてあり、ハマグリの砂も吐き出してあった。

 冷蔵庫には、この日のために買い出した、パラティヌス・ユーフォルビア地区名産の苺ワインが程よく冷えている。

 米を研いだ後、たけのこを薄切りするレンナ。

 油揚げを油抜きする準備をするフローラ。

 二人の会話はいつもより弾んでいる。

「サクシード、ますます男らしくなりましたわね」

「そうね、やっぱり職業柄かな……」

「レンナさんが命綱をしっかり握っていたからですわ。ファイアートではないけれど、どんな約束があれば背中を預けてそれぞれの生き方ができるのか、興味がありますわね」

「……今だから言えるんだけど。『蓮の台』って伝えたの」

「レンナさん……!」

 フローラはその言葉が意味するところを、すぐに理解した。

「だから、天上にもし往けたらサクシードと手を取りあいたい、って願いを込めたの」

 痛いくらいの気持ちを知って、フローラが涙ぐんだ。

「フローラ……?」

「大丈夫ですわ。サクシードは帰ってきました、あなたの許に」

「うん、そうね」

「絶対、責任を取ってもらいますわ」

「えっ? そんな大袈裟な」

「大袈裟じゃありませんわ……!」

 フローラは辛そうに言った。

「レンナさん、これだけは忘れないで。あなたが神々の意志を体現した心身を、損ねるようなことがあれば、この世では……その絆を繋ぎ止めてくれるのはサクシードしかいないんです。どうか大地に根差して生きていくと決意してください」

 レンナの左腕に両手を添えて、フローラは懇願した。

 その手に右手で触れて、レンナは笑った。

「私、どこにも行かないよ?」

「……」

「フローラの幸せを見届けた後も、サクシードと協力して生きていくから……それでいい?」

「約束、ですよ?」

「うん、約束」

 指切りげんまんして笑い合うと、二人はいそいそと夕食作りを急いだ。 


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