『シンパティーア到着』
サクシードたちは十六時三十五分に、下宿『シンパティーア』に辿り着いた。
外はまだ明るい――夕日に染まる家屋は、あの頃とまったく変わらずサクシードを出迎えた。
「……懐かしいなぁ」
それはやっと帰りついた故郷だった。
住んでいたのは約一年だったが、思い出がありすぎた。
ここで出会ったファイアートたちも、レンナ同様、縁の深い人。気心の知れた仲間たちだ。
感慨深げなサクシードを、レンナは好きにさせておいた。
幸福という名の漣が打ち寄せている心を。
しかし、そういうことが長く続かないのも、シンパティーアだった。
キィィーッと、玄関のドアが静かに開いて、そこにいたのは……
「口惜しや、サクシード……この恨み晴らさでおくものか……」
ファイアートだった。
ご丁寧に定番の三角巾まで頭につけている。
「……」
「くっくっく……まずは夜毎、仕打ちの数々を囁こうか。はたまた食事に細工をしようか、それとも……」
「……」
「ちょっと、止めてよ!」
三角巾をむしり取って、ファイアートが不機嫌そうに言い放つ。
「相変わらずだな、ファイアート」
「何が相変わらずだ、この野郎!」
ファイアートがダダダッと距離を詰めて、サクシードの首根っこを押さえて、頭をグリグリ拳でめり込ませた。させたいようにさせるサクシード。怒りの収まらないファイアート。
「ったく悟り澄ましやがって! それがベストだったと思うなよ。このっ、このっ!!」
五年分の煮え切らないストレスを発散させる。
レンナは口を手で押さえて笑っている。
玄関からロデュスたちが揃って出てきた。
「あーあー、なんてことするんですか、ファイアートさん!」
ロデュスが背が低いながらも、長身のファイアートを羽交い絞めにした。
「うが――っ!!」
「おい、やめろ」
ラファルガーがファイアートの前に回って、サクシードと引き離す。
「お、お帰りなさい、サクシードさん。任務お疲れさまでした」
暴れるファイアートと苦闘しながら、ロデュスが労う。
「この阿呆を抑え込んできた、手間賃を要求する」
「ご挨拶だな、ラファルガー」
遠慮のない間柄の、他愛ないやり取りが戻ってきた。
一段と美しくなったフローラは、レンナの隣に行って笑い合っている。
「この不条理に一言もの申す! 正統派なんざくそくらえだ――っ!!」
ファイアートが夕日に向かって吠えた。
一瞬、静まり返った。そして巻き起こる爆笑の渦。
「ハッハッハッハ」
シンパティーアが久しぶりに底抜けの笑いに包まれた。




