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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第三部
101/202

『シンパティーア到着』

 サクシードたちは十六時三十五分に、下宿『シンパティーア』に辿り着いた。

 外はまだ明るい――夕日に染まる家屋は、あの頃とまったく変わらずサクシードを出迎えた。

「……懐かしいなぁ」

 それはやっと帰りついた故郷だった。

 住んでいたのは約一年だったが、思い出がありすぎた。

 ここで出会ったファイアートたちも、レンナ同様、縁の深い人。気心の知れた仲間たちだ。

 感慨深げなサクシードを、レンナは好きにさせておいた。

 幸福という名の(さざなみ)が打ち寄せている心を。

 しかし、そういうことが長く続かないのも、シンパティーアだった。

 キィィーッと、玄関のドアが静かに開いて、そこにいたのは……

「口惜しや、サクシード……この恨み晴らさでおくものか……」

 ファイアートだった。

 ご丁寧に定番の三角巾まで頭につけている。

「……」

「くっくっく……まずは夜毎、仕打ちの数々を囁こうか。はたまた食事に細工をしようか、それとも……」

「……」

「ちょっと、止めてよ!」

 三角巾をむしり取って、ファイアートが不機嫌そうに言い放つ。

「相変わらずだな、ファイアート」

「何が相変わらずだ、この野郎!」

 ファイアートがダダダッと距離を詰めて、サクシードの首根っこを押さえて、頭をグリグリ拳でめり込ませた。させたいようにさせるサクシード。怒りの収まらないファイアート。

「ったく悟り澄ましやがって! それがベストだったと思うなよ。このっ、このっ!!」

 五年分の煮え切らないストレスを発散させる。

 レンナは口を手で押さえて笑っている。

 玄関からロデュスたちが揃って出てきた。

「あーあー、なんてことするんですか、ファイアートさん!」

 ロデュスが背が低いながらも、長身のファイアートを羽交い絞めにした。

「うが――っ!!」

「おい、やめろ」

 ラファルガーがファイアートの前に回って、サクシードと引き離す。

「お、お帰りなさい、サクシードさん。任務お疲れさまでした」

 暴れるファイアートと苦闘しながら、ロデュスが労う。

「この阿呆を抑え込んできた、手間賃を要求する」

「ご挨拶だな、ラファルガー」

 遠慮のない間柄の、他愛ないやり取りが戻ってきた。

 一段と美しくなったフローラは、レンナの隣に行って笑い合っている。

「この不条理に一言もの申す! 正統派なんざくそくらえだ――っ!!」

 ファイアートが夕日に向かって吠えた。

 一瞬、静まり返った。そして巻き起こる爆笑の渦。

「ハッハッハッハ」

 シンパティーアが久しぶりに底抜けの笑いに包まれた。


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