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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第一部
10/201

『夕食のひととき』

 夕食は大変な豪華さだった。

 牛肉のグリル、白身魚の香草焼き、季節野菜と鯛のマリネ、きのこ入りのオムレツ、魚介の煮込みスープ、トマトとチーズを挟んだホットサンド、花入りのフルーツポンチ。

 グラスに注がれたのはシードルだった。全員にグラスが行き渡り、持ち手を持って上にあげる。

「それじゃ、乾杯の音頭をどうぞ。大家さん」

 ファイアートがおどけて言って、大家……レンナはコホンと咳払いした。

「では、サクシードの到着と『シンパティーア』に吹き込まれる、新しい息吹を祝って」

「乾杯——!」

 鳴らされるグラスと、こぼれる笑顔。

 あとは料理を自由に皿に取り分けて食べる。

 早速、レンナに次々と料理を勧められ、サクシードは平らげるのに忙しくなった。

 合間にファイアートが質問する。

「二人はすぐに会えたのかい?」

「ううん、人がいっぱいでなかなか会えなかった。しょうがないから看板を持ち上げて、揺らしてたらサクシードが見つけてくれて。ね」

「ああ」

「そりゃ、目立つわな」

 クックッとファイアート。

「なによ、おかしい?」

「愉快な出会いだったってことさ」

「……」

「それで? メーテスを案内したんだろ。どこに行ったんだい?」

「肉料理の『タウロス』で昼食をとって、駅に直行したけど」

「それだけ? ヴィット-リア広場か、アネモネ通りに行けばよかったのに」

「反対の区画じゃない。疲れてるのに引っ張り回せないわよ」

「どんなところなんですか?」

 ロデュスが聞くと、ファイアートは得意げに言った。

「どっちも見世物や演芸を終日やってるのさ。パフォーマーが競い合ってて、見応えあるぜ」

「楽しそうですね」

「案内するよー! ロデュスなら、フェスタ公園に、アモール・ポエータ、アルティスタ街に、オカルト村……」

「こら! どこに連れて行く気よ」

「冗談だよ、冗談」

 ハハハと笑って、ファイアートが誤魔化す。

 油断ならない、とレンナは言った。

「もう。人にはね、それぞれ知るべき時があるんだから!」

「ごもっともで」

 ファイアートは大人しく引き下がった。

 二人以外には何のことかわからないが、オカルト村は危ないところらしい。

「レンナさん。あのチューリップの花束は、メーテスで?」

 フローラが話題を変えた。

 立腹していたレンナは、急に動揺した。

「えっ……そう。メーテスで街頭販売してて」

「もしかして、プレゼント?」

「う、うん」

「へっ、誰の?」

「決まってるじゃないですか!」

 ロデュスが言って、一斉にサクシードに視線が集まる。

「かっこいい! 初対面で花束プレゼント」

 ファイアートがからかったが、レンナが慌てて訂正する。

「違うの! 花束は花屋のおじさんが勝手に作っちゃって。サクシードは仕方なく、迎えに来たお礼ってことにして、プレゼントしてくれたの」

「おまえね、仕方なくは失礼だろ」

 ファイアートの指摘に、レンナは「あっ」と手で口を押さえた。

 サクシードは黙々と食べている。

「ごめんなさい」

「気にするな」

 一言、それだけだった。

 それを見て、ファイアートは「なかなかやる」と唸り、ロデュスは尊敬の目で見て、フローラは嬉しそうに微笑し、ラファルガーは口角をわずかに上げたのだった。

 夕食はその後、穏やかに続き、若い胃袋に納まったのである。

 

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