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悪魔の家  作者: 上原 光子
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ーーー朝。


冷たい、頬に落ちる水で、あかりは目を覚ました。

「雨…」

あかりは空を見上げた。

薄暗い森が、太陽が隠れた事で、より暗く、肌寒い空気が、もっと、突き刺すような寒さに変わる。

「どこか雨宿り出来そうな場所を探そう」

既にけいじは起きていて、寝ずの番の後半になったあきとと2人、荷物を片付けていた。

自然と、あかり、そして、起きてきた藤と杉も手伝う。

「もおやだ…」

杉は涙を拭いながら、そう呟いた。

悲惨な事件に巻き込まれ、精神的に不安定なところに、体温を奪う雨、薄暗い森を更に気味悪くする霧。

霧の出た森は、昨日よりも不気味だった。

本当に、少し離れただけで、周りを見失いそうな、まさに、足を踏み入れたが最後、二度と帰る事の出来ない悪魔の森ーーー。

「大丈夫。水が確保出来るのは有難い事だし、雨が凌げる場所を探そう」

不安定な杉に対し、けいじは笑顔で答えた。

「足は大丈夫?おんぶしようか?」

「……大丈夫です。ゆっくりなら、歩けます。ふじちゃんもいるし」

「うん!一緒に歩こう」

この霧の中、雨も降る中では、昨日よりも慎重に、ゆっくり進む事にはなるのは確実。

藤も、杉の迷惑をかけたくない気持ちを汲み取り、彼女の手を握り締めながら答えた。






初めは小さな雨だったのが、徐々に激しくなる。

(寒い…)

冷たい雨が容赦なく体温を奪う。

震える体。

あかりは自分の体をぎゅっと抱き締めながら、少しでも体温を求めながら歩いた。

「…お」

先頭を歩くけいじが、何かを発見し、少し歩くスピードを早め、確認に行く。

「うん。ここなら雨が凌げるな」

けいじが見付けたのは、岩で出来た空洞、洞穴だった。

「火を起こしたいけど…」

けいじは空洞の中を見渡した。

皆で集めた木々は、多少は持ってきたものの、雨で濡れ、これで火を起こす事は不可能だろう。

「風で入ってきてる木とか葉っぱがありますよ。雨に濡れていないのもありますし、これならどうですか?」

あきとが手際良く空洞に落ちていた木々を広い集め、けいじに見せる。

「うん。これなら火がつくな。ありがとうあきと君」

「良かった。僕まだ集めて来ますね」

そう言うと、あきとは洞穴の中に落ちている木や葉っぱを集め、けいじは火起こしの為の準備にはいった。

自分もしんどいであろうに、優先的に動くけいじとあきと。

「もーーぉぉ!しんどい……びちゃびちゃ!」

疲労感も相まって、自分のイラつきを隠そうとしないはなは、焚き火の真ん前に座り込み、濡れたコートを脱ぎ、隣に広げた。

「はなちゃん、寒い?」

コートを広げる事によって、焚き火の場所をほぼはなが1人で占領している事になる。

「寒いに決まってるでしょ。早く火ぃ、つけてよ」

けいじの問いに、ぶっきらぼうに答える。

彼女の甘える対象はどこまでもあきとだけ。

「そうだね。でも、ここは皆が集まる場所だからーーそのコートは退けてくれ」

真剣な表情と口調。

急に、けいじには似つかわしくない雰囲気に、はなは少し驚いた様子を見せた。

「っ!服…乾かしたいんだけど!」

「それは皆同じ。違う?」

「ーもぉ!」

不機嫌そうにでもコートを退けるはなを見て、けいじは笑顔でありがとうと答えると、火起こしを続けた。



火がつき始めると、空洞になっていた空間に暖かさが籠り、震えが止まった。

簡易だが、雨をろ過し、煮沸させたもので温かいスープをけいじが作ってくれ、それも飲んだ。

「……」

(気分…悪い…)

だが、それでも失った体力や怠さは戻らない。

あかりはお腹に触れながら、吐き気を我慢する為に、口を手でおおった。

「大丈夫?」

「…平気です」

そんなあかりの様子に気付いたけいじが声をかけた。

気付くと、いつの間にか雨は小降りになってはいたが、霧は濃いまま。

辺りは何も見えない。

「くそ!こんな霧じゃ何も出来ねぇ!」

洞穴の中には木々や葉っぱはあったが、食べ物となるものは何も無く、持ち歩いていたものは、先程のスープで全て使用してしまった。

「俺が少し、辺りを探索してくるよ」

「だ、駄目ですよ!危ないです」

けいじの発言に、藤も杉も止める。

「遠くには行かないし、これを使うよ」

と、けいじは自分のリュックからロープを取り出すと、洞穴にある岩に固く結びつけた。

「これなら、ロープをつたって帰ってこれるだろ」

笑顔で言うけいじ。

「で、でも…」

藤は洞穴の外を見た。

深い霧、本当に、悪魔でも出てきそうな、不気味な森。

「ーーー俺も行く」

濱田は立ち上がると、けいじの後ろで、ロープを握った。

「危ないぞ?」

「てめぇが言うな」

人に忠告しながら、自分はその危険な場所に1人で行こうとするけいじを、濱田は睨みつけた。

「僕も行きますよ」

「!や!止めて!たぁ君まで行く必要無いでしょ?!」

あきとも続こうとするが、それをはなが手で引っ張って止めた。

「あきと君は残ってくれ。女の子だけを残すのも不安だしな」

「でも、ロープを持ちながらだと効率悪いでしょうから、人数がいた方が良くないですか?これから、暗くもなりますし」











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