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悪魔の家  作者: 上原 光子


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当たり障りの無い言葉を吐く。

(どうせ助けてくれない)

私の父……義理の父親は、外面の良い、政治家だーーー。

1度、助けを求めた事があったが、簡単にもみ消され、助けを求めた相手も、権力を前にあかりを簡単に裏切った。

(声を上げても、無駄……)

もし助けを求めた事があの男にバレたら、もっと酷い目に合う。

『お願いだから……放っておいて下さい』

あかりはそう言い残すと、その場から走り去った。




立派な外観の一軒家。

あかりは家に入る前に、ガレージに目をやり、落胆した。

(車がある…)

それは、あの男が在宅中なのを意味する。

ガチャ…。

鍵を使い、中に入ると、リビングからTVの音が聞こえた。

『……』

リビングには、ネクタイを外した50代程のスーツ姿の男がいた。

その男は、あかりがリビングに着いても気にかける様子も無く、あははは!とワインを片手にTVを見続ける。

あかり自身も、声をかける事は無く、リビングを通り過ぎると、台所で冷蔵庫を開けた。

お手伝いさんが作って置いてくれている夕食。

それを取り出すと、電子レンジで温めた。

『……』

黙々とダイニングで1人、食事をとる。

その間も、男とあかりは一言も言葉を交わす事は無かった。

食事を終え、お風呂に入り、2階の部屋に戻ると、あかりはベットに倒れ込んだ。

(疲れた…)

いつもより体がダルい気がする。

(…何も…考えたく無い…)

あかりはそのまま、眠りについた。



そのまま、1時間程、経過した頃、自身の体の異変に気付いて、あかりは目を覚まし、絶望した。

自身の体に跨る、男の影。

脱がされている衣類。

(…また…)

あかりは、眠っているふりをした。

(お願い……早く……終わって……)

行為が早く終わる事を、あかりはただただ、願った。



事が終わった後、男はベットに腰掛けたまま、横たわるあかりの髪を撫でた。

『ーーお前は、俺の物だ。永遠に』

あかりが起きている事に気付いていて、男は言い残すと、部屋を出た。

部屋から出たのを確認して、目を開ける。

『…う…うっ…』

涙が溢れ出る。

あの男は、私の事を好きじゃない。

所有物としか認識していない。

『ママ…ママ…!』

部屋の写真立てには、優しい笑顔で、幼い頃のあかりと写る女性。

あかりは、今はいない母を求めながら、涙を流した。

(私は全部を諦めた)

あの男に好き勝手にされるのも、外では良い父親のフリをして馴れ馴れしく接してくるのも、逆らえばもっと酷くなるから、従った。

(いつか、1人で生きていけるようになるまで)

ここから、いつか出て、自由になれる事を夢見て、それまでは、全部を諦めた。

(それなのに……)

子供が出来た。

(私……何か、悪い事したのかな……)

あかりは、母親と一緒に写っている写真に手を伸ばした。

『ママ…ママ……助けて……お願い…ママ……』

全てを諦めて過ごしていたのに、神様はこれ以上、私に絶望を与えるんだ。




『や、あかりちゃん』

『…また…』

下校中、示し合わせたように目の前に現れる敬二に、あかりはため息を吐いた。

『本当に暇なんですか…』

『うん。だから、少し話をしないかい?』

『…お断りします…』

そのまま、あかりは敬二を通り過ぎた。

『駄目か……』

敬二は、いなくなるあかりの背中を見ながら、落胆し、頭をかいた。

(でも焦ったらいけない……俺がここで感情任せに行動したら、同じ事だ)

敬二は過去、照史達の事を思い出した。

敬二はあかりに助けを求められた時から、彼女の絶望に染まった顔を見た時から、何かがあると直感で感じ、調べた。

調べると、彼女は過去、自分の義理の父親に性的虐待を受けていると告発した事が有ることが分かった。

(下手に動くと、彼女がもっと、酷い目に合う)

敬二は、あかりが、産婦人科に入った所も、出る所も、目撃している。

(……彼女を絶対に救い出す)

例え刑事の職を失う事になっても、覚悟を決めていた。

(ただ、それにはーーー彼女自身が、手を伸ばして貰わなくちゃならない)

父親は、体に証拠を残すような、暴力などは一切ふるっていない。

(子供は……父親にとって、自分の虐待を表す証拠だ)

あかりがどう判断するのかもまだ分からないが、あの父親にとって、子供はーーー邪魔な存在だろう。




(今日もいる…)

あかりは家に入る前、ガレージに車が止まってあるのを見て、落胆する。

(2日続けて家にいるなんて……珍しいな)

父親は家に居ない事が多く、それは、あかりにとって良い事だった。

昨日と同じように家に入り、TVを観ている男を素通りし、台所に向かう。

あかりに興味の無い男は、用が無い限り、話しかけてこない。

『ーーおい』

『!』

今日も話しかけられない事を想定していたのに、急に声をかけられ、ビクッと反応する。

『お前、病院に行ったな』

『…何で…』

知っているのか。

そう尋ねる前に、男は産婦人科の診療明細書を見せた。






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