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悪魔の家  作者: 上原 光子
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中学卒業で、優等生の彼と同じ高校には行けず、離れてしまったけど、間違いなく、彼は自分の事が好きだと、確信していた。

『……』

男は、赤ワインをかけられた女性の姿を確認し、はなを、睨んだ。

『藤咲さんがしたの?』

『え、違うよぉ。わざとじゃないの』

甘えた声を出し、はなは瞳に涙をうっすら浮かべた。

『手が滑っちゃっただけなんだけどぉ、ーーさん、凄く怖くて、怒るから……はな、わざとじゃないのにぃ』

男は女の涙に弱いし、美人で可愛いはなは、特別で、彼はすぐに陰キャじゃなく、今度ははなの方に来て、慰めてくれる。

そう、信じて疑わなかった。

『ーーー赤ワインかけられたら怒るのは当然だろ。藤咲さん、ちゃんと謝ったの?』

『え?』

責めているように感じる口調に、険しい表情。

『もういいよ、ーー君』

陰キャは、図々しくも、ーー君に触れながら、そう言うと、その場を離れようとする。

『ちょっ!待って!』

(あんたはどっか行ってもいいけど、ーー君は置いていきなさいよ!)

苛苛する。

ーー君だって、その陰キャと一緒に行こうとするのがおかしい!

私を責めたり、睨んだりする事がおかしい!

ここは、はなの元に来て、はなを甘やかして、その陰キャを悪くいう所なの!

図々しくも、自分が偉くなったと勘違いしてる女に!

『…………藤咲さん、本当に昔と変わってないのね。なんか可哀想』

(ーーーは?)

何?あんた如きが、はなを見下した?

ぶさいくな底辺な女が?

陰キャ女は、はなの近くまで来ると、そっと、耳打ちした。

『クリーニング代は請求しないでおいてあげるね。会社の仕事を男性に代わりにやって貰っていた事がばれて、会社クビになったって聞いてるから』

『ーーっ!!!』

頭に血が上り、カッとなる。

そのまま2人が会場内に戻るのを、はなは爪を噛みながら睨みつけた。

(何よーームカつくムカつくムカつく!!)

ちょっと会社の社長になったからって、偉そうに!!

(ふん。でもどーせ、男いなくて寂しい人生送ってんでしょ。やーよね、仕事だけしか能の無い女って)

ーー君も、あの状況だけ見て、陰キャの味方をしちゃっただけ。

そう考え直すと、気持ちが上がった。

(そうよ。良い女は仕事なんかしないの。良い女は、良い男捕まえて、専業主婦になるんだから)

気持ちを改めて、会場内に戻ろうと、入口まで足を踏み入れーーー



『この度、ーーと、ーーは婚約しました!』




司会者のマイクから、陰キャ女と、御曹司の彼の婚約発表のスピーチが聞こえ、立ち止まった。

周りはキャーと大きな歓声に、拍手。

目に映るのは、幸せそうな陰キャの姿。

(何でーー)

私の事が好きだったんじゃないの?!

中学の時、美男美女で、お似合いって!あれだけ噂されてたのに!

『いいよねぇ、お似合い!女社長と、会社のエースでしょ?!羨ましいー!』

ムカつく!!!

中学の時は、私と彼の事をお似合いだって言ってたクセに!


女社長ーー


『そっか…。あの女の権力で、断れないでいるのね…!』

政略結婚?

それとも、会社を盾に脅されてるの?

どちらにせよ、ーー君は、はなが好きなのに!!

『はなが助けてあげなくちゃ…!』





『いい加減にしてくれよ!』

会社帰り、スーツ姿の彼に抱きつき、はなは振り払われた。

『お願い!諦めないで!あんな女の言いなりになっちゃ駄目よ!目を覚まして!』

『何言ってるの…?怖いんだけど…』

男ははなの性で乱れたスーツの身だしなみを整え、はなと距離をとった。

『ーーと俺は、彼女が高校生の頃、彼女が会社を企業する前から付き合ってるし、俺が藤咲さんを好きだった事なんて1度も無い!噂されてるのも知らなかった!迷惑!!

第一、藤咲さんは俺の御曹司の肩書きを見てるみたいだけど、俺、会社継がないからね』

『え……は?迷…惑?会社を継がない?』

『そう。俺は親父の会社とは全く畑違いの仕事がしたくて、それを尊重してもらったんだ。だから、権力とか、政略結婚とか無いの』

『そんな…』

『分かったらこれ以上付きまとわないで。次顔見せたら、警察呼ぶぞ』

そう言い残し、はなを残しその場を去る。

色々な事が頭を回って、パンクしそう。

陰キャは高校から皆の憧れの的のーー君と付き合ってた?

ーー君は、はなの事が好きじゃない?


陰キャは、女社長で、地位もあって、素敵な旦那様まで出来るって事?


はなより可愛くないのに?


はなより、絶対男にちやほやされて生きてなかったくせに!!




ムカつく!ムカつく!ムカつく!!!



怒りで、頭が沸騰しそうな位、熱い。

(嫌…絶対に負けたくない!あんな陰キャ女なんかに!!)



見返してやる。



ーー君より素敵な男を見つけて、誰もが羨む玉の輿に乗って、悠々自適な生活を送ってやる!





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