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悪魔の家  作者: 上原 光子
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13

押し切られる形で、あかりはけいじの言葉に甘える事にし、その場で横になった。

目に映る火の光に、安心する。

あかりは直ぐに眠りについた。




夢を見た。


『ーーママ?』

優しい笑顔で、自分を見つめてくれる、母の姿。

『ママーー大好き……ママ……』

あかりは、ぎゅっと、母に抱きつき、母も、あかりを抱きしめ返した。

1番幸せで、私の、心の拠り所、記憶ーー。

「………行かないで…ママ…」

「あかりさん」

「…!」

最後の言葉は、声に出してしまっていたのか、心配そうに自分を見るあきとの姿が見え、あかりは慌てて起き上がった。

「濱田さんと僕で、川で魚を釣ったんです。食事、とれそうですか?」

頬に伝う涙を拭う。

あきとは気を使ってくれているのか、何も聞かずにいてくれるのが、ありがたかった。

「あかりちゃん、おはよう」

もう辺りは真っ暗。

流石に電気は通っていないので、囲炉裏の光だけが、優しく包み込む。

囲炉裏には、けいじ、濱田、はな、あきと。

傍には、火で調理された魚と、井戸で汲んだ水が用意されていていた。

「ごめんなさい…私、何もお手伝いしていなくて…」

申し訳無く謝罪すると、はながギロリと睨みつけた。

「何それ?いい子ちゃんアピール?」

「え…」

「あかりちゃんもはなさんも、僕が休んでいいって言ったんだ。気にしないで」

謝罪に対し、責められるとは思わなかったあかりが戸惑っていると、すぐにけいじが魚にかじりつきながら笑顔で答えた。

どうやら、はなも休んでいたようで、あかりが謝罪すると、自分も悪くなってしまうと感じ、不機嫌になったのだろう。

「お前…ほんと、お人好しだな」

濱田は呆れたように、けいじをそう評価した。

この家に着くまでの間も、誰よりも寝ずの番を引き受け、歩き、火をつけ、食べれる食材かをチェックし、料理をする。

「これは僕が作りました。良かったら食べて下さい」

そう言って、あきとは山菜ときのこのスープを、あかりに手渡した。

今は、けいじから色々教わったあきとが、ある程度判別出来、料理も出来るようになったので、少し分担出来るようになった。

「あきと君は本当に学習能力が高いね」

山菜も、きのこも、毒がある物、食べられる物、覚える能力が高い。

「いえいえ。まだ、火起こしはけいじさん程上手く出来なくて」

感心するけいじに、あきとは恐縮した。

「……当然よ、たぁ君は本当に優秀なんだから♡ね、たぁ君♡」

「……」

はながあきとに甘えるは久しぶりで、急な態度に、あかり含む全員が何故か息を飲んだ。

あきとは彼女には答えず、無言で食事を進め、終わると、この家にあったであろう木の皿を手に立ち上がった。

「疲れたので、今日はもう休んでも大丈夫ですか?」

「あ、ああ」

「今日は濱田さんが寝ずの番でしたよね?途中で変わります」

「お、おお」

けいじも濱田も、自分達には笑顔だが、はな完全無視の淡々としたあきとの態度に、何故かビクビクした。

そのまま、隣の和室に向かうあきと。

「はなも一緒に休もーかなぁ」

冷たい態度をとられてるにも関わらず、怯む事のないはなは、あきとと共に休もうとする。

「あ!っと、はなさん!」

慌てて、けいじが制止すると、はなは不本意そうに立ち止まった。

「何よ」

「えーーーと」

何か、はなを足止めする良い理由が無いかと思考を巡らせるも、何も出てこず、言葉に詰まる。

「アホかお前。あいつが迷惑がってんのが分かんねぇのか」

「濱田君?!」

どストレートに物事を言う濱田に、けいじが動揺する。

「……たぁ君は照れてるだけよ」

濱田の言葉に、はなは怒り、声を荒らげるかと思ったが、彼女は静かに答えた。

「たぁ君は、はなのなの。決まってるの」

その表情には、うっすら笑みすら見える。

「ーーー」

あかりは、そんなはなを見て、息を飲んだ。

ドクンッ。

心臓が痛い。


『ーーお前は、俺の物だ。永遠に』


過去、似たような事を、自分も言われた事がある。

「……好きじゃ……」

ポツリと、小さく、聞き逃してしまいそうなくらい、小さな声。

「好きじゃないくせに…」

「ーーー」

あかりの、真っ青な表情から出た、小さな小さな呟きに、はなは、目を丸くし、言葉を詰まらせた。

「……あーあ。なんか興醒め。今日は、はなも普通に寝るわ」

そう言うと、はなは和室であきととは距離をとり、横になった。

「なんだあいつ。好きじゃねぇの?意味分かんねぇ」

濱田は頭を捻った。

「そうだねぇ」

けいじは薄々感じていたのか、特にあかりの発言に驚く事は無かった。

はなは、どれ程あきとに冷たくされても、本当に傷付いているようには、見えなかった。

どちらかと言うと、執着に見えた。

あきとは、自分の物。

「あかりちゃん、早く食べて、ゆっくり休みな」

動きの止まっているあかりに、けいじは優しく言うと、自分も最後のスープを飲み干した。

「お前も寝ろよ」

濱田は、誰よりも働いてるけいじを睨む。

「ほんっと、濱田君は意外と優しいんだな!」

けいじは笑うと、濱田の肩をバンバンッと叩いた。

「いてぇな!」

濱田はけいじの手を乱暴に払った。


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