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大悪党から人気者へ   プロローグ

始めましてかめたろうって言います、暇なとき読みに来てくれよな!


海外マフィア日本支部

夜闇に紛れる山の中のマフィアの要塞の最上階で仕事を終えた俺はあたりに飛び散る血から目を背けるように窓の外を眺めていた。

季節的に夏の大三角形なんて見えるかと期待したが角度的に月すら見えないことに少し落胆した。

巨大勢力のマフィアを片付けるのは一筋縄ではいかなかったが無事に仕事を終えることができた。

本部への連絡をするためポケットから携帯を取り出す。

「終わりましたよ、ボス」

「よくやった、報酬は弾む」

小さい頃からボスのもとにいるが交わす会話はいつもこのような仕事の会話だけである、まあ、これ以上に会話を交わす必要もないだろう。

「終わったねウーヌス」

「その名前で呼ぶな」

俺をコードネームで呼ぶという侮辱行為をしてきたのは雪、俺の昔からの同僚だ、彼女の戦闘力は組織屈指のものであるため今回の作戦に参加している。

「いいじゃん!私達組織の子が本名で呼ばれるなんて飲食店くらいなんだから」

「俺は組織をやめる」

「はいはいそう言ってもう一年位経ってるよ」

彼女はボブカットの黒髪を揺らしながらやれやれと首をふり、俺の話を軽く流す。

「帰るか」

少し沈黙が続いた後俺はそう答えた

悲しきかな彼女の言うことに間違いはなく俺はそういうことしかできなかった。

体をドアの方向に向けて高級感ただようドアへ向かう、道中血溜まりを踏んだ、途端足が重くなるのを感じた、血に変な物質が混ざってるとか敵の罠とかではないのに、ただ足が重かった。まるで血が俺に行かせないと言っているようだ。

俺を止めないでくれ、俺は今日組織を辞めるんだ。

「帰んないの?」

雪がドアへとたどり着くと血溜まりを踏んでいる俺に話しかける。

俺はその言葉を聞いて我に返ったように歩き出しドアへと向かう。

部屋の外に出るとそこは広い廊下で窓から月明かりが指していた。

俺は後ろを向いて敵を手に掛けたナイフをドアが閉まる前に部屋に投げ入れた。

「え!?なにしてんの?」

俺の行動を見てた彼女が目を丸くする。

「もう使わないものだから」

俺は彼女に答えを返すとまたもやれやれと首をふる。

「私達は数えきれないほど殺してる、もう今更カタギに戻ろうなんてむしのいいはなしはないの、たとえ私達が道具のように育てられた被害者だったとしてもね」

彼女は俺よりも頭半個分くらい下から上目遣いでこちらを見つめながら言う、その目からはどこかやるせなさを感じた。

俺はまたもその言葉に良い答えを返すことができず少しの間沈黙が続くいた後俺たちは帰路についた。






組織本部

赤いカーペットが引かれた高級感漂う床に上を見ればシャンデリア前を見ればバルコニーという豪勢な部屋に五十くらいのスーツを着た男が座っている。

彼こそがコオロギすらも泣くのに気を使うこの組織のボスである、この巨大組織の長に相応しいこちらを押しつぶすような緊張感を放っている。

そんな男の前に気をつけの姿勢で俺と雪は立っている。

「改めて成果を聞こう」

重苦しい雰囲気の中ボスが口を開く。

「はい、マフィアの日本支部の破壊に成功し、マフィアの日本進出を阻止しました」

「そうか」

ボスの口角わずかながらに上がる。

「報酬は後日振り込んでおく」

「さて、次の仕事だ」

ボスの口角がもとに戻った、それに伴って場の緊張感も高まっていく。

「次は組織に楯突く愚かな新参殺し屋組織を殲滅だ、詳細は後日話す」

「了解しました」

俺が黙っていると雪がボスの質問に答えた。

「要件は終わった戻って良い」

「はい、失礼しました」

雪がこの部屋を後にする、ドアがガチャっと音を立てて閉まる、それでもなお俺はこの部屋を後にすることなく地獄のような雰囲気の中立っていた、ボスにあることを伝えるために。

「どうした、ウーヌス」

ボスがこちらに少々威圧的な視線を送る、それに伴って心臓の鼓動が速くなり額が汗ばんでいるのに気づいた。

「単刀直入に申し上げます、私ウーヌスは本日を持ちまして組織をやめさせていただきます」

腹の中から精一杯の声を絞り出しボスに気持ちを伝える、ボスに本心を伝えたのはいつ以来だろうか。

「...そうか、ではこの仕事は他のものに任せておく、どこへでも行くといい」

ボスは少し驚いた顔をしたが直ぐに元の凝り固まった表情に戻った。

正直こんなことはボスの逆鱗触れると思っていたので安堵の気持ちもあるが気味の悪さも感じた。

「ありがとうございます、今までお世話になりました、失礼します」

気味の悪さを払拭するため、すこし詮索を入れようかとも思ったが面倒くさいことになるのを危惧してそのまま部屋を後にした。






廊下に出るとちょうど窓からまるで新生活を応援するかのように朝日が指す。

朝日に祝福されるなか、廊下を歩き始めると。

「航大!」

後ろから俺の名前が呼ばれる。

「聞いてたのか、雪」

「ほんとにやめるんだね、私びっくりしちゃった」

雪は下を向きながら言った。

「ああ、やりたいことができたんだ」

「やりたいこと?」

「そう、俺は人気ユーチューバーになる」

朝日がさらに明るく俺を照らす。

実は少し前から殺し屋をやめたらユーチューバーになると決めていたのだ。

「ユーチューバー!?」

殺し屋の口から出るとは思えない言葉に雪は目を丸くする。

「そう、色んな人に認められたいんだ」

理由はこれに尽きる、社会の裏でくらい生活を送っていたからユーチューバーのようなスターは憧れだった。

もう手遅れって思うかもだけどおれはやってみたいんだ。

「そっか、航大らしいよ、すごいなやっぱり」

彼女は微笑みながら言った。

「そうか?夢見ることなんて誰でもできるだろ」

「それを行動に移すことはすごいことだよ、元気でね、航大」

雪は顔を上げてこちらの目を見て言う、彼女の目は宝石のように綺麗だった。

「雪も元気でな!いつでも動画出してやるからな!」

そう言って俺は廊下を歩き玄関へと向かう。

その間も朝日は廊下を照らしており、神もこの門出を祝福しているように感じた。





廊下を歩いていくに連れて小さくなる彼の背中を見て自分の拳を握りしめた。

組織を抜けた彼が憎いとかそんなんじゃない、ただ自分に腹が立っていた。

なんで彼が組織ナンバーワンでわたしがナンバーツーなのか少しわかった気がする。

朝日が彼を照らしているのを見ていると自分の場所が影になっていることに気づいた。

横を向くと私の立っている場所は窓と窓の間でちょうど影になっていた。

「神は私を祝福していないんだな」

そう呟いて、私は逆方向へと歩いた。













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