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毒に溺れる異世界での1日

作者: 吉歌 ひごろ

―――異世界転生なんてロクなもんじゃない



 “異世界転生”という言葉を聞くとどんなイメージを持つだろうか。


 剣と魔法の世界に迷い込んだ主人公が、持ち前の現代知識と持たされたチート能力でやりたい放題を繰り返す話を想像するだろうか。


 いやいや、魔物と戦うなんて危ない真似はしないぞ!


 なんて斜に構えた人もいるかもしれない。だが、実際にチート能力なんてものを現代のストレス社会を生き抜いている人間が持ってしまった場合、やりたい放題になるのは当たり前の話だ。


 かくいう僕も普通より魔力量が多いという恩恵を授かっているが、まったくもって大したことない力であり、僕自身も大したことのない人間のため、無双することを文字通り夢想しながら普通の魔法学校に通っている






 前世とほとんど変わらない教室、違う所を挙げようとする方が難しいが、強いて挙げるとなると机と椅子が完全に木でできているのと、黒板が魔法のインクのようなもので書かれている事くらいだ。


 入学時でこそ誰よりも魔法を学び上級魔法をあんなにあっさりと!? という妄想を現実にするために頑張ってはいたが、実際に通うとなるとやはり人間性根は変わらないという事か、

 前世をなぞるような見事な怠け癖を発揮し、校内での立場と成績が落ちぶれるのにそう時間はかからなかった。




 本日最後の授業を担当する教師から本日はここまで―という声と同時に隣から


「おいフウト!今日は大事な話があるから研究室に来いよ」


 短い金髪が似合う爽やかイケメンが、長身を屈め耳元で囁いてきた。


 黒髪に普通の顔の僕からすれば羨ましい限りだが、幸いこいつの内面は外見と反比例している。真逆の残念野郎だ。


 ともあれ男の息が耳にかかることの不快感に、気持ち悪いから離れろと言い放ちその場を後にするも、言われた通り研究室に足を進める。

 まぁ、言う通りにしてやる義理など無いが、今日行かなければ明日も気持ち悪い耳元ボイスを聞くことになる。

 それはさすがに避けたいと、言い訳がましく自分に言い聞かせながら前世よりすこし豪華な廊下を歩き、目的地である研究室の扉を開ける。


 教室の3分の1くらいの研究室に着くと先客がいた。


 腰までありそうなキレイな銀髪に透き通るような碧眼というテンプレクール系美少女が、部屋に1つしかない大きな窓の前にある椅子で、何やら魔法に関する本を読んでいた。

 ちなみに彼女も内面と外見はしっかり反比例している。


「フウトが来るのは珍しいわね、また何か企んでいるの?」


 と、本からまったく目を離さず物のついでのように問を掛けてくる彼女はさながら漫画のヒロインのように絵になっていた。




「ヨハンが大事な話があるんだと、フィリアは何か聞いてないのか?」


「質問に質問で返さないで、だいたいフウトが聞いてないのにクラスが違う私が聞いてるわけないでしょ?」


 それもそうか、とあの残念な奴が来るまでの束の間の平和を楽しむために、窓際で美少女ムーブをかましている彼女の正面に椅子を持っていき腰かける。


「まあ、美少女ではあるんだけどな、美少女では……」


「何言ってるかわからないけど、とりあえず悪意があるのは分かった。今日から毎日夜道に気をつけなさい」


「毎日って、そうなるとお前も毎日夜道を歩かないとダメだろうが。お前は僕にそこまでするのか?」


「何を勘違いしてるか分からないけど、私は何もしない、あなたが無駄に毎日夜道に気を付けるだけよ」


「それだとただの優しい忠告じゃねーか!」


 無駄な会話をしているうちに勢いよく部屋の扉が開け放たれ、


「助けてほしいんだ!」


 これまた勢いよく大きな声が聞こえたことで僕とフィリアは同じタイミングで入口に目をやると、助けてという言葉とは裏腹に自信満々の顔をしたヨハンが鼻息を荒くしながら立っていた。




―とりあえず話を聞いてくれ


 という言葉に、イエスもノーも答えないままヨハンは全くまとまっていない話を必死に伝えようと、大げさな身振り手振りを加えている。


 その姿はお世辞にも爽やかとは言えないが、そんな支離滅裂な話を隣で聞いているフィリアは、先ほどまで読んでいた本を閉じ真面目に聞いていた。

 

 こんなバカな話を真剣に聞けるなんでフィリアの真面目には頭が下がる一方だ。だがまあ僕も全く聞いていないというわけではない、というより隣であれだけ真面目に聞いている人がいると少しは聞かないと悪い気がしてくる。


 適当に聞き流しながらも聞こえた範囲で話をまとめると、ある女性に一目ぼれをしたらしく、その人には特別な相手がいないらしい、ならば俺が名乗りを上げるしかないだろう。告白するために力を貸してくれ。


 という事だった。一連の話を聞き終わるとフィリアは再び本を開きながら、


「好きな人に告白したいなら普通にすればいいでしょ、私たちを巻き込まないで」


と至極まっとうな正論口撃にも


「俺みたいなやつが普通にしても相手にされないだろうが!」


と正しくも悲しい理論に僕は虚しさに天を仰ぎながら、こんな哀れな男に手を貸さないとさすがに夜道が危ない気がする。


助けてくれよーと今にも泣きそうになりながら膝を付きうなだれるヨハンの肩に手をかける。


「仕方ない。お前がそこまで必死なんだ、ここは同じ研究室の仲間として手を貸さないなんて、そんなわけ無いだろう!なあフィリア!」


「そんなわけあるわよ。そもそもどうするの? こいつが会ったこともない女性と付き合うなんてフウトが学園を卒業できるくらいありえないでしょ!」


「僕とコイツを同時に傷つけるな!さすがの僕でも卒業はできるわ!」


「フウト大丈夫なのか?俺達3人は入学以来の仲だけど、卒業できないとなると俺の相談なんで聞いてる時間なんて無いんじゃないのか?」


「2対1で僕を憐れむのはやめろ!僕ら3人がいれば不可能なんてないんだ!この僕に任せておけ!フィリアの知識にヨハンの行動力、そして僕の戦略があれば不可能なんてない!」


 こういうことは大げさに言っておくものだ、実際深い溜め息をつくフィリアを余所にヨハンが僕を見上げながら、おおぉ!と感動の眼差しで僕を見ている。こいつの将来が僕は心配だ。




 大見得を切った手前下手な作戦は立てることは僕の沽券に関わる。なので今回は前世の知識の中の古き良きに倣うことにした。


 作戦はこうだ。目的の女性、ここではシンデレラと呼ぶことにしよう。シンデレラに対し僕が難癖をつけ襲い掛かる。そこに現れたヨハンが颯爽と助け出す。シンデレラはヨハンに惚れる。


 完璧なプランだ。この作戦を考えた人は天才だ。僕なんかでは到底思いつくものではない。


 しかしながら、この作戦を聞いた二人の反応は僕の心情とは真逆だった。


 部屋の中央に椅子と大きめの机を寄せ僕の正面に座る二人は、そんな作戦上手くいくわけないでしょ、や、そんなのに引っかかる子がいるわけないだろー?とまったくもって肯定的ではなかった。


「待て待て二人とも、この作戦の重要な点はそこじゃない!そんな底の浅いものじゃない!ヨハン!お前の好きな子は助けてくれた人に対してお礼も言わないような子なのか?」


「そんなわけないだろ?お前と違って恩には恩を返す素晴らしい子に決まってるだろ!お前と違って!」


「そうだろうな!優しい忠告だが夜道に気をつけろよお前!」


 ただの優しい忠告だ。もちろん他意はない。こんなバカに、ましてや夜に襲い掛かろうものならこちらが何をされるか分かったものじゃない。


「つまり!この作戦は成功しようが失敗しようが終わった後大丈夫かと優しく声をかけるだけで助けてくれたことになる!その後はオシャレなレストランに行くなり夜の街に消えるなり好きにしてくれ」


「夜の街!?」


「くだらない」


 ヨハンは先ほどとは打って変わってこれなら確実に行けるなと立ち上がり、今すぐにでも飛び出しそうな程に興奮し顔を寄せてくる。気持ち悪い。


 フィリアは相変わらず無駄なことをするな、その子に迷惑でしょと言いながらこちらを軽く睨んでいる。美少女が睨んでくれるとはなんという至福。できることならお前の隣で興奮しているバカのように顔を近寄せてほしい。良い匂いがしそうだ。






―――さて、結果だけを言うと失敗した。


失敗が無いはずの作戦が見事に失敗した。


何が起きたのかをかいつまんで説明しよう。


 シンデレラが教室で二人の女生徒と話していた所を確認した。小柄で肩まで伸びた金髪に大きなたれ目。なるほど、ヨハンが好きそうであり、簡単に騙せそうだ。

 しめしめとさっそく作戦開始。大きな物音を立て、出てきた所に僕がぶつかり派手にこける。


 ここまでは完璧だった。


 失敗した原因というのは話し相手だった二人の女生徒だ。


 彼女達を確認した時フィリアが何か言おうとしていたが、しっかり聞いておかなかった自分を許せない。

 いや、はっきり言わなかったフィリアも悪い。まあ、何が起きたのかはもう分かるだろう。


 想定より遥かに気の強かった取り巻きの女生徒がヨハンより早く駆け付け僕を糾弾したのだ。


 わざとらしく転げまわっている僕に心配など無く


「バカがユーリに近づくな」


「謝れ」


「彼女まで卒業できなくなるだろ」


 言いたい放題言ってくれた。


 何度でも言うがさすがの僕でも卒業はできる。できるはずだ……


 ヨハンとフィリアが駆け付けた時には、泣きそうになる気持ちを抑えその場を後にしようとしていた。


 見ていたはずなのに来るのが遅すぎる。


 しかし、大丈夫ですかという声に呼び止められシンデレラが回復魔法をかけ、気を付けてくださいねと優しくお情けをかけてくれた。


 こんな情けない気持ちになれるものなのか。あの時の僕は必死に泣かないように肩を震わせていただろう。僕を見て笑いを堪え肩を震わせていたフィリアを僕は見逃がさなかった。


 おい、このことは忘れないからな。






「次の作戦だ!あいつらぜってぇ許さねえ!」


「もういいでしょ?」


 研究室に戻り席に着いた僕ら、というより僕は次の計画を立てようと息巻いていたが、フィリアによってバッサリと切り捨てられる。


 僕の醜態がさぞ面白かったのだろう晴れやかな顔をしていらっしゃる。


「何も良くない!このまま引き下がったら僕の心の傷はどうなるんだよ!」


「ごめんなフウト、俺のせいで・・・」


「謝るな!余計惨めになるだろ!とにかく次の作戦だ!」


 こうなったらさっきの失敗を次に活かすしかない。もう後には戻れないんだから。


 カッコよく言ったが正直に言うと悔しいだけだ―


「もう次の作戦を考えてあるのか?」


「どうせくだらないものでしょ?」


「ぐっ!」


 なぜこうも僕を止めようとする!というよりヨハン!お前はもっと乗って来い!誰のためにやってると思ってるんだまったく。


「いいから聞け!作戦はこうだ!まず僕が彼女の近くで魔法を暴発させる。そこをヨハンが颯爽と助ける。そして夜の街に消える。どうだ!?」


「どうだじゃないわよ、さっきとまったく同じでしょ。それに魔法の暴発は危ないから駄目よ。」


「なんだと!それじゃあ僕の心の痛みをぶつけられないだろうが!」


「お前最低だな・・・」


「うるさい!今の僕を止めれるものなら止めてみろ!」


 名誉挽回をしようとしてるはずが、ものすごい勢いで僕の株が急降下している気がするが気にしてはいけない。僕は折れるわけにはいかないのだ。


「じゃあ止めてあげる。さっき彼女を裏庭に呼んでおいたわ。さっさと行って告白してきなさい」


――え?


――呼んでおいた?


 反応できない僕の代わりににヨハンがフィリアに問い詰める。


「なあフィリア?フィリアさん?呼んだってどういうことだ?さっきのフウト事件の時そんなことしてたのか!?」


「僕の醜態を僕の名前で事件にするな!というかフィリア!」


「なにかしら?」


「それを先に言えよ!!」


 勢いよく立ち上がり天に向かって咆哮する僕のツッコミが完璧に決まったのとは対象的にヨハンは理解ができていないのかフィリアさんフィリアさんと問い続けており。フィリアは楽しそうにニヤついている。


―――まさに三者三様、いい結果を祈るばかりだ。






 この学園の裏庭を初めてしっかりと見た。膝くらいまである花壇には様々な色の花が咲いており、こっちの世界でも花というのは学校で育てる物らしい。


 などと余計なことを考えながらも辺りを見渡してみたが人影らしきものは無い。てっきり僕は、シンデレラ、もといユーリと呼ばれていた子が既に来ており花に水でもやってると思っていたが、しかし彼女はいなかった。告白前にフラれるとは何とも世知辛い。


「来なかったわけじゃないわ、まだ来てないだけよ。」


「じゃ、じゃあ俺はまだフラれてないのか、、、」


「まだフラれてない。とりあえず花壇の近くで待ってなさい。すぐに来ると思うわ。」


 まだのところが強調されていたのは気のせいだろうか。


 まあフィリアのおかげで状況は整ったみたいだ。ここに僕がいたら怪しまれるだろう。あとは若いお二人でというやつだ。


「じゃあ僕らは先に帰ってるから、結果は明日聞かせてくれよ。」


「ああ!パーティーの準備をしておいてくれ!」


 覚悟が決まったのか良い笑顔だ。


 緊張のせいか目がバキバキになっているのだけは、せめて彼女が来るまでにはなんとかしていて欲しい。このままじゃ怖くて話どころじゃない。


 ヨハンの強がりを聞き流し、僕とフィリアは花壇の奥にある木の陰に隠れユーリを待っていた。


 しかし本当に来るんだろうか、正直あの取り巻きが素直に来させるとは考えにくい。


「来るわよ。ちゃんとお願いしてきたから。」


 フィリアが言うと危険に聞こえるな、、、


「何?」


 睨まれた。僕の心の中は読まれているのか。プライバシーもあったものじゃない。


「あなたの心の中くらい簡単に読めるわ。私はあなた専用のテレパシーを覚えたのよ。」


「嘘だろ!?」


「嘘に決まってるでしょ」


 だろうな。わかった上で乗ってやったのに冷たい女だ。


「来たわよ」


 風で広がる金色の髪を抑えながら少し不安そうに辺りを見渡しながら少しづつこちらへ向かって来るのを見て、小動物みたいだな―とか本当に来てくれたのか―などと考えていると


――あ、とヨハンに気づいたユーリが少し小走りで向かってくる


「お待たせしました!あれ?あなたはさっきもいらっしゃった方ですね。」


「は、はい!さっきはあの馬鹿が失礼しました!!」


 響き渡る声に、どんだけ緊張してるんだとも思ったが、僕の人生には縁のない告白というイベントだ。相応の緊張があるんだろう。


「いえいえ、あの方はあの後どこかおケガとかは無かったですか?」


「大丈夫ですよ!あいつがケガをしてるのは頭の中くらいですから!あはははは!」


 この野郎。まぁ今日くらいは許してやろう。僕はそこまで狭量じゃない。


「それでお話とはなんでしょう?初めましてなので少し緊張してしまいますね。」


「そ、そうですね・・・」


「・・・」

「・・・・」

「・・・・・」


「・・・えーっとぉ……」


 ものすごい無言にこっちまで緊張してきた。人の告白を覗きなんて僕は何をしてるんだ。


「ユーリさんっ!!」


「はっはい!」




「私と!」







―――


「行こう」


「いいの?」


「ああ、結果がどうであれ明日パーティーで聞かせてもらおう。」


「そうね、それじゃあ研究室に置いてきた鞄を取って帰りましょうか。」


「おう」







 僕らはその先を聞かずに研究室に戻っていた。


「しかし、人が告白する場面なんて初めて見たけど、僕まで緊張しちゃったよ」


「・・・そうね」


 鞄を持ちじゃあ帰ろうと扉のドアノブに手をかけるも、フィリアの歯切れの悪さに違和感を覚える。


「どうした?さすがのクール系美少女もあんな場面見ちゃったら乙女の部分が出てきたのか?」


「ねえフウト」


「なんだ?」


「あなた今日から私の恋人になりなさい」


――ん?恋人?


「なに?言葉が分からない程頭が悪い訳じゃないでしょう?」


 僕の事をバカにしすぎだ。待て待て、なんだこれ告白されてるのか僕!


「い、いや、言葉は分かるんだけど。。。」


「そう、なら二回目は言わなくていいわね」


 なんだこいつ当たり前の顔しやがって!ダメだ!フィリアの顔が可愛くて仕方なく感じてきた!


「えーっとですね……」


 おい心臓静かにしろ!考えがまとまらないだろ!


「なに?まさか嫌という訳じゃないでしょう?普段から私をジロジロ見てるくせに」


 バレてる!?いや、考えるのはそこじゃない、落ち着け僕!


「お、お前意味わかってんのか?」


「当たり前でしょ。告白してるのよ」


 恥ずかしいからはっきり言わないでくれ!ダメだ!後手に回るな僕!ここは攻めるしかない!


「じゃあお前僕のこと好きなのか?」


「そうね、抜き打ちのテストくらい好きよ」


「それって嫌いって意味じゃねえか……」


「あら、私は抜き打ちテストは好きよ、自分の実力を確認できるもの。」


「それって……」


「好きよ。私はあなたが好き。」


――好き。2回分の人生を合わせても家族以外からおよそ言われたことのない言葉が僕の思考を染めていく。


「あなたは?」


 恥ずかしぎてもうふざけてしまいたい。


 しかしここで真剣に応えないほど僕はフィリアに不誠実でいたくない。


「僕はお前のことは好きだ。でもこれが女性としてかは正直わからない」


「ええ、知ってるわ。」


「だからこんな曖昧な気持ちで恋人になるっていうのは」


「じゃあ嫌?」


「嫌じゃない!嫌じゃないけど・・・」


「じゃあ付き合いなさい。これは命令よ」


 どんな命令だよとつっこんでしまいたいが今すべきことはそうじゃない。


「お前はそんな気持ちで恋人になって嬉しいのか?」


「嬉しいわ」


――っ


「嬉しい」


「に、二回言うな」


「じゃあいいわね?もう決定よ。」


 こんなことが一方的に決められてたまるか。


 でも、うん。こっちの世界に来てから何も良いことなんて無かったんだ。フィリアとならこの世界に来て良かったと思えるかもしれない。


 そうだ。そういうことにしておこう。だってもう決定しちゃったんだから。


「分かった。フィリアのこと好きかどうかは分からないけど、僕はお前の事をもっとよく知りたいと思うよ」


「そうね、それでいいわ。あなたの事を好きになるのは私くらいだけど、嫌だと思ったらすぐに言いなさい。まあ、私という毒に溺れた状態でそんなことを言えるかは別だけど」


――毒か。まあこいつが毒なら溺れてしまってもいいかもしれない。


「お前は毒なのか、」


「恋は毒と言うでしょう?私は中毒性のある毒だからすぐに手放せなくなるわ」


「なんていうか、心の中がぐちゃぐちゃだよ」


「ふふっ、恋なんてそんなものよ」


「そんなもんか」


「ええ」



 異世界転生と聞くとどんなイメージを持つだろうか、剣と魔法?無双?浅いと言わざるを得ない!


 まあ、僕の答えは一般的では無いかもしれない。だが、あえてはっきり言おう。


 異世界転生とは恋だ!正直僕には彼女のことが好きか分からないけど、おそらく彼女の言う通り毒にやられてしまうだろう。


 多分僕がそれを望んでいる。だからせめて良い毒であって欲しいと願うばかりだ。溺れてもいいと思えるほどの甘い毒だと。


ああ、まったく――


―――異世界転生なんてロクなもんじゃない

読んでいただきありがとうございます。


初めて書いてみましたがいかがでしたか?

適当にどこにでもありそうなテーマを風呂で妄想してたらこうなりました。

また書いてみようと思います。それでは!

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