Genesis3 Azzurro & Princess 前編「後輩」
前回のあらすじ
紫恋と修斗ゎ……ズッ友だょ……!!
「...そうか。他のチームでも”生命の種”の持ち主は見つからなかったか...」
「そうだ」
風の吹く夜、ヤハさんは港にて謎の人物と話していた。
彼の口にはタバコが咥えられており、話相手は金と黒のパワードスーツの様な装備を着ている。全身が覆われているため、顔を視認することはできない。
「...ったく、”生命の種”の持ち主はどこに居やがるんだ...」
ヤハさんは頭を搔きながら言った。
「全ては我々が始めたことだろう。地球に”生命の種”が落とされてから約38億年。新たな種を見つけなければ、全てが終わりを迎える。それだけのことだ。」
「...」
少しの間沈黙が流れた。
「...では私は他の者たちへも伝達をしてくる」
「...ああ、わざわざすまんな」
パワードスーツの男は右腕に取り付けられた端末を操作した。その直後、
「お前がどれだけ人間を愛しているかは、私も分かっているつもりだ。だがな、今の人間は他人と関わることを恐れ、お互いで殺し合い、確実に絶滅の道へ進んでいる。我々に彼らを救うことは許されない。それだけは肝に銘じておけ。」
そうヤハさんに向かって言いながら、テレポーテーションの様な機能で去っていった。
「...すまねえ紫恋、俺はまたお前を傷つけちまう。」
彼は海水に反射した自分に向かい、溜息を吐き捨てた。
「...腹減ったな。海鮮丼でも食うか」
ここ最近、なぜかずっと下弦の月が続いてる。
その月に背を向けながら、ヤハさんは商店街へと向かって行った。
話は少し前に戻る。
「あ、あたしの家こっちだからー!じゃねー!冷華ちゃーん!!」
「うん。またね。」
土曜日の夕方、クラスの人気者花宮冷華は帰路についていた。
友人の手には大きな買い物袋が、冷華の手にも小さいものだったがそれが握られている。
「...ふふ...楽しかったなー-...」
友達と買い物に行くのは久しぶりだった。
「...こんな時間がずっと続いたらいいのに」
微笑みながらそう言った。彼女にとって、友達と過ごす時間は何物にも代えがたいものなのである。
「ただいまー...うん。やっぱ今日もいない。」
冷華は自宅の玄関に踏み込んだ。彼女の予想通り今日も家には誰もいない。昨日と同じく、この家の主役が冷華になるわけだ。
「っはあー--...ラグナロク、かぁ...」
彼女はソファに寝ころびため息をついた。
そして二つの事項を天秤にかける。
友人との平和な日々か。
それともあの男と共に歩む非現実な日々か。
「まあ...参加したからってもうみんなと遊べないってことはないと思うけど...」
彼女は天井を見つめる。照明が眩しい。
「あいつと一緒に,か...」
「...」
紫恋の顔を思い浮かべる。
そして彼にされたことを思い出した。
ネットで配信していることを暴露される。
蹴られる。
変な戦いに巻き込ませられる。
「...」
彼女が出した選択は、
「よし。断ろう。」
これ一択だった。
「でよー!なんかでけー鳥が急にバサーー!!って来たんだよ!!」
「へえ」
翌日、紫恋は再び修斗の見舞いに来ていた。
修斗は自身の前に現れた恐ろしい怪物ー-つまり紫恋が倒した黄泉獣ー-についてオーバーなジェスチャーで紫恋に話している。
「でも紫恋こういう話信じない系だと思ってたけど、意外と楽しそうに聞いてくれんだな!」
「他でもない君の話だからね」
「よせやい」
そんな具合で談笑していると、誰かがドアをノックしてきた。
「はーい」
そしてドアを開けて入ってきたのは小柄でいかにも気弱そうな、目に光がないことに加えグレーの髪を持つメガネの少女だった。
「あ、あのそのこんにちは修斗せんぱぃ...」
「あ、もしかして弥上ちゃん?来てくれたんだ!」
弥上梨絵。彼女は修斗の紫恋の後輩にあたる女子だ。人とのコミュニケーションが苦手らしいが、修斗には好意を寄せている...らしい。
「あ、あのすいません昨日来れなくて...」
「いや大丈夫だよ!来てくれてありがと!」
「あ、ああありがとうございます...」
最も、修斗はその好意に全く気付いていないが。
「あ、あと憐夜先輩ちょっと...」
「?」
そう言うと梨絵は、紫恋に何か文字が書かれた小さな紙を手渡した。
”出てけ”
「!!??」
その時紫恋に衝撃が走る。つまるところ彼女は修斗と二人きりになりたいがために、紫恋を追い出そうとしているのだ。
だが紫恋にとって修斗は大切な友。彼も食い下がる。
紙に
”君がね”
と書いて梨絵に渡した。しかしすかさず彼女も
”私と修斗先輩の邪魔するな”
と書き紫恋に渡す。この激しい攻防はしばらく続くと思われたが、紫恋は窓の外を見た途端ハッとし、ドアへと歩いた。
「?どしたんだよ紫恋」
「ちょっと急用。またね、二人とも」
彼は修斗と梨絵に振り返りながら微笑むと、病室を出て行った。
「...こ、これで二人きりになれましたね...」
「?なんて?」
「あ、そのいえ何でもないですせんぱぃ...」
彼女は顔を真っ赤にしながら返した。
中編に続く
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