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《ゲーム転生⁈》正体不明の毛玉が、冷酷皇帝陛下に育成されてます  作者: はなまる
第三章 ミーヤと洗濯下女

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第二十話 アップデート

少し短いですが、キリの良いところで投稿しちゃいます。


前話のあらすじ


ヒューゴの様子を見に行ったミーヤと、ミーヤの気配を察知したヒューゴ。人間の姿のミーヤにとっては、初めての接近遭遇。不審者と間違われそうになったのを、誤魔化しつつ、最後は頭を撫でてもらい優しく見送られます。


その時、ミーヤの頭の中でアップデートのお知らせが流れました。

《“だいしゅきポイント”が入りました。新たなポイント獲得に伴い、アップデートを開始します》


 ミーヤの頭の中で、すっかりお馴染みとなったアナウンスが流れた。


(あっぷでーと……? なんだっけ? 聞いたことある気がする……!)


 ミーヤは妹尾美弥時代の記憶を手繰り寄せる。確かクラスのゲームの好きな男子に、教えてもらったことがあった筈だ。


 アップデートとは、システムやデータを最新のものに置き換えることだ。その男の子は、『アプデしないと、ゲームが進まなくなっちゃったりするんだよ』と言っていた。


 現状に当てはめて考えた場合、『だいしゅきポイント』なる新要素が追加され、そのためにシステムを更新する必要があるのだろう。


 だがしかし。


 この場合、アップデートされるのはミーヤなのか。それとも、この世界そのもの(・・・・)なのだろうか。


 いや……考えるのはやめた方が良い。たぶんそれは禁忌とか、触らぬ神に祟りなしとか、そういった(たぐ)いの話だ。クワバラクワバラ……!




   * * *



 ミーヤはアップデートについては、ほとんど思い出すことが出来なかった。実は聞いた当時もよくわかってはいなかったのだ。


 それよりも、ミーヤ的にはもっと気になることがある。


(『だいしゅきポイント』ってなんだろう……?)


 ミーヤはヒューゴと別れたあと、城門を出て商店街を目指して歩いていた。ヒューゴの無事も確認出来たことだし、予定通りに買い物をしてから森へと帰るつもりだ。


(だいしゅき……)


 誰が、誰を大好きなのだろう。


 愛されポイントは文字通り、毛玉(ミーヤ)の愛され具合が数値化されたものだ。規定の数値まで貯まったタイミングで『何かを生やす』という形で消費される。


(愛されポイントとは、別モノなんだよね?)


 アナウンスがあったのは、ヒューゴが頭を撫でてくれた直後だった。そのタイミングで発生した『だいしゅきポイント』。その場にはミーヤとヒューゴしかいなかった。


 だとしたら、『ヒューゴがミーヤを大好き』、又は『ミーヤがヒューゴを大好き』のどちらかではないだろうか?


 ヒューゴは毛玉のミーヤをとても可愛がってくれている。それはミーヤも理解している。


(でもあの時は、毛玉じゃなかったし……)


 人間のミーヤとヒューゴは、ほぼ初対面だ。実際には建国記念祭の舞踏会で、遠くの方にいるヒューゴと目が合ったことがある……ような気がしている。


(頭をなでてくれたから、嫌われてはいないだろうけど……)


 大好きではないだろう。ふむふむ。消去法で選択肢がひとつになった。


(わたしがへーかを大好きなの……⁈)


 思わず立ち止まってしまい、後ろから来た人とぶつかってしまった。ペコペコと頭を下げる。


 好きか嫌いかで言ったら、もちろん好きだ。甘やかしてくれるし、美味しいものをくれるし、何より正式に契約が成立した『守護者』なのだ。嫌いなわけがない。


 でもそれは毛玉の時の話だ。


 人間のミーヤとヒューゴは、雇用主と従業員の関係でしかない。関わりといえばヒューゴの洗濯物も、洗濯部屋に運ばれて来ることぐらいだ。


 そういえば今日も、ヒューゴのシャツが洗濯に出されていた。ミーヤは人間の姿の時でも鼻の性能が良いので、ヒューゴの匂いはすぐにわかる。


(くんくん……! あっ、コレ……へーかのシャツだ!)


 ヒューゴのシャツを見つけた時は、何だか嬉しくなった。毛玉の時には世話になるばかりなので、少しでもヒューゴの役に立とうと、張り切って洗濯した。


 ちなみにシャツの汚れは、ミーヤが夕食のあとにヒューゴのお腹の上でお菓子を食べたからなので、恩返しになっているかどうかは微妙なところだ。


 くんくんとシャツの匂いを嗅いでいるミーヤに、女将さんが『ミーヤどうしたんだい? ……(くさ)いのかい? ソレ』とちょっと嫌そうな顔をして聞いた。


 ミーヤはヒューゴの名誉を守るために、ぶんぶんと首を振って『良い匂いだよ!』と言っておいた。


 そうしたら、『嫁入り前の娘が、男物のシャツのニオイを嗅いでニヤニヤするもんじゃないよ』と、小言をもらってしまった。元令嬢も微妙な顔をしている。


(この世界の人は、洗濯前のシャツをくんかくんかしちゃダメなんだ!)


 ミーヤよ……君の前世の日本でも、ソレはちょっとアウトだと思う。人前ではやめておけ。


「こ、これはへーかのシャツだから!」


 ミーヤは慌てて弁解した。『臭いものを嗅ぐのが好きなわけではない』と言いたかったのだ。


「へぇ、ミーヤ。陛下のファンなんだ?」


 恋バナが大好きな農家の娘さんが、がっぷりと食い付いて来た。


「あ……ちがうの。へーかのシャツの匂いが……」


「陛下のシャツの匂いが好きなの⁈」


 ヒューゴのファンだと思われるのが、何だか恥ずかしくて誤魔化したら、より一層変態っぽい返事になってしまった。『〇〇くんが好き』などと噂になったら、大変な騒ぎになる小学生女子の記憶の弊害(へいがい)である。


 なぜかヒューゴの洗濯物は、これからミーヤの担当になることが決まった。


 そんな、洗濯場での今日のハイライトをボーッと思い出していたら、ミーヤはすっかり通行人の邪魔になっていた。重そうな荷馬車を引いたおじさんに、ジロリと睨まれてしまった。


 そそくさと道のはじっこへと移動する。そして半分無意識のうちに、自分の身体をくんくんと嗅いだ。


 つい昨日までの毛玉のミーヤは、ヒューゴと同じ匂いがしていた。ヒューゴと同じシャンプーで毛並みを洗い、同じ香油で毛並みを整えてもらい、ほとんどの時間をヒューゴのシャツの中で過ごしていたのだ。匂いが同じになるのは不思議なことではない。


 けれど、たった一日離れただけなのに。


 ミーヤからは、洗濯洗剤とシミ取り油と漂白剤の匂いがした。洗濯下女は、全員が仕事終わりはこの匂いになる。


 ミーヤの小さな頭を包むように撫でた、ヒューゴの大きな手の感触を思い出す。


『さあ、もう行くが良い。気をつけてな』


 眉間の皺をそのままに、甘く低く響いた声が脳内再生される。


(わ、わたしが、へーかが『だいしゅき』なのかも……!)







読んで頂きありがとうございます。


誤字報告、大変助かります。いいねや感想、☆での評価にも、とても励まされております。皆さんのおかげで、ヘタレ作者が頑張れております(〃ω〃)



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