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夢と現実のヒーローショー  作者: やみの ひかり
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08話 過去と現在が繋がる場所

 西川悟(にしかわさとる)は森の奥へ車を走らせていた。対向車が来たらどうしようかと思う細い道を、何度もアクセルを踏みなおし慎重に進んでいく。うっそうとした森の中に目的の施設はあった。その施設は悟が幼少期過ごした車谷(くるまたに)研究所だ。


 車から降りてドアに鍵をかけると、悟は自分に問いかけた。


(私は弱かったけど強くなった。トラウマにも勝てるはず。グレートサトルはいける。グレートサトルは強い。グレートサトルはイケメンだ!! モテモテだ!! ……ちょっと言い過ぎたかな)


「あはは……」


 ドックン ドックン ドックン


 自らを奮い立たせようとするも、悟の心臓はこの場所を嫌がっている。


(駄目だ。やっぱり帰りましょう。ここまで来たのだってすごいことです。もう何もここには残ってはいないだろうし)


 車の鍵を開けようと、ポケットにしまったキーに手を伸ばそうとしたが、


(何考えてるんだ。この日のために強くなったんじゃなかったのか!! 私は進むんだ前へ!! 私はグレートサトル。いや、今やグレートキングサトルなのだ!!)


 なんとか思いとどまった。


 パン パン パン


 悟は両頬を手のひらで強く叩き気合を入れ、施設の玄関扉を開けた。扉の鍵は壊れていて簡単に入ることが出来た。


(なんだ大丈夫じゃないか。気持ちが少し落ち着いた。私の記憶の中の風景と違う。記憶というのは恐ろしい、自分で脚色していることにも気が付かない)


 悟の記憶に残っていた暗く冷たい廊下は、昼間ということもあり窓からの光に溢れていた。


(車谷教授の研究がまだ続いてるとして、ここに何か今に繋がるものは残っていないのか?)


 悟は施設の廊下を奥へと進んでいく。廊下の左側は窓になっていて所々割れているものの雨風の浸食は最低限に抑えられいて、ほとんど原型をとどめていた。廊下の右側には部屋のドアが続いている。少し散乱しているが、昔いたときの物がほとんどそのまま残っていた。


(そういえば、どうやってここに来る前の記憶を消していたんだろう? 私達が実験に使っていた装置では出力が弱く、測定することしか出来なかったはずだ。ここに来る前に消したのか? いや違う。それだったらここに来るまでの記憶が少しは残っているはずだ)


 廊下の端から端まで部屋を見回ったが、記憶を消すほどの高出力な機械は見当たらなかった。


(もしかして……)


 廊下の一番先には大きな広間がある。悟達はここで食事を取っていた。大広間にやってきた悟は、子供たちが座るための小さな椅子をひっくり返し始めた。


(掃除当番が決められ施設の隅々まで掃除をさせられていたが、この部屋だけは掃除を子供に絶対にやらせ無かった)


 悟は床に敷いてあるマットをはがし、むき出しになった床に伏せ、手を床にはわせ何か無いか探し始めた。


(あった!!)


 不自然な床のへこみを見つけると、へこみに指を引っかけて持ち上げてみた。すると、


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ


 床が割れて地下へと続く階段が不気味な音を立てて現れた。冷たい空気が地下から流れ出し、悟の悪寒を誘った。


(何も無いほうが良かった。こんな恐ろしいものが存在するなんて…… 見つけたからには行くしかないのですね……)


 悟はゆっくりと階段を降りていった。階段を降りきると扉がある。開けると陽の光が届かない暗闇があった。上からの光でかろうじて見える入口横の照明のスイッチを入れるが、電気はもう通っておらず付かない。


(こんなこともあるかと思って準備して来て正解でした)


 悟はポケットからペンライトを取り出し辺りを照らした。


 その地下室には手術台が置かれ、手術台を囲むようにたくさんの機械が置かれていた。棚の上には謎の女性が首につけていた機械が、無造作に転がっている。他にも缶詰などの食料も置いてあった。


(こんな部屋があったなんて、ここで警察が来たのをやり過ごしたんでしょうか)


 タン タン タン


 上から足音が聞こえてきた。施設に誰かが入ってきたようだ。悟は地下室から外を伺いながらゆっくりと出るも、相手はもう悟が来ていることが分かっていたようだ。


「西川悟だな?」


 大広間の入口に首に機械をつけた危なそうな見た目の男が、こちらを向いて問いかけてきた。


「あなたは間違っています。私は西川悟ではない!!」

「なに!? そうなのか?」

「グレートサトルである!!」

「え……」


(初対面の相手に使うと退かれてしまうが、こういう使い方もあるのです。なんだか心が痛い。だが相手が動揺しているうちに逃げ道を。見た目からして明らかに私に危害を加えてきそうだ)


 男があっけに囚われているうちに悟は逃げ道を探した。


(あそこの割れた窓から逃げましょう。その前に少し話を聞いてからですね)


「私になんのようですか?」

「教授から西川悟を抹殺するように言われている」

「恐い命令ですね。グレートサトルがいてはいずれ障害になってしまうということですか?」

「何言ってるんだ。グレートサトルだと本気で言ってるのか? 頭がおかしいんじゃないのか? 情報が漏れることを防ぐためだ」

「……」


(私は頭など断じておかしくない!! グレートサトルなのだ!! まぁ…… まだ私のすごさを分かってないからです。ひとまずは逃げるが勝ちです)


「2対1ですけど、大丈夫なんですか?」

「なに!?」


 悟は男の後ろに視線を移動させた。男が急いで後ろを向く瞬間、悟は割れた窓へと走った。もちろん男の後ろには誰もいない。


(はったりが効きました。さようならまた会いましょう)


「待ちやがれ!!」


 バキバキバキバキバキ


 男が叫ぶと、後方から地面を氷柱が走り割れた窓を凍らせてしまった。悟は逃げ道を失ってしまう。


「うわっ!! な、なんですかこれは!?」

「知らなくて良いことだ。あんたは今ここで死ぬんだからな」


 振り向くと男が両手を地面に当てていて、そこから氷が地面から窓へと繋がっていた。

続きが気になる方は、ブックマークよろしくお願いします。


そして、この下にある☆☆☆☆☆で評価してもらえると、とてもとてもうれしいです。


さらに、その下の感想もお待ちしております。一言だけでも、裸踊りしてしまうほどうれしいです。


更新頑張ります。

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