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夢と現実のヒーローショー  作者: やみの ひかり
3/18

03話 彼女の夢

 ザッバァーーーーーーン


 西川悟(にしかわさとる)は学校の廊下に波を起こすと、サーフボードを創り出しその波に乗った。顔が闇でおおわれた女子高生を通り過ぎ、


「手を伸ばしてください!!」


 杉咲緑(すぎさきみどり)の手を握り引き上げると、サーフボードの前に座らせ顔が見えない女子高生から逃げた。






 体育館裏まで来ると、悟は誰もいないことを確認し緑を降ろした。


「大丈夫ですか?」

「なんなのよこの有り得ない展開は!? ビショビショじゃないのよ!!」

「すみません。ここは夢の中ですよ。私は夢の中ではなんでも出来るんです。私は夢の中ではキングなんです!!」


 悟は創り出したサーフボードを丸めてポケットにしまい、緑に手のひらを向け、温かい風を創り出し緑を乾かす。


「キングなんだったら早くあの子を消してよ!!」

「それは出来ないんです…… あれはあなたが作り出したもの。あなたが消さないと駄目なんです」

「全然キングじゃないじゃない!!」

「そう言われましても……」


(くぅうううう。たしかに、キングだったらそんなことも出来るかもしれません。私はキングではまだ無い…… いやいや、しょうがないじゃないか!! キングだって万能じゃない!! 全て出来る人が、キングだと言うのか!? そうだ。私は頑張ってるじゃないか!! 少しは褒めてくれたって良いじゃないか!!)


「もう乾いたから温風は良いわ。暑い」

「あぁ、すみません。ところでそのボロボロになった雑誌はなんですか?」


 緑の手の中にさっきまで無かったボロボロの雑誌が握られていた。


「きゃあ!!」


 ボト


 悟は緑が気持ち悪そうに地面に落とした雑誌を拾い上げた。付箋が挟まれているページがあったので広げてみると、緑がおしゃれな服を着て雑誌に載っていた。


「これはあなたですか?」

「そ、そうよ!! 私はモデルをやってるの」


(確かに、緑さんは背も高く、手足も長い。一般人にはあまりいないタイプですね)


「ではなぜボロボロなんですか?」

「それは言いたくない」

「あなたは悪夢と戦わなきゃいけない。話していただけませんか?」

「……話さないと駄目?」

「はい。悪夢にあなたが勝たなければずっと続きます。私はあなたを守り、ガイドすることしか出来ないのです」


 緑は下を向きゆっくりと話し始めた。


「その雑誌は私がはじめて1ページもらったものなの。それをあの子に貸したの。そしたらボロボロになって机に入っていた」

「それで緑さんは仕返しをしたというわけですか? 下駄箱の泥だらけの靴はあなたがやったんですね?」

「そうなんだけど…… 違ったの。あの子は裏でイジメられていて、いじめっ子に雑誌を見られてしまって、守ったときにボロボロになってしまったみたいなの。私はあの子がイジメられてるなんて知らなかった」

「その子はどこに?」

「あの子はそれをきっかけに引きこもってしまったわ」

「なぜすぐに謝りに行かなかったのですか?」

「モデルの仕事は学校に秘密でやっていて。雑誌をきっかけにいじめっ子達にバレてしまったの。いじめっ子達は、バラされたくなければあの子と(えん)を切れとおどされて…… きゃあ!!」


 緑が向く方向を見てみると、顔を真っ暗な闇でおおった女子高生がこちらに歩いてきていた。


「来ないで!!」

「駄目です!! 前を向いて!! 悪夢から目をそらさないで!! その子が君を恨んでいると思いますか?」

「絶対に私を恨んでいる。じゃなきゃこんな悪夢見ないじゃない!!」

「これは君が生み出した想像の産物なんです。その子の名前は?」

「その子の名前は…… 香里(かおり)よ!! ごめんなさい!!」


 女子高生が足を止めると、真っ暗な闇が女子高生の顔から抜けていった。


「ごめんなさい!! ごめんなさい!! 私モデルの仕事続けたくて!! それでそれで」

「顔を上げてください。香里さんの顔は怒ってますか?」

「ううん。怒ってない」


 顔の闇が解けた香里の顔は悲しい顔をしていた。


「私…… あなたとまた会いたい!! 会いに行っても良い?」


 緑の問いに香里は笑顔を見せてうなずくと、夢の世界から色が抜け真っ白な世界に変わっていった。風景が少しずつ細い線になり消えていく。


(夢から覚めそうですね)


 悟は夢の終わりを感じるとゆっくりと目を閉じた。






 夢から目覚めた悟は、車で緑を香里の家まで送った。


「私、モデルの仕事が駄目になっても良い。こんな気持ちで続けるぐらいなら、香里と仲直りする。香里怒ってないと良いな」

「大丈夫。香里さんは怒ってませんよ。話せばちゃんと分かってもらえるはずです。それに、モデルの仕事はちゃんと学校に相談するべきです。きっと緑さんの話を聞いてくれる先生がいるはずです」


 家の前まで行くと、悟は優しく背中を押し緑を後押しした。


「さぁ、行きなさい。あなたの親友が待ってますよ」

「ありがとう。あなたってグレートね」

「でしょでしょ!! 分かってくれたんですね!! 私は西川悟ではない。グレートサトルなんです!!」

「じゃあ、私は行くね。ありがとうグレートサトル」

「はい。お元気で」


(ヒャッホー!! グレートサトルと呼ばれたぞ!! 私はグレートサトルなんだ!!)


 悟は興奮冷めやらぬ中、車の中に戻り緑を見守った。緑がインターホンを押すと香里が出てきて、二人は泣きながらきつく抱きしめ合った。


「ふぅー」


 二人の姿を見届けた悟は安堵し肩の力が抜けた。


(任務完了です。良かった。今回は良い仕事したな)


「悟?」

「わぁっ!! いつの間に」


 気づかない間に、助手席に機械の首輪を付けた女性が座りこちらを見つめていた。


「すいません。誰ですか?」

「私のこと覚えてない? 助けて……」


 スー


 女性は音もなく消えていった。


(どういうこと? これは夢ですか? 現実ですか? こわっ!! 鳥肌たった!!)

続きが気になる方は、ブックマークぜひともお願いします!!


そして、この下にある☆☆☆☆☆で評価してもらえると、読者の反応を知ることが出来て、とてもとてもうれしいです。


さらに、その下の感想もお待ちしております。一言だけでも、鼻血が出るほどうれしいです。


続きをお楽しみください。

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