02話 夢の中へ
杉咲緑が怪訝そうな顔しているも、
「私がもしあなたに何かしたら、警察でもどこへでも行きますよ」
「本当ですね。早くやってください」
西川悟はなんとか了解を得ることに成功した。
(くぅううう。なんで私がこんな下に出なきゃいけないんだ。気持ちを切り替えていこう。私はグレートサトルなのだ。夢の中では最強なのだ。全く問題ない)
眠るためだけの部屋は、天井から布が何層にも降りて幻想的な空間だ。部屋の中心に置かれたベッドに緑を寝かすと、
パンパン
悟は手を叩き助手の佐藤浩太を呼んだ。
「今日も最高のアシストお願いします」
「はぁーい」
浩太が気だるそうに片手に水が入ったコップ、もう片手にはスーパーの紙袋を持って部屋に入ってきた。
「こんなの意味あるんすか?」
「しっ。良いからやってくれ。雰囲気が一番大事なんだ」
スーパーの紙袋からドライアイスを取り出すと、浩太はそれをコップの中へ入れた。
コポコポコポコポ
コップの中から霧が吹き出すと、部屋の地面を霧が埋め尽くしていった。
「はい。ここでミュージックスタート」
「はいはい」
悟の合図で浩太がCDプレーヤーのスイッチを押すと、
チン ドンド チーン ドン チチーン
オリエンタルな音楽が流れはじめた。
「それでは睡眠導入はじめます。目を閉じゆっくりと呼吸してください」
悟は緑に睡眠を促すと、両手を緑の顔の近くでそれらしくゆっくりと円を描くように回した。
「眠れー。眠れー。良い子よ眠れー」
数分すると緑は眠りはじめた。この儀式に深い意味などない。悪夢を見る人は寝不足の人が多いいので比較的にすぐ寝てくれる。だが悟は雰囲気を一番大事にしていた。
(良し、寝ましたね。私も夢の中へ行くとしましょうか)
緑の睡眠を確認すると、悟はポケットから小さなアルミケースを取り出した。呼吸を整えると、ケースに入ってる錠剤を一粒取り出し飲み込んだ。
ゴックン
睡魔が悟を襲う……
悟は現実の中なのか、それとも夢の中なのか、確認しながらゆっくりと目を開けた。
(夢の中へ入れたようですね)
そこは緑の夢の中。通り過ぎる緑と同じ制服を着た人達が同じ方向へと向かっている。
(朝の通学路といったところでしょうか。緑さんはどこに行ったんでしょう?)
悟が緑を探していると、目の前をすらりと背の高い女子高生が全速力で走り去っていった。
「あっ、緑さん!! どこへ行くんですか!?」
「私の後ろから、誰かが追いかけてくるの!! 早くどうにかして!!」
続けて目の前を緑と同じ制服姿の女性が通り過ぎた。顔は漆黒の闇がまとい誰なのか全く分からなかった。
(これが悪夢の原因ですか? これでは誰なのかわかりません。夢の中へ入る前に聞き出せればもっと楽だったのに!!)
悟は創造力を働かせ、両手にカウボーイが持っているような投げ縄を出現させた。夢の中で悟は創造力でどんなものでも生み出すことが出来る。ただし、想像の範囲内の物に限られる。
悟は投げ縄を頭上で回転させると、緑を追いかけている女子高生に向かって投げた。
「よし!!」
縄は女子高生の体にかかったかに見えたが、簡単に引きちぎられそのまま行ってしまった。
(私の創造力が足りませんでした……)
悟の力は細部を細かく想像するほど強く想うほど強度が増す。
(謎の女性に緑さんの想いが詰まってます。今回も簡単では無さそうだ。それにしても、お二人とも足が早い。見失ってしまった。これはまずい!! 早く探さなければ!!)
二人が行ったであろう方角に目を向けると、学校の時計台が見えた。
(あそこに違いない。私としたことが…… グレートサトルよ。気をしっかり持て!!)
急ぎ足で学校へ到着すると、学校の入口で生徒たちが人山を作っていた。悟は生徒をかき分けて人山の中心へと進んだ。
人山の中心には下駄箱があり、下駄箱の中段あたりに乱雑に入れられた泥だらけの上履きと、赤い字で、もう学校へ来るな!! と書かれた張り紙が貼られていた。
(イジメですかね? イジメはどの時代でもあります。無くならないもんですね。これが悪夢の原因?)
悟の横にいる生徒がこの件について話している。
「誰がやったか知ってるよ。2年1組の杉咲緑がやったんだって」
「俺もそれ聞いたぞ。酷いもんだな」
(加害者は緑さんですか。被害者は誰なんでしょう? 緑さんが記憶にフタをしてしまってわかりませんね)
下駄箱の名札の文字は闇で覆われて読むことは出来なかった。
(もっと詳しく聞ければ良かったのですが…… はぁ…… 私はこういうことがうまくない。もっと聞き上手な人間にならなくては、ダメダメです)
「はぁ……」
悟が落ち込んでいると、
「きゃあああああ!!」
緑の叫び声が学校の上の階から聞こえた。
(あの声は!! 急がなければ!! 悪夢に取り込まれてしまうと、眠りから一生目覚めなくなってしまうケースもある)
悟は人混みをかき分けて、声の元へと急いで向かった。
(緑さん!! 待っててくださいね!! グレートサトルが向かいます!!)
階段を登ると、二階の廊下に緑はいた。
「ちょっとどこ行ってたのよ!! 早くこの人をどこかにやってよ!!」
緑は制服姿の顔が闇で見えない女子高生に、廊下のはじの逃げ場の無いところまで追い込まれていた。顔が分からない女子高生は緑にゆっくりと歩み寄っていく。
「見失ってしまってすみません!! なんで逃げ場の無いところにいるんですか? あなたの夢なのだから、好きに出来るんですけどね。まぁ、一般人にそんなこと要求するのは野暮ってもんです」
悟は両腕を広げ創造した。
体から大量の水が溢れ出し廊下いっぱいに水が広がっていくと、緑と顔が分からない女子高生が水に飲み込まれていった。
「ちょっと!! 何よコレ!? ヤダ!!」
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