17話 悪夢から生まれた獣
私事ですがバタバタしてしまっていて更新遅れてすみません。
続きをお楽しみください。
そこはビルとビルがひしめき合う都会のコンクリートジャングル。西川悟は自分の体が意思とは関係なく大きくなっていくことに気が付いた。
悟は空をサーフボードで飛んでいたのだが、大きくなった体ではビルとビルの隙間をうまく飛ぶことは出来なかったので降りることにした。
(大きくなった体の重さで道路を陥没させてしまうかもしれない。私の体重は今何キロあるのだろう? いや、キロではなくトンでしょうか?)
悟はサーフボードから道路へと慎重に降り立った。背筋を伸ばすとビルよりも頭ひとつ分高い。ちょうど怪獣と同じぐらいの大きさで止まったみたいだ。
「グレートサトル!! 良くやった!!」
悟は夏生の大きな声で振り向いた。ビルの屋上で拡声器を持った夏生が立っていた。夏生の後ろにはカメラでこちらを撮影している里美もいる。
悟は二人の元へ足元に停まってる車や、信号機、街路樹を潰さないように歩み寄った。夏生は興奮を隠せない様子で、しきりにガッツポーズを繰り返している。
「素晴らしいじゃないかグレートサトル!! 作戦は大成功だ!! 誰かがSNSで拡散してくれたみたいなんだ。みんなの想いがグレートサトルを大きくしたんだ。なぜかヘンタイマンと拡散されているがそんなことはどうだって良い。結果的に作戦は成功したんだ。さぁ、怪獣を倒してこい!! グレートサトルよ!! いやヘンタイマン!!」
「やめてください!! 私はグレートサトルです!!」
(絶対さっきスマホで撮っていた男だ…… 私はグレートサトルだと何度も名乗ったのに!!)
しょんぼりしている悟を夏生がなだめるように言った。
「まぁまぁ。このライブの動画サイトまで辿り着いた人はたくさんいる。ヘンタイマンではなくグレートサトルだと分かっているはずだ。怪獣を倒して見返してやれ!!」
「そうですね…… あとこれって元に戻りますかね?」
里美と夏生は目を合わせて両手を空に向けて、分からないといったジェスチャーを見せた。
「いやいや、君たちがやったんだから必ず元にもどしてくださいよ!!」
「そうね…… あっほらっ、怪獣が暴れているわ。グレートサトル早く行って!! この街を守って」
里美は答えをにごし、怪獣を倒すように仕向けた。悟は仕方なくそれに応じた。
「わかりましたよ。行ってきますよ。私が元に戻れなかったら二人の責任ですからね。元に戻れなかったときは一生面倒見てくださいね」
「はいはい。早く行って」
里美は生返事で答え、夏生はというとノートパソコンを覗き込んでいる。元に戻れるのか心配しているのは悟しかいなかった。
(こんな大きさじゃあ生活出来ない…… 元に戻れるのだろうか? こんなに大きかったら食べ物もたくさん必要になるでしょうね。元に戻れなかったら餓死して死ぬ…… 今はそんなこと考えることはやめましょう!!)
悟は悩む頭を振り払い怪獣の元へと向かった。
怪獣の破壊活動は続いていた。怪獣はビルに登ろうとして壊している。怪獣の精神年齢は無邪気な子供みたいだ。
「おい!! そこの怪獣!! グレートサトルが相手になろう!!」
悟がたんかをきると、怪獣の手が止まりゆっくりと魚の頭がこちらを向いた。半開きになった口の中にとげとげしい牙が無数に生えている。ドローっと口から垂れる唾が道路へと滴り落ちた。怪獣はゴリラのような筋肉ムキムキの腕で口に残るよだれを拭いた。
(こわっ…… ホラー映画ですか…… 前に見たときよりも生々しくなっていませんか。くぅー。迷ってる暇はありません。先手必勝です)
「とう!!」
悟は怪獣に向かって走りドロップキックをお見舞いした。
ギャアアアアアアオオオオ
怪獣は叫び声を上げて後ろのビル群に吹っ飛んだ。怪獣の後ろにあったビル群が崩壊し、怪獣の体におおいかぶさっていく。
(あわわわわ。ビルを壊しちゃいました。私のせいではない。ビル1棟いくらぐらいでしょう? 3億? 5億? ビルが少なく見積もっても4棟倒れているから、15億ぐらい壊してしまった。ひぃー。夏生に顔を隠せと言われたのは正解でした。一生かかっても返せない借金を負うことになったかもしれない。これは正義の行動なのでみな様お許しください)
ギャアアアアアアオオオオオオ
「うわっ」
倒壊したビル群の中から怪獣の叫び声が響き渡った。怪獣の叫び声を聞いた悟は気を引き締め直した。
(今は戦いに集中しなくちゃ。グレートサトルは強いです!! 手応えもあります。いけます!! 今の私はグレートサトルの後ろにマンを付けても良いですね。そのほうがしっくりくる。グレートサトルマン!! 非常に良い響きだ)
「え!?」
倒壊したビル群の中から怪獣は姿をあらわした。悟がビックリしたのはさっきまでの怪獣の頭とは違っていたからだ。怪獣の顔は幼少期車谷研究所で一緒に部屋を過ごした子供達の顔だった。子供達は車谷源治に殺され亡くなっている。阿修羅像よりも多くの顔を持つ怪獣の子供たちの顔が悟を見つめている。
ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ
悟は自らの胸元を強く掴んだ。子供達の顔を見た悟の心臓の鼓動が強く早く脈を打った。
(く…… 胸が苦しい…… なんでみんなの顔をしている)
「助けてぇえええええ!! 助けてぇえええええ!!」
怪獣についた子供達の顔が、悟にしきりに助けてと叫ぶ。悟は思わず耳を塞いだ。
(やめてくれ!! もう忘れたいんだ!!)
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まだバタバタしているのですが、更新頑張ります!! 続きもお付き合いください。