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夢と現実のヒーローショー  作者: やみの ひかり
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15話 空から降ってくる

 西川悟(にしかわさとる)はサーフボードの後ろに乗る里美(さとみ)が指差すほうを見てビックリした。雲の切れ間から大きな魚の頭が出ていた。その大きさは現実の世界では見たことがない。映画に出てくるような大きさ。いわゆる怪獣だ。


「なんですか。あの巨大な魚の頭は!?」

車谷源治(くるまたにげんじ)が悪夢エネルギーを利用するために溜めたことで産まれてしまったのよ。あなたも遊園地の夢の中で見たことあるでしょう?」

「あれが? 夢の中で見たのは人間ぐらいのサイズでしたよ。大きさが全然違う……」

「みんなの悪夢を吸ってどんどんと大きくなっていったのよ。現実と夢の境界線が完全に破られたんだわ。あんなにハッキリと具現化するなんて」

「ど、ど、どうするんですか。あんな大きな怪獣」

 

 怪獣は雲の切れ間から巨大な魚の頭で周囲を見回すと、雲の切れ間からヌルっと抜け出し都会の真ん中に落ちていった。


 ドスウウウウウウウウン


 怪獣はビルとビルの間に落ち都会の大通りを塞いだ。突然降ってきた怪物に車が次々と当たっては爆発し燃えている。さらに次々と来る車が大渋滞を起こし、巨大な怪物の姿を見た人々が車を捨てて逃げていく。


 魚の頭を持った怪獣はゆっくりと立ち上がった。その体はとげとげしい甲羅を待つ亀、腕は屈強なゴリラの手、足にはスパイクとロングソックスを履いてサッカー選手のような強靭な足を持っている。


 怪獣の足元は大破した車の炎で包まれているが気にする素振りは見せない。キョロキョロと辺りを見回し、都会の街並みのほうが気になっているようだ。


(いったいどうしたら…… 巨大過ぎる……)


 怪物の大きさは高層ビルより頭一つ抜けている。魚の頭が隣の市からでも確認出来ることだろう。逃げ惑う人々の叫び声が下から地鳴りのように響いてくる。


「悟降ろして!! あなたは怪物の足止めをして」

「え!? 私がですか? 里美は何をするんですか?」

夏生(なつお)と合流して作戦を練る」

「私一人であの怪獣とですか? うーん…… そうですね。私には良い作戦が思いつく気がしません。里美と夏生に任せて私は足止めに専念しましょう」


 悟は地上へサーフボードを滑らせ、ビルの隙間を縫って人気のないところへ着陸した。悟は里美を降ろすと、すぐに風を創り出し怪獣に向けてサーフボードを滑らせた。怪獣は車を持ち上げてタイヤを指でクルクルと回している。それはまるで赤ちゃんがおもちゃで遊んでいるようだ。


(怪獣にとって人間なんてゴミみたいなものでしょう。こんな大きい怪物を足止めしろったってどうすれば良いんですか!?)


 近くで見る怪物の大きさは格別だ。


(推定150メートルでしょうか。アリが像に戦いを挑むようなものだ)


 とにかく悟はやってみることにした。サーフボードに乗りながら両手を空に向けて創造する。頭上に氷を発生させると、氷はみるみると巨大化し氷の槍となる。


 氷の槍が車ぐらいの大きさになると、悟は魚の頭をめがけて氷の矢を飛ばした。


 ウオオオオオオオオオオオオ


 当たった瞬間声を上げて怯んだかに見えたがまったく効果が無く。車に飽きた怪獣は車を放り投げ捨て、今度はビルを砂場に作った砂の城のように破壊しはじめた。


(無駄ですね。顔に石粒がぶつかった程度なんでしょう。いったいどうすれば……)


「悟!! こっちへ来て!!」


 声のほうを振り向くとビルの屋上に里美の姿が、大きなメガホンを持ち悟を呼んでいる。里美の後ろには夏生の姿もあった。


(何か作戦を思いついたのでしょうか? 思ったより早いですね)


 悟は風に乗り二人の元へと降り立った。


「なんですかその機材は?」


 里美と夏生の周りにはいろいろな機材が置かれ、夏生は機材をいじっていた。


「ちょっとね。TV局の人からかっさらって来たのよ」

「えっ!? それは泥棒ですよ!!」

「まぁまぁ。こんな時だから仕方ないでしょ? それに怪獣から逃げるためなのか中継車が乗り捨ててあったのよ。あとで返せばプラマイゼロ。減るもんじゃないし、鍵もかけてなかったのよね」


 こういう時の里美は大胆不敵だ。瞳が反論を許さない。力を入れた瞳は切れ味抜群になる。


「そんなことって……」


 悟が口ごもっていると夏生が里美を呼んだ。


「ちょっと里美手伝ってくれ!!」


 里美と夏生は、足元の機材をせっせとセットしていく。セットしながら里美が悟に言った。


「悟、顔隠せる? 正義のヒーローみたいに」

「正義のヒーロー!? ど、ど、どういうことですか?」

「手短に話すと、悟を世界に生中継してみんなの想いを集めるの。顔は隠したほうが良いでしょ? 夏生これで終わり?」


 機材をセットし終わると夏生は里美にグーサインを出し、ノートパソコンを開くと悟に言った。


「えーと。ヒーローの名前はどうする? なにか呼び名があったほうがいいだろう?」

「本当にやるんですか? 突然言われましても心の準備が…… 一応みんなからはグレートサトルと呼ばれてますけど」

「グレートサトル? またそれかよ。ちょっとダサいんだよなぁー。まぁ、グレートサトルで良いか。題名は、みんなのヒーローグレートサトル怪物を倒すために孤軍奮闘する。みんなの想いがグレートサトルを強くする。これでどうだ!!」


 夏生が動画投稿サイトに軽やかに題名を打ち込んだ。


「悟何やってんの? 早くヒーローの姿になって」

「あ…… はい」


 悟は里美にうながされてヒーローの服を創造する。


 悟は言われるがままの着せ替え人形だ。怪物は暴れているし、ヒーローになれと言われ、混乱する頭がついてこない。なにかしなくちゃいけないという想いが、二人に従ってしまう。


「悟それで良いの? ちょっとダサくない?」


 悟はかっこいいヒーローの服を創造した。つもりなのだが、里美は悟の創造したヒーローの格好に表情を曇らせた。


「ダサくないです!! これが理想のグレートサトルです!!」


 悟は二人にうながされるままだったが、グレートサトルの格好は譲れない。子供の頃に夢見た、これぞグレートサトルなのだ。


 里美は反対だったが夏生は理解してくれた。


「悟、良いよそれ!! 俺は悪くないと思うぜ。あとはマントも追加しようぜ。ヒーローといえばマントだろ? さぁ、そこに立ってライブ中継始めるぞ」


(マント!! 夏生は良いセンスしてますね。里美はまるで分かってない!!)


 悟はさっそくマントを創造した。里美がカメラを持ち上げ悟に向けると電源を付けた。カメラについた赤いランプが点灯する。


「悟、怪物が背中に映る位置に立って」

「こうですか?」


 悟の意思とは関係無しにあれよあれよと進んでいく。カメラを向けられたらもうやるしかない。逃げ道は無い。これがグレートサトル対怪獣の世紀の一戦の始まりだ。


「ヒーローっぽく白鳥ポーズ取って!! 生放送だからな!! 失敗は許されないぞ!!」

「わかりました」


 夏生は監督っぽくげきを飛ばす。悟は言われるがまま片足で立ち両手を翼のように広げた。


「ライト!! カメラ!! アクション!!」

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感想もお待ちしています。一言だけでも、ラーメンで顔を洗ってしまうほどうれしいです。


更新頑張ります!! 続きをお楽しみください。

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