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夢と現実のヒーローショー  作者: やみの ひかり
13/18

13話 創造主

 西川悟(にしかわさとる)は草原にうつ伏せで倒れている里美(さとみ)を抱き上げた。


(良かった。息をしています)


 里美はかすり傷はあるものの爆発の衝撃で気絶をしただけみたいだ。


 パタン


 扉が閉まる音がして悟は草原に建つ家のほうに目を移した。家の玄関からは散歩に出かけるかのように、緊張感の欠片もない車谷源治(くるまたにげんじ)が出てきた。こちらに慌てずゆっくりと歩いてくる。


 悟は里美を地面にそっと寝かせると、立ち上がり身構えた。震える手を力を込めて抑え込もうとするが、震えを助長させるだけだった。


(私は子供の頃とは違う。私は成長し強くなった。車谷教授なんて弱い。私はグレートサトルなんだ)


「君たちはもしかして森の研究所の生き残りか? 成長して少し顔が違うが面影がある。君はたしか316番だ。それと彼女は313番だな」

「やめろ!! その番号で私を呼ぶな!!」


 悟は声を荒げ両腕を車谷に伸ばし創造した。鋭い風が草原の草を刈りながら車谷に向かって巻き起こる。


「316番は出来損ないだったな。力を使えるようになったみたいだが。やはりこのレベル止まり」


 車谷が右手をゆっくりと上げると、車谷が立っている前方の地面がせり上がり鋭い風は土壁にあっけなく遮断されてしまう。


「私を番号で呼ぶな!! 私には西川悟という名前がある!! あんたのせいで私は思い出してしまう。あの暗く深い森を!! あの日から私は睡眠薬が無くては眠れ無い!! あなたのしたことは私に悪夢を植え付けることだ!!」

「君に名前は無いはずだが。すまなかったね。楽にしてやれなくて。生きることは大変だ。生きることは辛い。現実とは絶望だ」


 せり上がった土壁が二つに割れ、車谷が土壁の間を通りゆっくりとこちらに歩いてくる。


「他の子供達はどうなったか知っているか? 316番を処分することが決まったあの日。内通者がいたせいで実験体がすべて脱走した。慌てた私は全員を処分する決断を下した。だが森をいくら探しても三人だけは見つからなかった」


(三人だけ? じゃあ、あの時一緒にいた子供達は、里美と夏生(なつお)以外みんな殺されてしまった……)


「可哀想なことをしてしまった。内通者を尋問したが三人は遂に見つからなかった。あの日からずっと処分しなければと思っていたんだ。そっちから来てくれるとはな。今楽にしてやるからな。もう一人は来ていないのか? 770番だ」


 車谷は周りを見回した。770番は夏生の番号だ。夏生はここには来ていない。


「一緒じゃないのか? まぁ良い。君たちが私の元へたどり着いたのなら、770番もじきにやって来るだろう」


 車谷の両手が指揮者のように優雅に空を描くと爆風が悟を襲う。


 悟は両手を伸ばし風を創造した。車谷の風と相殺しようとしたが、里美を地面に残し突風に吹き飛ばされた。悟はそのまま後ろに吹き飛ばされ、生えていた大木の幹に思いっきり背中を叩きつけられた。


「ぐはっ」


(なんて風だ…… 私の創造力を優に越えています。だけど負けるわけにはいかない!!)


 悟は痛む体を無理矢理気持ちで起こした。膝は笑っている。


「もう終わりか? やはり316番は出来損ないだな」

「出来損ないなんかじゃない!! 私はあの日から強くなった。グレートサトルに生まれ変わったんだ!!」


 悟は地面に両手をかざし創造した。悟の手元の地面からは木々が次々と生え、急激な成長を遂げる。車谷の方へと幾重にも枝が伸びていく。


 車谷は抵抗することなく、


「……」


 悟の創り出した木々におおわれていった。


「創造力とは、夢の力とはこんなものでは無い!!」


 車谷が叫ぶと、車谷をおおっていた木々がどんどんと枯れてしおれていった。


「やはり凡人だな。子供の頃に記憶を消し、新鮮な脳にして、まっさらな状態から鍛えてあげたというのに。なげかわしい」


 パキパキパキパキパキ……


 枯れた木々を押しのけて中から車谷が出てきた。悟に落胆したのか悟と戦うことを止め、車谷は里美のほうへと向かって歩いていく。


「やめろ!! 里美に手を出すな!!」


 車谷は足を止めて、冷めた目で悟に言った。


「まだ私に歯向かう気なのか? もう決着は着いただろう。316番創造というのはな。こういうことを言うんだ」


 車谷が手のひらを空に向けると、さっきまでおだやかだった草原が、マグマが吹き荒れる荒れた山へと塗り替わっていく。地面から隆起した岩肌をドロドロとしたマグマが流れていく。


(車谷教授がやっているのですか? すごすぎます。世界が創造されていく。一瞬でこの規模の空間を創り変えるなんて……)


「ただ氷や火を生み出すだけではない。創造とは世界を作り替える能力なんだ。今はこの狭い一室だけだが、いずれ私が神となって世界を創造する。そのときは必要の無いものは全て消すつもりだ」


 車谷が里美に向かって手を向けると、地面から大きな土の手が生えて里美を拾うと、車谷の元へと伸びていく。


「やめろぉおおお!! うわっ!?」


 車谷が悟に手を向けると悟の体が地面に溶け込み沈んでいく。あらがおうとするも、どんどんと地面に沈んでいった。車谷は大きな土の手から里美をもらい受けると、首を掴み軽々と持ち上げた。


「世界の創造主になる私に刃向かうものは1人として残さない」

「お願いです!! もうやめてください!!」


 地面への沈みは悟の両手と頭を残し止まった。


「そこで見ているが良い。次は君だ。316番」

「やめてくれぇええええええええ!!」


 もがこうとするも、悟の体はしっかりと地面に埋まっていてピクリとも動かない。


「私のミスでこんなにも生かしてしまった。辛かっただろうに。苦しみの人生を今ここで終わらしてあげるからな」

「さとみぃいいいいいいい!!」


 ザシュ


「う…… 誰だ? 私の背後から…… もう1人の生き残り770番か?」


 車谷が後ろを振り向くと、背中には包丁が深く突き刺さっていた。

続きが気になる方はブックマークをお願いします。


そして、この下にある☆☆☆☆☆で評価してもらえると、とてもとてもうれしいです。


さらに、その下の感想もお待ちしております。一言だけでも、ロボットダンスをしてしまうほどうれしいです。


更新頑張ります。物語はまだ続きます。

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