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夢と現実のヒーローショー  作者: やみの ひかり
12/18

12話 宿敵現る

 社長室はのどかな草原が広がっていた。まるで夢の中へ入ったみたいな空間だ。


 西川悟(にしかわさとる)里美(さとみ)の前に現れたのは、一度も日焼けをしたことのないような白い肌、透明感のある空気に溶けてしまいそうなきれいな女性だった。


「あははははははははは」


 女性は身構えている悟たちを見て腹を抱えて笑っている。悟の緊張は一気にほどけた。悟は女性に愛想笑いを返しながら聞いた。


「こんにちは突然すみません。私は西川悟と言います。あなたはここに住んでいるんですか? お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」


 女性は笑い過ぎて瞳から涙を流し手で涙を拭った。女性の目には平和な世界に現れた滑稽な二人にでも映ったのだろうか。


「あぁー、おかしい。ごめんなさい。名前は忘れてしまったの。それよりもここにお客さんが来るなんてはじめてなの。来て」


 女性は合意も得ないまま来た道を振り返り草原を歩いて行った。女性の後ろをついていくと、煙突から紫色の煙を出すお菓子で作った様な家が建っていた。


「さぁ、入って」

「お邪魔します……」


 女性に誘導されて二人は家の中に入った。家の中は突き抜けの大きなワンルームになっていた。カラフルな外壁とは違い中は木目を基調とした落ち着いた雰囲気だ。


 家の中に入ると部屋の中心にあるダイニングテーブルにある椅子に座らされた。平和な空間と女性の無邪気な誘導に押されて、悟と里美は目的を忘れそうになっていた。


「この家は源治(げんじ)さんが建ててくれたのよ。源治さんは急な仕事が入って出かけているの」


(源治とは車谷(くるまたに)教授の下の名前です。これは車谷教授が生み出した空間なのでしょうか? それにしてもすごい。どれも丁寧に創り込まれている)


 ドスン ドスン ドスン


 地面を揺らすほどの低い音がどこからか聞こえてきた。棚に置いてあるお皿がカタカタと振動で揺れている。まるで巨人が足踏みしているようだ。


「最近多いいのよね…… 源治さんは大丈夫だって言うのよ。ただの地震だって」


 窓の外を指さした女性の表情が曇る。


「あそこが震源地みたいなの。源治さんは絶対に行っちゃいけないって言うのよ」


 窓の外には大きな電波塔が建っていた。空に向かって流れ星のような光が行き来している。


(あれは悪夢をため込む装置ですかね。あれが社長室にあるというサーバーなのでは?)


「そうだったわ。お客様にお茶を出さなきゃ」


 女性はすぐにキッチンへ行き、ガスコンロでお湯を沸かし始めた。


「紅茶はどこにしまったかしら」


 女性はキッチンの棚をあっちこっち開けては閉めてを繰り返している。


「里美。どうしましょう。なんだか女性のペースに乗せられてませんか?」

「そうね…… こんな空間が広がってるなんて想像もしてなかったから、早くサーバーを探しに行きましょう。おそらくあの電波塔の中にある」


 ガチャ


 そこへ額に汗を流し、スーツを着崩し、首に巻いたタオルで顔を拭く車谷源治(くるまたにげんじ)が帰って来た。一仕事終えたのだろう。車谷は帰ってくると、研究所では見たこともない優しい笑顔を女性に向けた。


「ただいま。あれ? お客様かい?」

「おかえり源治さん。そうなのよ。うん? どうしたの源治さん?」


(車谷教授!!)


 里美は車谷を見るなり椅子から立ち上がり悟の横で身構えた。悟はというと緊張で体が固まっていた。無理もない、悟のトラウマを作り出した張本人がそこに立っているのだから。


 車谷は女性からこちらに目を移すと、さっきまでほころんでいた表情は消え失せ、無表情で力の抜けた冷たい目をこちらに向けた。


「こんなところまで何しに来た?」


 車谷は声色をワントーン落とし、その声は悟の体の芯に響いた。


(車谷教授は何も変わっていません。あの時と同じ、私のことをゴミとしか見ていない目)


「あなたのやってることは犯罪よ!!」


 里美が車谷に向かって叫んだ。女性はキッチンで口を押さえてビックリした表情で固まっている。


「すぐに帰ってもらおう」


 そう言うと車谷の両手が怪しく光を放ち、電撃が里美に向かって放たれた。


 バチイイイイイイイン


 里美は電撃を両手で難なく受け止めた。里美の両手からは焦げた匂いと煙が立ち昇る。


「ほう。手加減は必要ないということか」

「源治さん。これはどういうこと!?」

「離れていろ。こいつらはこの世界と君を殺しに来たんだ」


 車谷は女性の前に立ちふさがると、両手に機械仕掛けのねずみを創造した。二匹のねずみは車谷の体を伝っていき床を駆け抜ける。里美の足元まで来ると風船のように膨らんだ。

 

「危ない!!」


 真っ赤に膨れ上がるねずみを見て危険を察知した悟は、とっさに椅子から立ち上がり里美を抱きしめると、足元に氷の壁を創造する。


 ボオオオオオオオオオオオオン


「うわあああああ!!」


 膨れ上がった機械仕掛けのねずみは自爆し、悟と里美は家の窓ガラスを突き破り外まで吹き飛ばされた。


(地面が柔らかくて良かった)


 悟はすぐに起き上がった。少し頭がクラクラするが草原が衝撃を吸収してくれたみたいだ。さっきまで草原でのどかに過ごしていた動物達は一目散に逃げていく。


「里美? 里美大丈夫ですか?」


 悟とは少し離れた位置に飛ばされた里美は草原にうつ伏せになって動かなくなっていた。悟はすぐに駆け寄り里美を抱きかかえる。

続きが気になる方は、ブックマークをお願いします。


そして、この下にある☆☆☆☆☆で評価してもらえると、とてもとてもうれしいです。


さらに、その下の感想もお待ちしております。一言だけでも、不味いカレーを何杯でもおかわり出来るほどうれしいです。


更新頑張りますので続きをお楽しみください。

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