01話 あなたの悪夢を治します
どうもはじめまして、やみのひかりと申します。また、前作を読んでいただいた方々、お久しぶりです。僕の文章力はまだまだ子供レベルだと思います。それでも一生懸命書いたので、読んでいただければ幸いです。
それでは、夢と現実のヒーローショーのはじまりです。
薄暗い和室。天井から吊り下げられた蛍光灯は切れかけており、たまについては消える。ちゃぶ台を挟んで、目の前に立つ怪物に西川悟はにらみを利かせた。
怪物はどんどんと肥大化し天井まで到達した。
「グルルルルルルルル」
怪物は牙をむき出しにして、今にも悟におおいかぶさってきそうだ。生臭い怪物の息が嗅覚を刺激する。
(私は夢の中では最強だ。私は夢の中では最強だ)
悟は創造力をふくらまし、左右に広げた両腕から植物を生やした。
「私は依頼主を、何が何でも守るのです!!」
悟の両腕から爆発的に成長した植物が、怪物もろ共部屋を埋め尽くしていく。
悟は事務所の鏡に向かって自らに問いかけた。
(昨日の依頼はすごく怖かった…… どうなることかと思った…… もうこの仕事は辞めたほうが良いのか? いや、こんな仕事をしている私は素晴らしい。それもそうだ。みんなから尊敬を込めて、グレートサトルと呼ばれている。他の追随を許さない。そうだ。グレートサトルはキングだ)
「あのー。悟さん?」
悟の助手である佐藤浩太が話しかけてきたが、グレートサトルと言わない浩太を悟はガン無視した。
(グレートキングサトルと言っても過言ではない)
「悟さん? さーとーるーさん」
業を煮やした悟はもう無視を出来なかった。
「おい!! いつも言ってるだろう!! 私を呼ぶときはグレートサトルだと!!」
悟がそう言うと、浩太はめんどくさそうに言ってきた。
「はぁ…… グレートサトルさん。依頼人が来てるっす」
「なに!? それを早く言ってくれ!!」
(浩太は私の助手なのに、私のことをまるでわかっていない。失礼極まりない。もっと尊敬されて良いはずなのである!! 私はグレートキングサトルなのだから!!)
悟はさっそうとジャケットに袖を通し、鏡をもう一度確認すると、前髪の曲がり具合を直し依頼人の元へと向かった。
事務所のソファーにはすらりと手足の長い女子高生が、両膝を付けてやつれた顔で座っていた。
「どうもはじめまして、私はグレートサトル!! 改めて、グレートキングサトル!! 私は偉大なる悪夢治療師。どんな悪夢も治してあげしょう!! 私に任せなさい!! 私の胸にさぁ。飛び込んできなさい!!」
「……」
ソファーに座る依頼主は、あっけにとられた表情をしている。
(しまった…… 初対面の自己紹介で、グレートサトルは使うべきでは無かった。まだ私の素晴らしさを知らない相手に使うと、こういう反応を取られる。じっくりと私の素晴らしさを噛みしめさせてからだった)
「いやー。自己紹介間違えました。ははは…… ちょっと知り合いの子供が、ヒーローに憧れてまして、よくヒーローごっこ遊びをしてまして…… あらためまして悪夢治療師の西川悟と言います」
「そうなんですね…… 私は杉咲緑と言います」
依頼人の緑が悟の顔を疑いの目で見ている。
(そんな顔で見ないでくれ!! 今に分かるときが来る。落ち着けグレートサトル。紳士に仕事をこなすのだ)
「本題に入りましょう。悪夢を見るという話。詳しく教えてください」
「はい。半月ほど前から毎晩ずっと悪夢を見るんです。夢の中で誰かにずっと追いかけられているんです」
「その誰かとは、心当たりはありま――」
「ありません!!」
「わぁっ」
緑は悟の言葉をさえぎり強く否定した。
(ビックリした…… 何か隠しているな。焦るなグレートサトル。ゆっくり聞き出そう。高校生は苦手だ。自由とは何かを考える時期だ。自己主張ばかりする。私も若い頃は、自由を渇望したもんだ。ふふふふふ)
「あのー」
「はい!! なんでしょう?」
「なんか怪しいですね。本当に悪夢を取り除けるんですか?」
「出来ますとも!! 私は夢の中ではスペクタクルなのです!! つまりはキングなんです!!」
「……」
悟は緑が一瞬横目で出口の確認をしたのを、見逃さなかった。
(しまった…… またやってしまった…… 絶対に変な人だと思われている。私はヘンタイみたいではないか!!)
「ごめんなさいごめんなさい。本当なんですよ!! 私は特殊な幼少期を過ごして、他人の夢の中に入れるんです!!」
「本当に入れるのなら、早くやってくれますか?」
「……良いでしょう!! さぁ、奥の眠りの部屋へ」
(くそ!! もっと聞き出すはずだったのに…… 悪夢を取り除くには、情報が何よりも重要なのに……)
悟は緑に疑いの目を向けられ焦っていた。詳しく話が聞けないまま眠りの部屋へと緑を案内した。
事務所の奥に五畳ほどの部屋がある。間接照明で部屋全体が薄暗く緑は心配そうだ。
「変なことしないですよね?」
「大丈夫です。よく眠れるように考えた部屋ですよ。私に任せてください!! 必ずや、あなたの悪夢を消して差し上げます!!」
「わかりました。なにかあったら警察行きます」
「え、え、そんな……」
(完全に失敗した…… あの日から私はグレートサトルになったのに。まだなれていないのだろうか…… いや、ネガティブな思考はダメだ!! 私はグレートサトルなのだ!!)
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