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01月下の竜胆

正直、ジャンルはローファンタジーかSFで迷った。

個人的には、SFサイエンスファンタジー


 リビングに惰性でつけられたテレビの音声がこだます。4人は優にかけられるダイニングテーブルに粗雑に並べられているのは近所のスーパーで買われたお惣菜は一人前。かつて、家族と暮らしたこの家は、彼、五城優、彼一人で生活するにはいささか広すぎるのだった。

 ぼんやりとテレビを眺めながら、食事を口に黙々と運ぶ。いつもと変わらないはずのそれは、なんだか今日は物足りないように感じていた。

 

 テレビではドキュメンタリー番組が放送されているようでアナウンサーが淡々と台本を読んでいるのが聞こえてくる。今や、テレビやネットなんかは平和の象徴ということもできる。

『人生には転機というものが存在します。引っ越しであったり、卒業であったり、はたまた人によっては事故であったり、それは人により様々な形をしているものでしょう。時期も、人それぞれで変わってくるものでした。しかし、3年前のあの日それは世界中すべての人間に同時に訪れました。』


『3年前、突如として世界各地の空に罅が入り、そこから、ツタがヒト型に絡まった様な姿をした怪人があふれ出しました。怪人たちは人を襲い、町を破壊し、多くの人が犠牲となりました。』


あの時は、そのまま世界は滅亡してしまうのではないかと不安に思った。

 でも、あの時は少しだけ期待はしたさ。テレビで見るようなヒーロー達が自分たちを救ってくれるんじゃないかって。

 現実はそんなことはなかった。両親を、妹を、隣人を、友達を、それまでの日常を、ただ無残に怪人たちは奪い去っていった。

 突然の襲来に、世界の公共機関やインフラは完全にマヒしてしまい。まるで世界の終りのようだった。友人たちと来週どこに遊びに行こうとか、家族とまたあの温泉地に行きたいとか、そんな未来の話をしていた日常が、明日どころか数時間後の命すら危うい状況だった。

 嵐の様に、悪夢のような日々だった。俺のすべてを奪ったあの日々が悪夢であれば、どれほどよかっただろうか。

 


『はじめは対話を試みようとする動きもありましたがこの未曽有の事態に政府が動き。対策本部が発足されてからは、自衛隊が活躍の活躍により、怪人たちは数を減らし、私たちは次第に日常の中へと戻っていきました。


 しかし、三年たった今でも、怪人たちの襲撃は続いています。

怪人たちは罅からやってきます。現在、罅は国の監視下に置かれ24時間体制で警備されています。』


 こうして、公共放送が再開し、自分の家で、テレビで情報が得られるだけで自分はまだ恵まれているともいえるだろう。


怪人たちは、罅からやってくる。逆に言うと、罅さえ警戒しておけば問題はないのだ。

自衛隊のおかげで俺たち一般市民はよほどのことが無い限り安全に暮らせている。

家族を亡くした自分には、それまでの日常は戻ってくることはないが、新しい日常に若干の寂しさを覚えつつもなじみ始めていたのだった。


甲高いスマートフォンのアラームが鳴り響く。

「バイトの時間だ」

 ドキュメンタリー番組はまだ続いている。俺は急いで支度をして、家を出た。

 リビングの電気はつけたまま。誰もいない、暗い家に帰ることがつらいから。

『最近になって、罅から遠離れた場所に怪人の目撃情報があります。皆様どうか、お気を付けてーーーー』誰のいなくなった部屋に、テレビの音だけがこだましている。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ラストオーダーも近くなりすっかり人もいなくなった店内で皿を洗っている。今日はもう人は来ないだろうと閉め作業に入っていた。

ソースや肉の油など様々な汚れのついた皿を一枚一枚に時間をかけずに、しかし、手に持ったスポンジと洗剤を用いてきれいにしていく。働くのは嫌いじゃない、余計なことを考えなくていいからだ。それに、誰かに必要とされている実感がわいてくるような気がする。

 気が付けば山盛りだった皿も残り数枚となっていた。

「優くん。それが終わったら今日は上がりでいいよ」

 店長だ。店長とは、俺が小さい頃から交流がある。うちの両親と仲が良く。俺たち兄妹が小さい頃から何かと目をかけてくれたのだ。家族を亡くした後も、こうして暮らせていけてるのも店長がいろいろと目をかけてくれたからだ。

「はい。ありがとうございます」

 最後の皿を洗い終わり乾燥機に入れると一息つく。、更衣室に戻ろうと廊下を歩く。

 途中、バイトの女の子が一人、大きなゴミ袋を二つ、店裏まで運ぼうとしているのが目に入る。

あの子は確か、ヒナちゃんだったかな。大学生って言ってたっけ。

「手伝うよ」

「え、いや悪いですよ。すぐそこですし」

「いいからいいから」

 そういって、彼女のゴミ袋を一つ奪い去ると店裏まで運ぶ。

 薄暗い店裏は日が落ちて、雲一つない夜空に、星が寒々しく輝いている。

「あの……、ありがとうございます」

「一人じゃ大変だし、いつも助けてもらってるからこれくらい、なんでもないさ」

裏口から店内に戻る。

店長が段ボールを抱えて運んでいるのが見える。明日の分の食材だろう。

途中で疲れたのか、箱を置いて腰を叩いている。ヒナちゃんのそばを離れ、小走りで駆け寄る。

「大丈夫です? 俺が運びますよ」

「あ、うん。お願いしようかな。腰が痛くってさ、もう年かもしれない」

「いつものところでいいんですよね。店長は休んでてください」


 あんなに小さかった子が立派に大きくなった。段ボールを抱えた優くんが食品庫に入る背中を見ていると、ヒナちゃんが話しかけてくる。

「優先輩って、ホント優しいですよね。店長は子供のころから先輩のこと知ってるんですよね。ね、どんな子供だったか教えてくださいよ」

「あの子は、昔から優しい子だったよ。自分も子供なのに迷子のお父さんとお母さんを探すのを手伝ったりね。

でもおじさん心配だな。最近の彼、なんか無理してる感じがあるんだよね。なんか、自分に優しくしてないっていうかさ。人だけじゃなくて、自分にも優しくしてあげないといつか壊れてしまうから」

————カランコロン

店内出入り口の鈴がなる。どうやら、ラストオーダーギリギリのタイミングでお客さんが来たらしい。まだ残っている閉店作業は後回しだ。

「いらっしゃいませ」

「おや、店じまいだったか。すまない。出直させてもらうよ」

「いえ、ラストオーダーまでまだお時間ありますので、ご注文受け賜りますよ」

「そうかい? ではお言葉に甘えようかな」

 注文を受け、キッチンに戻る。そこに、優くんとヒナちゃんが2人そろって待っていた。

「手伝いますよ」

「私も」

「二人とも助かるよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜も更けた22時30分を過ぎたころ、バイトは終了し、帰路についた。今日は遅くなってしまった。閉店間際に1人客女性客が来て、その客が帰るまで閉店作業ができなかったせいだ。

「にしても、あの人きれいだったよなぁ」肩にかかるほどの長さの栗色の髪の、何か含んだような表情をする、どこか怪しい雰囲気の女性だった。左手首に宝石が二つ付いた何やら仰々しい腕時計を付けていたのが印象的だった。いつもは常連しか来ないタイプの小さな飲食店である自分のバイト先には珍しい初めて見る客だった。


人気のない路地を家に向けて歩く。


 昼間は人の活気に溢れる暖かな町も、夜になるとシンと静まり返り、街灯と月明かりに照らされて普段とは違うどこか幻想的な冷たさを帯びている。


夜の町は嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。しかし、今日はもう夜も遅く、早いところ家に帰りたかった。


横に目をやる。裏路地。家への近道である。通りと異なり、街灯が無く、ビルに阻まれて月明かりにも届かない暗い道が続いている。10メートルも先になると、街灯の光が届かなくなるのか、こちら側からは先を見通すことができない。おどろおどろしい雰囲気に一瞬躊躇する。別に通ったことのない道ではない。何度も使ったことがあり、夜に通るのも初めてではない。その時は、何の問題もなかった。普段、日中であれば通ることのある見知った道であると、不気味な裏路地に意を決して足を踏み入れた。


狭い道にコツコツ自分の足音が響いている。それだけなら、普段通りの夜の路地裏だったのだが、今日はそれだけではなかった。

この先少し、進んだところに空き地がある。理由までは把握していないがビルに囲まれたデッドスペースは入口をフェンスで封じれられ簡単には入ることができないようになっている。そちらの方が騒がしいのだ。

喧嘩だろうか。だとしたらまずい、できれば巻き込まれたくはない。しかし、確認してみる必要がある。カツアゲやリンチなどなら警察に通報する必要がある。


狭い路地と比べると、広さがある分月明かりに照らされて幾分か明るい空き地に足音を抑えてフェンスに近づき、ばれないようにそっとのぞき込む。

絶句。そこにいたのは、不良などではなかった。不良ならどれだけよかっただろう。

怪人。

それも2体。襲われたらひとたまりもない。恐怖を感じ、壁に張り付き息を殺す。しかし、どうも様子がおかしかった。たった今、自分が居合わせたのは怪人が人を襲っている場面ではなく。

怪人同士が争っている場面だった。


怪人が仲間割れをする話など聞いたことが無い。もう一度確認してみよう。幸い奴らはこちらに築いている様子はない。早々に退散して通報するべきであるが、湧き出した好奇心に抗えず、もう一度覗いてみることにした。

やはり、怪人たちは戦っている。それに、怪人の姿も普通の怪人とは異なっている。

今まで見たことのある怪人は、足先方頭まで2メートルほど、ツタが筋肉の様に絡まりヒト型を取っており、体長と比べると小さい頭部と細く長い手足をした姿だ。

今、目の前にいる2体の怪人は大まかな特徴は他の怪人と同じだが、片方は背中から蜘蛛のような細い足が6本ついており、後頭部から蜘蛛の腹を思わせる突起がついている。

もう片方は、頭蓋骨を思わせる頭部に額から後頭部に向けて湾曲して伸びる一本角、眼窩から口まで涙模様が続いている。体躯は学校の理科室に飾ってある骨格標本を彷彿とされる細い鈍色の体に、黒いアーマーを付けたような姿だ。


蜘蛛怪人の手には剣が握られており、骸骨怪人を切り付けている。骸骨怪人は徒手で迎え撃っている。

実力は蜘蛛怪人の方が上回っているらしく骸骨怪人は身に着けた黒い鎧ごと切り裂かれ傷だらけになっている。

徐々に防戦一方になっていく骸骨怪人、剣で切られるたびに赤い血液が痛々しく飛び散り周囲を赤く染めていく。蜘蛛怪人が剣を袈裟切りに振りぬき、骸骨怪人の右肩から左胸にかけて切り付けた。

致命の一撃に体制を崩した骸骨怪人の腹部に剣を突き立てた。剣先が背中から飛び出しているのが確認できる。


刹那。轟音とともに骸骨怪人がフェンスを突き破り目の前にその体を転がした。

骸骨怪人の体を蹴り飛し、その勢いで剣を引き抜いたのだ。

一瞬、力なく倒れこむ骸骨怪人と目が合った。まだ、息があるらしく。肩を激しく上下させ苦しそうに呼吸しているのが見える。

怪人の体が白く変色していき、すぐに灰が崩れるように溶けていきながら、その体がみるみるうちに縮んでいく。

そこに現れたのは、先ほど自分のバイト先に現れたあの綺麗な女性だった。


『とうとう魔装を維持できなくなったか、もう終わりだ。おとなしく投降していればこんなことにはならなかったものを』

目の前で起きた衝撃的な出来事に驚きが隠せなかった。まさか、怪人の正体が人間など思っていなかった。

彼女は、体中から血液を流し、こちらに目を向けないまま掠れた声で話しかけてきた。

「―――――君、逃げたまえ……」

 足音が聞こえる。勝ちを確信した蜘蛛怪人がゆっくりと近づいてくるのがわかる。


 身近に迫る死の気配。緊張で鼓動が高まる。息を殺して壁に張り付く。呼吸が早まり、瞳の中で光が散った。

 走馬灯か、家族との思い出が脳裏に呼び起される。楽しい思い出、苦しい思い出。そして、目の前で怪人に殺された家族が思い出される。逃げろという両親を、助けてという妹を、助けられなかった。

 気が付いた時には、彼女を抱き上げて駆け出していた。



 走る、走る。つんのめるように夜道を走る。生暖かいぬるりとした血で手が滑る。微かに聞こえる浅い呼吸音と腹部から背中にかけて貫通した刺創から鼓動に合わせて流れ出す血液が彼女がまだ、かろうじて生きていることを伝えてくる。

――助けないといけない。

 そのことだけで頭がいっぱいになっていた。つい先ほどまで感じていた自分の命の危機など露ほども感じてなどいなかった。


呼吸は荒れ、心臓ははやりもう限界だと悲鳴を上げる。それでも足は止めなかった。怪人の身体能力は高い。開けた大通りに出れば一瞬で追いつかれてしまうだろう。俺は路地から路地へ迷路のように走り続けた。


「―――――どうして、逃げろといっただろう……」

「知るか。見捨てて逃げたら、夢見が悪いだろう」


 正直なところ彼自身助けた理由なんてなかった。ただ勝手に体が動いていたにすぎない。自分が助かることより、目の前の誰かを助けることが大切なことで当たり前のことだと感じていた。彼女は信じられない物を見るような目線を向ける。

「アレの目的は私だ。私を置いていけば、君だけなら、逃げ切れるさ。早いところ最寄りの警察にでも保護してもろうんだな」

 そういうと、力なく腕の中でもがき始めた。

「いやだね。今更見捨てない。誰かを犠牲にして俺一人―――」

 ―――助かったところでうれしくない。その言葉は続くことはなかった。

踏みしめた足が強い力で後ろに引かれた。いつの間にか足に巻き付いて糸が足を後ろに引き上げたのだ。

抱えていた彼女を放り投げて倒れこんでしまう。

『助からないよ。誰一人ね』

 引き離したつもりだった。

「クソッ」

背後、十メートル程にに迫りくる怪人相手に悪態をつく。もう逃げられそうになかった。悔しさに握りしめた掌にアスファルトの冷たさが刺さるように痛い。

「おい」

 力なく地に倒れ伏した彼女がこちらに手を伸ばしている。彼女の腹部を中心に血が広がっているのが見える。

「――一つだけ、私も君も助かる手がある。だが、覚悟はいいか。もう無関係ではいられなくなるぞ」

 その手には手首に巻いていた機械が弱々しく握られている。

 

「やってやるよ。もう、 」

 誰も目の前で死なせない。受け取った機械を左腕に巻き。後ろを向き直る。

【analyze】

 機械から音声が流れる。中から電子音が聞こえてくる。

【clear】

【pull the starter. pull the starter.】

 機械の一部が展開しリコイルスターターの持ち手のようなものが出てくる。

『手段を選ばないね。お前、悪いことは言わない。やめておきなさい』

【pull the starter.】

「いくぞ」リコイルスターターを勢いよく引いた。

【Mad Strangler】

【―――Titan】

機械についた宝石が強く輝く。腕の機械が展開した。内側から針のようなものが飛び出し体中に突き刺さった。

針はかなり深く刺さっているにも関わらず痛みも出血もしていなかった。

 体に変化が起きる。突き刺さった部分が熱く燃えるように感じる。針を中心にエネルギーが体に注がれていくのがわかる。

 体が作り変えられていく。痛みこそない。

肉が泡立ち内と外が入れ替わるような不快感。

内側を何かが這い回るような感触で新たに肉体が形成されていく。生きたまま体が作り換えられていくあまりの不快感に意識が遠のいていく。

「―――ああこれ、追加だ」

 背後から乾いた発砲音。背後で倒れていた彼女に撃たれたのだと気付くと同時に、意識は暗闇の中に落ちていった。

「大丈夫、少し相乗りさせてもらうだけさ」

そんな声が頭の中で響いた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 背後から撃ったことが、騙したようで少し申し訳なさを感じる。しかし、あのままでは私は死んでいた。肉体を一度捨て、彼の中に避難し生きながらえるのに必要であった。後で説明し、謝る必要があるだろう。まずは、この窮地を脱することが先決ではあるが。彼自身は肉体の変化に耐えられず意識を失ってしまったらしい。

私が体の主導権を握れるのだから好都合とも言えるだろう。

肉体が変形をおこす。筋肉が大きく膨れ上がり、それに合わせて身長も伸びていく。先ほどの骸骨怪人に変身を遂げる。しかし、先ほどまでとは異なる。

先ほどまで鈍色であった体は銀色にきらめき、黒一色であったアーマーには赤いラインが入っていた。

『博士。あなたも無茶をさせる。その男、適合できなければどうするつもりだったんです。まさか、無策だったわけではないでしょう。あなたらしくもない。

 しかし、そのコアとドライバーの出力では私には勝てない。先ほどの戦闘で分かっているでしょう? まして、何の訓練も受けていない人間にどうこうできる問題ではない。

 大人しく投降することを進めさせていただきます。』

『いやいや、投降? そんなことしないとも。それにしてもこの体、私と違ってかなりスペックが高いようだよ』

『———』

 先ほどまで対峙していた男の声ではなく私が答えたからであろう。驚愕した様子で一瞬、背後に転がる私の体を見た。

その隙を見逃せるほど簡単な相手ではない。大きく踏み込み、拳を振り上げる。

先ほどまでとは踏み込む速度も力も大きく上昇している。十メートルほどの距離を一歩で詰めることができた。この男、本当に私よりもコアと相性がいいらしい。

 大きく上昇した速度に対応できなかったのだろう。拳は容易く頭を打ち抜く。大きくよろめいた頭部を抱え込み飛び上がる。そのまま左膝を顔面に叩きつける。

 着地後、間髪入れずに顔面を抑える奴の喉元めがけて拳を叩きつけようとし、腕が止まる。顔の前で一瞬、拳が何かに振れたのがわかった。

糸である。触れた糸が瞬間的に展開し腕に絡みついてきた。

絡みついた蜘蛛糸が背後の壁と張り付いてそれ拳を止めたのだ。

『つ、効きますね……。本当に手段を選ばない。まさか、肉体を乗っ取ったのですか』

 絡みついた糸を逆の手で掴み引きちぎる。

『乗っ取ったわけじゃないさ。相乗りしてるだけだよ。一時的にね』

『どちらでも構いません。私は、貴女を連れ帰るだけです』

 その手に持つ剣が振るわれる。複雑な軌道を描いて襲い掛かってくる。

 身をねじり襲い来る剣を躱す。躱せないものは拳ではじき、腕のアーマーでいなす。

 先刻までアーマーごと体を切り裂いていた剣は、アーマーに傷をつけるに留まっている。それでも、アーマーのない部分では容易く切り裂かれるであろうし、大きな攻撃ではそのまま貫かれることになるだろう気を抜くことはできない。

 大振りの攻撃がくる。

大振りに振られた剣を正面で左腕のアーマーで受ける。アーマーごと切り裂かれないように剣撃を左に受け流した。ギリギリ受け流しには成功した。しかし、攻撃を受け止めたアーマーは切り裂かれ、傷は肉まで食い込んでおり血が流れている。そのまま手首をつかみ押さえつける。

『そのコアとドライバーでは何だったかな? 忘れてしまったよ。物忘れが最近激しくてねぇ』

 再び、奴の喉元めがけて拳を突き出す。

『その手は食いませんよ。同じ手に引っかかるとは、本当に物忘れが激しいと見える』

 蜘蛛糸が絡まり喉元手前で腕が拘束されている。

『いいや、これでいいんだよ』

 腕をひねりその掌を奴の顔面に向ける。

 刹那。掌から眩い光と共に閃光が放たれ爆発を起こした。爆発は周囲に黒煙を巻き起こし周囲を覆いつくす。

『しまった! 爆炎系の魔法か! 』

 眼前で閃光に一瞬目が眩む。黒煙が晴れ周囲が確認できるようになった時には、もう蜘蛛怪人のみがそこに立って居るだけであった。

『してやられましたね……』

悔しそうに独り言ちる。あれ程の大怪我であったというのに博士と呼ばれた彼女の血液の滴る後すら残っていない。

『仕方ありません。今日のところは帰投するとしましょう』


今日の葉の言葉

竜胆りんどう……勝利、正義感、あなたの悲しみに寄り添う


亀更新です。二話の途中まで書いた。投稿がいつになるかはわからない。

でも頑張って書く。

そもそも、自分がヒーローものが好きで、こんなヒーローもの読みたいから始まった趣味小説。

なんかもったいないから投稿することにしました。

というか、趣味で走りすぎて所々に好きな作品のオマージュを入れまくってる。気づきました?

怒られたら消そう。

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