表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋だった同級生が家族になってから、幼馴染がやけに甘えてくる  作者: 弥生志郎
2章 ②家族だから、これくらいいいよね?
46/74

第45話 日向の弱点/クイズ/私と、付き合ってくれない?

 ある日、ふと思った。

 そういえば、日向って苦手なものとかないのだろうか。


「私の、苦手なもの?」


 夕食時。俺の問いかけに、日向が小首を傾げた。


「そ。日向って何をしても優秀だし、俺らから見たら優等生そのものだしさ。何かウィークポイントとかないのかなって」


 実際、才色兼備って言葉は日向のために作られたのでは、なんて冗談半分に思ってしまう。

 才に関して言えば、勉学と運動共に学年上位という成績。

 色に関して言えば、向日葵の女神ってあだ名に名前負けしないほどの容姿。


 おまけに家事まで完璧で、性格まで誰にも愛されるくらい優しいときてる。天は二物を与えずなんていうが、一体日向には何物与えれば気が済むと――。


 ……いや、違うか。

 小さな頃に父親がいなかった日向は、自分に自信が持てなくて。だからこそ努力して今の日向があるんだ。日向が優等生なのは天から与えられたからじゃなく、自分で掴んだからだ。


「んー。私だって苦手なものくらい、もちろんあるよ?」

「そうなのか? それって一体……」

「じゃあ、悠人君に問題です。私の弱点はなんでしょう?」

「いきなりクイズが始まったな……。ちなみにそれ、正解すると何かあったりする?」

「デザートにプリンを買ってあるんだけど、私と一緒に食べれる権利を与えます」


 なるほど、それは是非とも頑張らねば。


「けど、なんだろうな。……雷、とか?」

「あんまり、かな。特別嫌いってわけじゃないから」

「じゃあ、辛い物、とか」

「あっ、それは全然平気。普段から料理するから、大抵の味は大丈夫なんだ」

「はー、なるほどなぁ」

 

 じゃあ、これはほとんど反則みたいなものだけど……。


「だったら、例の黒い流星、とかは? ほら、よくキッチン周りに出現するやつ」

「黒い流星……? あっ、なるほどね。うーん、どうだろ。もう何年も見かけてないから」

「えっ、そうなのか!?」

「いつも家の中は綺麗にしてるつもりだから、見かけた記憶はないかな。……? どうしたの、ツチノコでも見たような顔をして?」

「いや……日向がハイスペック過ぎて、言葉が出てこないっていうか……」

「そんなに驚くことかな……」


 待てよ。そういえば俺も最近、自分の家で例の黒い流線形を見かけてないけど、もしかして日向のおかげなのか?

 ということは、いつも半泣きになりながら撃退してた俺とあいつの仁義なき戦いにも、ついに終止符が――!?


 俺が思考してる間に日向は、ちっちっちっ、とカウントダウンを始めて、やがて、


「ぶー。残念でした、時間切れです。正解は――」


 そこで、日向は少しだけ顔を暗くした。


「ホラー映画、なの」

「へー、そうなのか。ちょっと意外だな。日向って遊園地の絶叫系とか楽しんでたし、ホラー映画とか平気そうな気がするけど」

「そ、そんなことないよ。ホラー映画は絶叫系みたいに全然楽しめないもん」


 ふるふると、日向は肩を抱いて小さく震える。


「薄暗い雰囲気とか、いきなり怖がらせてくる演出とかどうしても慣れなくて……。それに、ホラー映画って悲しい結末も多いでしょ? それも苦手なんだ」

「あー、確かにああいう系ってバッドエンド多いもんな」


 まさか、フィクションの人物の不幸にまで落ち込んでしまうなんて。優しいのか、それとも真面目なのか。多分どっちもだ。


「あんまり、みんなには言わないでね? 恥ずかしいから」

「そんな大げさな。ホラー映画が嫌いなんて珍しくもないのに」

「だって、怖がりなんてバレたら生徒会長の威厳がなくなっちゃうもん」

「そういうの気にしてたんだ……」


 むしろ、愛嬌があるのが日向の良いとこだと思うんだけど。


「悠人君だから話したんだからね。二人だけの内緒、だよ?」

「まあ、日向がそう言うなら。けど、日向の苦手なものとか聞いたことなかったけど、出来るだけ言わないようにしてたんだな」

「克服したいな、とは思ってるんだけどね。いつ友達とホラー映画見に行くかなんて分からないし、今のままなら絶対映画館で悲鳴上げちゃうから」


 そんなに無理なのか、ホラー映画。

 そこで、はっ、と。日向が何か思いついた表情を浮かべた。


「ね、ねえ、悠人君さえ良かったらなんだけど……私と、付き合ってくれない?」

「付き合うって……まさか」

「うん、ホラー映画。こういうのって、やっぱり慣れるのが一番の近道だと思うし……ほ、ほら、私たちってもう家族なんだし、映画くらい二人で見ても平気だよね?」


 やけにあたふたと手を振る日向。なんだ、そんなことか。


「全然いいぞ。俺はホラー苦手ってわけじゃないし」

「……ほ、ほんとに?」

「まあ、日向にはいつも家事でお世話になってるしな。これくらいの頼みは受け入れないとバチが当たりそうだ」

「やったっ、ありがと。親切な弟君がいて幸せだなぁ」


 日向の顔に浮かぶ、やけに上機嫌な笑顔。どう見てもこれからホラー映画見ますって顔じゃない気が。


 けど、日向と映画、か。

 楽しい時間になりそうだな、って素直に思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ