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初恋だった同級生が家族になってから、幼馴染がやけに甘えてくる  作者: 弥生志郎
2章 ①そうだ、デート行こう
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第42話 幼馴染じゃなくて/猫耳/いじらせパイセン

 槍原がきょとん、としたのは一瞬。

 やがて、


「え――――――――――――っ!? いやいやいや、急転直下過ぎますってその展開! さすがのウチでもそんなの読めませんよ、お二人共いつの間にそんな関係になったんですか!?」

「まあ、俺達にも色々あった、っていうか……」

「は~……。知りませんでした。まっさか、あの幼馴染の先輩たちが、ですかぁ……」


 槍原がしげしげと月乃を眺める。さすがの月乃も照れくさかったのか、視線から逃げるように膝の上の猫を撫でた。


「ただの親友同士かと思ったら、こんな関係になってるとは。このやりりんの目を以てしても見抜けませんでした。で、もうキスとかしました?」


 危うく、椅子から転げ落ちるとこだった。

 こいつ、いきなり剛速球のビーンボールを投げてくるな……。


「してないし仮にしてても言えるか。なんだよ、その一発目の質問は」

「だってだって気になりますもん! まさかパイセンと先輩が付き合うなんて、自称恋愛マイスターのウチとしては見過ごせないっていうか――」

「いや、それも違うんだよ。デートだって言ったけど、俺達まだ付き合ってるわけじゃないんだ」

「えっ……そうなんですか?」

「あのね、槍原さん。わたしが悠人に告白して、今はまだそれだけ。わたしも悠人も、お互いが納得するまでは恋人にならないって、二人で決めたんだ」


 月乃さん、告白したとかしてないとか、そういう話を真顔でされるととても照れるんですけど……。

 いやまあ、いいけどね。槍原は一番くらい仲の良い後輩だし。


「付き合ってない? 告白したのに? ……あー、なるほど。《《色々込み入った事情》》がありそうですね。特に、悠人パイセンは」


 多分、槍原はもう気づいてるんだろうな。

 俺と月乃が正式に交際していないのは、一人の少女――日向が深く関わってるってことに。


 何しろ、槍原は俺が日向に気があったってことに気づいてたし。日向と家族になって失恋した時も慰めてくれたし、その辺りの気遣いはかなり長けてる。


「そういうわけだからさ、槍原も俺と月乃が付き合ってるって誤解は周りに言いふらさないでくれよ」

「ん、リョーカイです。……って、あれ。ってことは、もしかしてウチって物凄くお二人の邪魔してるんじゃ……」

「ううん、大丈夫だよ? 悠人とはいつでも二人で出掛けられるから。このカフェで槍原さんと会えたのも嬉しいし、気にしないで?」

「つ、月乃先輩……。ありがとうございます、マジ天使です」


 まるで拝むように槍原は両手を合わせると、


「でも、二人のお邪魔をしちゃったのもなーんか申し訳ないですね。……あっ、そだ。ウチの店で流行ってる遊びあるんですけど、どうですか?」


 そう言うと、槍原はカウンターへと歩き出すと、すぐに戻って来た。

 その手にあるのは、猫耳のカチューシャだ。


「最近、猫耳で写真撮影出来るサービス始めたんですよ~。猫と一緒に映ると映えるんで超おすすめですよ? ほらほら、こんな感じです」


 槍原はスマホで一枚の写真を俺達に見せた。

 画面に映るのは、槍原とその友達らしき女子生徒たち。全員が猫耳を付けていて、テーブルに座る猫に顔を寄せていた。。アプリで加工してあるのか、女子たちの頬には猫のひげが付いている。


「……楽しそう。それに、良く似合ってる」

「えへへ、ありがとうございます。じゃあ、悠人パイセン。やってみましょっか?」

「どうして今の流れで俺になるかな。よく分からないけど、こういうの普通男子はやらないだろ」

「だからこそあえてやるんじゃないですか。こんな機会、滅多にありませんし」


 見れば、月乃は何か期待するような眼差しで、じーっとこちらを見ている。

 ……マジか。やるしかないのか……。


「別にいいけどさ……絶対笑うなよ」

「笑うはずないじゃないですか! ウチはパイセンのこと、生徒会で一番リスペクトしてるんですから!」


 こくこく、と月乃まで頷いている。仕方ないな……。

 俯きながら、猫耳のカチューシャを頭に装着。


 顔を上げた。

 爆笑する槍原が、そこにいた。


「ぶははははっ。パイセン、最高です。超似合ってますよ」


 こいつ、五秒前に自分が何言ったのか覚えてないのかな。

 その槍原の隣で、月乃はいつもと同じクールな表情で俺を見つめていた。見事なくらいノーリアクション。月の天使、恐るべし。


「おい後輩、先輩のことを辱めてそんなに楽しいか?」

「くく……っ。いや、付き合ってくれてありがとうございます。パイセンのそういうノリがいいとこ、好きですよ?」


 言いながら、スマホで俺を撮影する槍原。もう好きにしてくれ。


「ねえ、悠人。わたしも一枚、良い?」

「そうか、月乃まで俺の恥を記録に残したいんだな」

「そうじゃないよ? 悠人の猫耳、似合ってるから。とても可愛いよ?」


 本当かよ――とも思ったけど、月乃が言うなら本心なんだろうな、きっと。


「はー、良い物見れた。じゃあ、今度は月乃先輩お願いします」

「え――わたしも、やるの?」

「だって、せっかく『ねここねこ』に来てくれたんですもん。見てみたいなー、猫耳の月乃先輩」

「……でも、カフェでするのはちょっと恥ずかしい、かも」

「あう、そうですか……。残念だなぁ、月乃先輩可愛いのに。ねっ、パイセン?」

「ん……確かに、月乃なら似合うかもな」


 それは、見てみたい。とても見てみたい。だって猫好きな月乃なのだ、絶対に似合わないはずがない。


 けど、月乃って友達でわいわいみたいなノリは得意じゃないし、嫌なら無理にさせたくない――そう、考えてたのだけど。


 俺の一言に、月乃は真剣な表情を浮かべていた。


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むかし、Neko mimi modeって曲あったよね

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