First mission
前話から1ヶ月が経過しています。
カレン、ルキウス、そしてレオンハルトとの出会いから1ヶ月が経った。
最近は毎日のルーティンが決まってきた。
朝はルキウスとの行軍将棋、チャッピーを交えた策略についての話し合いをする。チャッピーとはここで分かれ、ルキウスと昼食を食べる。昼以降は訓練場に行き、カレンとのタイマンをする。
これが1日の流れだ。
2人との勝負は勝利数ではまだヨシヒロが上回っているものの、大分その差が縮まってきた。ヨシヒロ以上のスピードで彼らは成長をしていた。
今日はいつもとは違う。朝からレオンハルトに呼び出された。彼の執務室に入ると既にカレンとルキウスがいた。
「うん。皆、揃ったね。わざわざ悪いね、集まってもらって。」
「そうよ。あたし達今日も修練の予定があるんだけど。」
「カレン・・・、レオンハルトさんへの口調なんとかならないの?」
「あたしはもう王族として生きていく気はないからいいのよ。細かい事は。」
「それで、レオンハルト。俺たち3人を呼び出した理由は?」
レオンハルトは自身の机の引き出しを開け3枚の紙を取り出した。その紙を配る。
「このレポートを見てくれ、チャッピーから報告された物なんだけど、最近我が領の北東で人攫いが増えている。」
「人攫い?この平和な公領で?」
「確かに。公領は王国内でも有数の平和で安全な土地だ。数度ならまだしも人攫いが増えているなんて考えられないですね。」
「そうなんだよ。この件の実地調査を3人に任せたい。」
「ちょっと待ってくれ。深刻な問題なのは分かるが、俺は貴方の部下ではない筈だ。自身の部下に任せたらいいんじゃないのか。」
「ヨシヒロ君の言っていることは正しい。でも、少し複雑な問題でね。我が領の北東は旧王弟領にも、王派の領土にも接しているんだ。因みに商業国との距離も近い。この手の領民の問題を煽り、難癖をつけて大きな問題にして僕の力を削ぎ落とそうという謀略の可能性がある・・・。」
「それで、身分的にはまだ客人である私とカレン、部下ではないヨシヒロに調査を依頼して、面倒事を避けたいという事ですね。」
「そうだ。形式上は僕の部下じゃない人間が起こした事だと言い張れば何とでもなるし。君達は王子、王女だしね。本音を言えば、都合がいい。引き受けてくれるかい?」
「私は日頃お世話になり過ぎているので勿論ですが・・・、カレンとヨシヒロはどうだい?」
「アタシは全然OK。修練ばかりで飽きてきてたのよ。実戦ができるなら願ったりよ。」
「カレン・・・、一応調査するだけだから、戦うとは決まった訳じゃないからね?ヨシヒロはどう?」
「まぁ、1ヶ月間世話になったし、2人がいなくなるなら修練の相手がいなくなってしまう。これぐらいなら引き受けるよ。」
「うん。助かるよ。詳しい情報はチャッピーに聞いてね。では、初任務行ってらっしゃい!」
3人は執務室を出て、下の階の戦略会議室でチャッピーから指示を受けた後、北東へ向けて出発した。
◇ ◇ ◇ ◇
ヨシヒロ、カレン、ルキウスの3人は近頃頻発している人攫いを調査するべく、公領の北東部へ向けて馬車で移動していた。馬車の中では3人が今回の任務について情報を纏めていた。
「北東部では人攫いはここ数ヶ月間発生していたらしいけど、この1ヶ月間は特に多く頻発しているみたいだ。」
「犯人の目星はついているの??あたしの人攫いイメージは山賊とか奴隷商人とかなんだけど。」
「勿論、その可能性も高い。けど、わざわざレオンハルトの領地でやるメリットがないんだ。此処は王国内で1番警備が厳しいし兵も強い、もし私が山賊のボスや奴隷商人なら絶対に避けると思うんだ。」
「確かに、クソ親父の領地とかの方が荒れてるし人を攫いやすそうだよね。」
「俺の住んでいた王弟領もそうだった。スラムが存在していたぐらいだしな。」
「そう。レオンハルトさんも言っていたけど、これが謀略だとすれば、視野を広げる必要がある。大きな勢力の犯行の可能性だって高い。」
「なるほど。1ヶ月前から頻発したという事はこの前の戦争が原因か?あの戦は多くの人が死んだし、捕虜も多い。王弟領は民が相当数減った筈だ。」
「客観的に見たら、1番王弟派が怪しいのは確かだ。でも、希望的観測だけど王弟派では無いと思いたい。王弟領・王弟派閥を引き継いだのはカンドーの息子・・・私より少し年上で気のいいお兄さん気質のいい人だよ。最近は会ってないけどね。」
「確かに、あたしもあの人は好きだったわ。」
「うーん、今の情報だけじゃ確信までは辿り着かないな。」
「その為の実地調査だしね。まずは人攫いが最も多い村に潜伏して奴等の手がかりを探す。気合を入れていこう!」
「「おう!」」
スリーマンセルの任務、次回から本格始動。




