生存者
遂に一章完結。ここまで拝読いただいた方ありがとうございます。
前回気づいた方もいると思いますが、島津義弘の人格を失ったことにより、一人称が変化しています。
ヨシヒロとレオンハルトが向かい合う。
「君の戦いはここまでだよ。」
「誰だ!?」
相対する男が只者ではないことはすぐに判断できた。おそらくこの世界で出会った誰よりも強い。しかし、規格外の力を手に入れたヨシヒロ。行手を阻むならば倒すのみ!
足に力を入れ、瞬間移動かと感じるほど速いスピードでレオンハルトへと近づき斬りかかる。
………、避けられた!?
うっ……、首に痛みを感じる。
ヨシヒロは気を失った。
レオンハルトはヨシヒロの剣を右に避け、真左を通過する首へ手刀を叩き込み気絶させたのだった。
「あ、ロイド。遅かったねぇ〜。ヨシヒロ君を担いできてくれる?」
「あんたが速すぎるんだよ。ヨシヒロを・・・どうするつもりだ?」
「僕が面倒みようかなと思って。よしっ、軍に合流しようか。」
レオンハルトとヨシヒロを担ぐロイドは藍色の軍隊へ合流した。
◇ ◇ ◇ ◇
レオンハルト軍はもぬけの殻となったスチュートへ入城し、軍師チャル・ピートルの指揮下で戦後処理を始めた。特に戦死者、捕虜数、生存者の確認を最優先に。
「チャッピー!お疲れ〜。色々と情報は集まった?」
チャッピーとはチャル・ピートルのあだ名だ。レオンハルトが名付け最初は抵抗したが、軍に浸透してしまったので諦めた。
「レオンハルト様。大まかには把握できたのでそろそろ伺おうかと思っていました。」
「こいつ何もしないくせに、フラフラとどっか行っちまうからな。ここに連れてきたんだ。」
「ありがとう、ロイド殿。それは賢明な判断だ。」
レオンハルトはチャッピーが敬語な事にもロイドがタメ口な事にも無関心。自分を何と呼ぼうが勝手だと宣言しているので、軍は一兵卒でも気軽に話しかけてくる人もいれば、チャッピーの様に敬語を崩さない人もいる。
「それでは戦後集めた今回の戦の情報をお伝えします。」
「よろしく〜。」
レオンハルトは足を組んで椅子に座り、ロイドは姿勢を正してチャッピーの報告に耳を傾ける。
「今回の侵攻・・・、ベロ商業国の同盟破棄宣言からの急襲によって始まりました。高原国に出兵中のレオンハルト様の軍にも襲いかかった筈です。傭兵団を率いて来たのは団長のドレークと副団長のペル、その数3万。対するスチュートの守兵は合計で5000強、非戦闘員を含めれば1万人程です。そして、王弟カンドーの腹心スネイクの裏切りにより早期決着を迎えます。この時カンドーは死亡しました。」
「カンドーさん死んだのか。気持ち的には精々するけど、情勢的には厳しいねぇ・・・。」
「その後、レオンハルト様は軍を抜け出して直接目にしていたので報告は不要だと思います・・・・ヨシヒロ殿が暴れ軍を引き止めていたお陰で私たちはギリギリ間に合いました。」
「僕が速く帰ってきたお陰かな。」
「そういえば、なんでこんなに速く戻ってこれたんだ?」
「ベロ商業国が裏切った瞬間に、此処狙いだろうと勘づいたから、軍を置いて1人で帰ってきた。それで、既に向かってたチャッピーとこの軍でここまで来たって訳。僕の馬、凄い速いし。」
「軍を置いて!?」
「僕の部下達は強いから大丈夫だと思ってね。高原国と商業国の軍を引きつけながらゆっくり国境まで後退する様に伝えてある。多分、今頃はもう終わってるんじゃないかな?」
「私が国内の情勢の不安定さを理由に、全軍ではなく私の軍だけ国内に残すべきと提案したのが功を奏しました。たった1人で敵地の中を戻ってきたのは流石の私でも呆れましたが、そのお陰でスチュートを占領されなかったので良しとしましょう。」
「レオンハルトも流石だが、軍師ちゃんも流石だな。」
「それで・・・、生き残りはいたかい?」
「優先して調べていた、死者・捕虜数・生存者の情報が先程纏まりました。まず、敵は死者8000、捕虜は1人も手に入れれなかったので単純計算で生存者は2万2000人。死者の半分以上の5000は南の砦周辺で見つかりました。」
「ひゃー、ヨシヒロ君すごいねぇ。」
「そして・・・・・」
チャッピーが苦悶の表情を浮かべた事から内容は察する事ができる。
「スチュートには非戦闘員含めると1万人いました。この戦によって5000人の命が失われ、残りの5000人は全て捕虜として囚われました。
生存者は1
レオンハルト様が連れ帰ったヨシヒロ殿ただ1人です。」
「ふぅ〜、予想はしてたけど厳しいねぇ。敵も中々の事をしてくれる。国土は減らなかったけど、これは僕たちの敗北だね。」
「やり返してやらねぇとな!レオンハルト!誰に喧嘩を売ったか分からせてやろうぜ!」
ロイドの意気込みをレオンハルトは首を振って否定する。
「商業国よりも先に倒すべきモノがいる。商業国は後回しだ。僕の部下達も立派に育ってきた。この国の闇と決着をつける時がきた。」
藍色の目には決意が漲っていた。
◇ ◇ ◇ ◇
長い長い階段を天使ベルゼブブは降っていた。
天から眼下の闇の先へまで続く階段をゆっくりと。
鼻歌まじりに陽気に降る。
「さぁ、ここからが本番だよ。ヨシヒロさん・・・・頑張って!」
この物語のプロローグ的部分が終わりました。次章からは仲間が次々に死んでいく事が無いのでご安心を。
また、島津義弘の人格を失ったといっても、この物語から消える事はないです。
戦国最強島津義弘が2度目の人生で異世界最強になる物語ですから。
間章を挟み、次章が始まります。次はヨシヒロとレオンハルト、そしてもう1人が中心となるお話です。
ここまで拝読いただいた方本当にありがとうございます。次章も是非ご覧ください。