表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/32

堕ちる武者 其の四

拝読ありがとうございます。十数話でひと段落つく予定なので是非一話からご覧下さい

 「地獄へようこそ」


ヨシヒロは無尽蔵に感じる程次々に突入される兵を無心に薙ぎ倒し続けた。数人斬り逃した敵兵も後ろに控えるローゼと元南スラムの兵が殲滅する。緩急をつけながら、上方からの弓矢の掃射も行う。しかし、少しずつ押し込まれており、現在は砦の中間地点で交戦している。


「ローゼ!!交代だ!15分くらい頼む!」


ヨシヒロとローゼは役割を交代し、ローゼの大剣で敵を吹き飛ばし始める。

ヨシヒロは給水等を一通り行った後、報告を受ける。


「現在、戦闘開始から3時間が経ちました。ドナルド殿とケイン殿が上手く立ち回り、未だ渡河を許していません。ルベンとリケも活躍している様です。」


「そうか。ここの戦場はまだ数時間は大丈夫そうかな…、街に派遣したパウから何か報告は?」


「今のところ何も起きていないとの事です。北の門でも戦闘が行われていますが、両者共に激しくない事から、まだ調べ続けるとの事です。」


「引き続き頼む。」



◇ ◇ ◇ ◇




報告を受け終えたヨシヒロは交戦地へと戻る。

15分前と比べ大幅に押し込まれていた。何事かと思い、ローゼを探すが見当たらない。彼女の部下を見つけたので尋ねる。


「ローゼは??」


「あ!ヨシヒロさん!ローゼの姉貴は強敵と一騎打ちをしています!姉貴が1人に手間取っている事で他の兵が素通りし、押し込まれている状況です!」


20メートル先にローゼが敵将と思わしき人物と一騎討ちをしているのを確認。一騎打ちの場所から現在ヨシヒロがいる地点までは敵兵で溢れている。一騎打ちに勝っても負けてもあの周りに敵しかいないあの場所は危険だ。


「なるほど、ローゼはあそこだな!すぐに助けに向かう。お前らは戦線の維持に努めろ!」


ヨシヒロは敵を素早く斬り伏せながら、ローゼの援助に向かう。


ローゼと一騎討ちをしている男が見えてきた。他の敵兵とは比べ物にならない程豪華な武具を揃えた矛を持った男だ。ローゼは苦戦していた……、矛の男の攻撃を受けるのに必死だ。ヨシヒロが後もう少しで援護できる……………その直前でローゼは限界を迎え矛の男に肩から()()()()にされる…。


目の前で崩れ落ちるローゼの亡骸を支えながら、ヨシヒロは呆然と座り込む。



「ふぅ、そこそこ強いかと思ったが、期待外れだな。もっと強えぇヤツはいねぇのか???」


矛の男は眼下で睨みつけるヨシヒロを見つける。


「なんだ、お前は?」


そう言いながら、矛を振り下ろす。ヨシヒロは片手で持った鉄剣でそれを受け止める。


「おいは、ヨシヒロ。この南の砦を守りを任されたスラムの|支配者(ボス)だ。」


「俺の矛を楽々受け止めるとは…、スラムのボスとやら……、楽しませてくれそうだぜ。俺の名前はドレーク。この傭兵団を束ねる傭兵団長だ。」


一軍の将がこんな最前線に?……だが、都合がいい。こいつさえ倒せば軍の攻勢が著しく低下させることができる。


ローゼの仇だ……、絶対に殺す。


「南の砦が全然攻略できねぇもんだから、待ちきれなくてここまで来たが、お前のような強者に出会えるとはツイてるぜ。手合わせ願おうか!」


ドレークが矛を横に薙ぐ。ヨシヒロは上に飛び、薙いでいる矛を踏み台にさらに上へと跳躍し、ドレークの背後に着地する。矛の弱点は大振りになる事と、背後の対処が難しい事、それを心得ていたドレークはすぐに後ろへ体を向ける………だが、()()()()()()()()()()()()


どこいった?俺の背後へ飛んだだろ?


…………うっ!?!?刺された感覚が襲う。背後へと目を向けるとヨシヒロがドレークの腹を突き刺していた。ドレークは距離を取り、突き刺された剣を抜く。


ヨシヒロは跳躍し背後を取った後、ドレークが後ろを警戒するのを読み、自身が視界に入る前に再度後ろに回って元の場所に戻ってきていたのだ。矛を使う相手とは何度も戦国の世で戦ったヨシヒロだからこそできる動きだった。


「くっそ………、なかなかやるじゃねぇか。もう油断はしない。ぶち殺してやる。」


「おいに勝つには、()()8()0()()は精進してきな!」


ヨシヒロの剣とドレークの矛が激しくぶつかり合う。あまりの激しさに敵味方関係なく一騎討ちを結末を目に焼き付けようと2人の戦いに釘付けになる。

3時間戦い続けたヨシヒロと、腹を貫かれたドレークお互い満身創痍だが2人の戦いは衰えるどころか激しさを増していく。ヨシヒロがドレークを吹き飛ばせば、ドレークと負けじとヨシヒロを吹き飛ばす。初手で成功した様な奇策はもう通用しない。ここからは純粋な力と力のぶつけ合いだ。


………………………。


30分は戦い続けただろうか、時間と共にヨシヒロの一撃に耐えきれなくなったドレークの()()()()した。柄の部分で必死に攻撃を受けるが、もう時間の問題だ。ドレークの武器(といっても既に柄の部分しかないが。)を狙い武器を叩き落とす。ヨシヒロは最後の一撃でドレークを仕留めにかかる。


勝った!………と思ったその瞬間だった。鋭い弓矢がヨシヒロのギリギリを掠める。畜生め、ドレークを仕留め損なった。


「ドレークの馬鹿!なんで死ぬギリギリまで戦ってんだ!お前は一軍の将だろう!引き際ぐらい自分で判断しろ!」


「悪い、ペル!こんなに強い奴がここにいると思わなくてな!」


ペルと呼ばれた弓矢を構えた女はドレークを怒鳴り叱る。ドレークへの発言や周りの反応からして、地位の低い者ではないだろう。


「お前ら、ドレークの回収を頼む!暴れても無理矢理連れてこい!私は後ろに戻る。」


「「「了解です!副団長!!」」」


副団長!?

しかも、ドレークの雰囲気からして実際の軍略を握っているのは彼ではなく目の前の副団長かもしれない。ヨシヒロは足元に落ちている槍をペルに向けて投げつける。その軌道のままいけば直撃したであろう槍はドレークにキャッチされてしまった。


「じゃあな、ヨシヒロ!楽しかったぜ!こっちの()()()()()()らしいんで、一度引かせてもらうよ。また戦おうぜ!」


「いらん事を言わんでいい!!」

ドレークはペルに殴られた。



彼ら2人が立ち去った後も商業国傭兵団の攻撃は続いた。ヨシヒロ達も何とか防いでいたが、ローゼが死んだのが痛い。長時間の戦闘、そしてドレークとの一対一、ヨシヒロの限界は近づいていた。



◇ ◇ ◇ ◇



物語は少し前に遡る。

領主カンドー・アルフレッドの側近スネイクがヨシヒロ達との交渉を終え、城への帰路を歩いているときに遡る。



ヨシヒロ達の真意が読めず困惑していたスネイクに1人の見知らぬ男が話しかける。


「スネイク殿ですか?」


「どなた……です??」


「貴方におって利益になる話を持ってまいりました。この手紙をご覧下さい。」


「こ、これは!?」


「ベロ商業国傭兵団副団長ペル様からのお手紙です。内容をお伝えしますと………、此度の戦で主君を裏切り、北の門を開けていただければ、商業国で貴族としてお迎えするというものです。」


「商業国の貴族?」


「はい。商業国は名前の通り商業の国、貴族となればその俸給も莫大なものとなります。」


「……………。」


「今すぐに決断を、という訳ではありません。我らと王国が戦闘を開始した日の夜迄に返答頂ければ、この条件で我らの国へお迎えいたします。それでは、良き返答を。」


すぐにカンドーへ報告する……、それが家臣として1番正しい行動である。しかし、スネイクはできなかった。そもそもカンドーの事を尊敬していない。国内での王弟派の立場も日に日に悪くなっている。この国にいてもスネイクの未来は暗い。そんな様々な事情が頭を巡り、スチュート防衛戦が始まった1日目で北の砦が陥落したとの報を受け、裏切り承諾の旨を商業国へと送った。


そして今、彼は北の門の開閉施設がある部屋にいる。


外では仲間が敵から街を守るため必死に戦っている。そんな中、自分だけ助かろうとしている、逃げようとしている。そんな雑念を声を出して掻き消す。


「私にはもう裏切るしかないんだ!!」


叫びながらスネイクは北の砦を開門した。


傭兵団長 ドレーク

此度のスチュート攻めの傭兵団3万を率いる将。戦闘集団である傭兵団を纏めるにふさわしい武力一辺倒の男。実際の指揮や軍略は副団長のペルに任せっきり。


傭兵副団長  ペル

ドレークを影から支える軍略に長けた女。弓矢も扱える。いつもドレークの勝手な行動に悩まされている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ