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堕ちる武者 其の三

拝読ありがとうございます。十数話でひと段落つく予定なので是非一話からご覧下さい!


ロイドはヨシヒロに秘密を打ち明ける。

「ロイドの秘密??」


「あぁ。お前になら打ち明けてもいいと判断した。実は俺は()()なんだ。レオンハルトと親交を深め、転封の際、新領主のカンドー・アルフレッドを探るように依頼されている。ヨシヒロと会ってからは、ヨシヒロのことも報告している。悪い事は報告してねぇよ?面白い奴がいる、是非会ってほしいって送っといた。まぁ、簡単にいえば俺はレオンハルトと太いパイプがあるって事だ。そこで今からレオンハルトの所に行ってスチュートの現状を伝え援軍を請おうと思う。だから、ここから離れる許可をくれねぇか?」


「レオンハルト公の間者か……驚いたな。でも、レオンハルト本人は高原国で戦争中だろ?商業国に裏切られて苦戦してると聞く。間に合うのか?」


「ギリギリだな。レオンハルトの行動次第だ。そのまま高原国と戦闘を続けていれば恐らく間に合わないが、すぐに退却していれば5日後にはここに間に合う。……、商業国傭兵団がここに着くのが恐らく2日後……、()()耐えられれば間に合うはずだ。」


「今回の侵攻は、カンドー達の守備に不安を抱えている。お前が行く事で,援軍が来るのが1日でも早まれば、非常に助かる。ロイド、ここを離れる事を許す。」


「はっ。じゃあ早速行ってくるぜ。」


ロイドを見送ったヨシヒロ達は2日後に迫る戦闘の日に向け準備を始める。



◇ ◇ ◇ ◇



2日後、ベロ商業国の傭兵団3万がスチュートに到着した。北の砦に対して1万を配置し、残り2万は北門に対して配置した。対するカンドーは北門の守備に4000人、北の砦に700人を配置した。事前に決めていた通り南の砦にはヨシヒロ達2000人が配置されたが、この内1500人は非戦闘のスラムの人間の為、実質は500人である。


カンドー達の兵は戦闘に慣れていない。対する傭兵団は戦争を生業とする者達である。力量は必然である。しかし、レオンハルト公が作ったスチュートは精強な防御施設である。街自体の強さで北門での戦闘はなんとか均衡を保っている。しかし、北の砦は激戦地となっていた。そもそも700人対1万人、力量がどうこうの話ですらない。北の砦は橋型の砦であり、対岸に渡るには細い砦内を通るか、危険を承知で川を渡り反対側から挟み込む必要がある。なんとか陥落していないのも砦内では数人ずつしか戦闘できないという設計の成せる技だ。しかし、圧倒的人数差がその均衡を破っていく…。1日目のの夕方頃、北の砦は陥落した。傭兵団は夜に南の砦を攻めるのは危険と判断したのか、進軍を止めた。こうして1日目は終了した。


◇ ◇ ◇ ◇


南の砦ではヨシヒロが軍議を行っていた。そのメンバーはパウ、ルベン、リケのいつもの3人と先程この地を離れたルベンを除く、()()()()()()()()()…ローゼ、ケイン、ドナルドの3人だ。


「北の砦は1日で陥落した。同じ設計の此処(南の砦)も同様の守りでは1日で落ちる。しっかりと軍略を錬る必要があるな。」


「ヨシヒロの命令通りに川岸に木の柵を建てたぞ?それだけじゃダメなのか??」

ルベンは初めての大規模合戦にワクワクしながら尋ねる。


「あれは最低限だ。あれがあれば非戦闘員も柵の後ろから安全に弓を射ることができる。人数差を少しでも埋める為の策だ。」


「それで…、パウ。どのように北の砦が陥落したか分かったか??」


「はい。簡単に言えば、兵力差による力攻めです。川越えは優勢が決するまで極力避けていた様です。すぐに砦の門を破り、砦内の細い一本道での少人数戦を絶え間なく兵を投入していった……という情報が集まりました。」


敵の司令官も最低限の軍略を持ち合わせている様だな。川越えは予想外の事態が起きやすいし、危険性も高い…、できる限り砦を攻め落とそうとする筈だ。となれば、砦を守る事に戦力を集中するべきだ。


「おいは砦で向かってくる敵兵を斬り続ける。元北・東・南のスラムの配下達も同じ場所でおいの支援を頼む。砦内は狭い一本道かつ吹き抜けだ……上からの弓矢での支援やおいが斬り逃した敵の掃討を頼む。」


「基本的にヨシヒロが1人で相手するってことか?」


「そうだ。この戦いは戦力差が大きすぎる。1人の兵の損失を避けたい。だが、先程この地を離れたロイドを除く残りの3人の元スラムの支配者…ローゼ、ケイン、ドナルドには、状況に応じてこの役割を変わってもらう。…、休憩とか他の場所への対応をする時にな。そして、パウ・ルベン・リケの3人と元西のスラムの配下達は川沿いに広がり、川越えの監視と弓矢を射るのを依頼した非戦闘員達の支援を頼む。」


「「「了解!!!」」」


「この戦いは南の砦を守りきれるか否かで勝敗は変わる!おい達は500人、敵は1万人、絶望的な兵力差だが、おい達は強い………、何としても()()()()守りきる。そうすれば、ロイドが援軍を引き連れ帰ってくる。それまで戦い抜くぞ!!」



◇ ◇ ◇ ◇


夜が明け、太陽が昇る。夜のうちに敵軍は布陣を完了させていた。その様子を南の砦からヨシヒロとパウは眺める。


「パウ……、本当にこいつら1万人か?肌感覚ではもう少し多いぞ?……、2()()はいるんじゃないか?」


「昨日の調査では確かに1万で北の砦を攻めていました。街の北の門を攻めていた2万の兵から援軍を送ったとしか考えられません。」


「北の門は残りの1万では何年戦っても陥せない。それを承知で此方に2万を送って来たという事は、レオンハルト公の援軍の気配を感じて攻め急いでいるか………、北の門を実質的に攻略したかだな。レオンハルトへの援軍申請はおいが独自に行ったものだ。敵に漏れる筈はない。つまり、後者だ。」


「北の門が実質的に攻略された??」


「そうだ。例えば、調略が成功したとかな……、本当にそうなら戦略を大幅に変える必要がある。パウ、お前は街に戻り情報を集めろ。」


「了解です。」


パウは去っていったのと同時に、元スラムの支配者…ローゼ、ケイン、ドナルドがやってきた。


「予想外の事態…という感じですわね?」

大剣を構えた大女、ローゼが尋ねる。


「あぁ、街の方で何かあったかもしれない。多分、裏切り行為かな。」


「あの街なら十分ありえる事ですな…。昨日決めた作戦通りとはいかんでしょう…」

手刀名人の異名を持つ老人、ケインが苦笑いする。


「ヨシヒロに負けてから、大変な事ばっかりだなぁ。僕はスラムのお山の大将で充分満足してたのに…、まぁ、今も中々に楽しいからいいけどねぇ。」

双剣を携える160センチの小男、ドナルドがはしゃぐ。


「ケインの言う通り、作戦の変更が必要だ。眼下に見える布陣は想像以上に川越えに兵力を割いている様に見える。ドナルドとケインは自らの兵を率いて川沿いへ移動してくれ、ドナルドは砦の北側の川岸を、ケインは南側の川岸を頼む。砦に残るのはおいとローゼ、元北と南のスラムの配下達だ。ローゼは砦のの支援をしながら、自らの南の配下達を使い遊軍として各地を支援をしてくれ」


「その配置だと、ヨシヒロの負担が大きすぎるだろ。本当に大丈夫か??」


「あぁ、大丈夫さ。危なかった助太刀を頼むよ。ローゼ。」


「勿論さ、臨機応変に頑張るよ…!」


「ありがとう。では、皆配置につけ、今日の夜は共に語ろう!」


3人はそれぞれ配置につき準備を始める。



ヨシヒロは眼下の兵達を見ながら覚悟を決め、階段を降り、交戦予定地である砦内の一本道に到着した。そこには、川沿いにいるはずのリケがいた。


「あれ?リケ。お前は川沿いの非戦闘員の支援だろ?」


「ごめんなさい。戦いの前に何故だがヨシヒロの顔を見たくなって……」


「そうなのか、どう?おいの顔見て気持ちは落ち着いた?」


「うん……、あのね…ヨシヒロ……。」


普段ではあり得ない程、歯切れの悪いリケをヨシヒロは疑問に思う。


「どうした??」


「……、この戦が終わったら話があるの!だから、死んだらダメだよ??」


「大丈夫!おいはそう簡単には死なん!」


リケは頬を赤めながら去っていく。



◇ ◇ ◇ ◇



「来た………な。」


砦内に大きな音が響く。砦の門を叩く大きな音だ。恐らく破城槌の様な物で門を破ろうとしているのだろう。

すぐに門は壊れるのは想定内だ。それ程強くない作りの為、最初から諦めている。

門が壊れるのと同時に敵兵がなだれ込む。砦は狭い一本道、武器を持った兵士では横並びで5人が限界だ。敵兵が守兵の先頭にいるヨシヒロに向け歩みを進める。


相対するヨシヒロは敵兵に向け走り出す。


「なんだ?こいつ?気でも触れたか??」


ヨシヒロは手に持った鉄剣を大きく振りかぶり一列目の兵士にぶつける。この一撃は10人を吹き飛ばした。圧倒的な武力を見せつけられた敵兵は怯む。その時、上の階に伏せた弓兵が一斉に掃射する。


「ようこそ……、地獄へ!」


バタバタと倒れる敵兵を見ながらヨシヒロは笑っていた。


合戦開始!

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