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サンソンくん  river 編  作者: ハクノチチ
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白い影の女

 ー白い影の女ー


 二人が藁葺き屋根の東屋の裏口からなかへ入ると「係り」と同じ服装の白い影の女がこちらに背を向けて丸椅子に座り、どうやら受付をしているようでした。窓口の向こうにはまだ薄ぼやけた顔を持っている少しだけ色の濃い白い行列たちがいて、それぞれ手に持っている名刺サイズの木札をその白い影の女に渡していました。白い影の女は朱印を使い、渡された木札に持ち主の薄ぼやける顔をしっかり押してから持ち主に返し、舟で渡り終わったら向こう岸にいる係りに渡してください、と黒いローヒールを履いた足を組みながら言い続けていました・・・・・・。

 「ごくろうさま。電話を借りるよ」白い影の「係り」は後ろから声を掛けました。

 「おやおや、まさかこっちでも何かあったのかい?あんたが担当する舟が沈んじまったのかい?」受付の女が顔のない顔を振りむくと「係り」の足元にいる赤い存在に絶句しました。

 「こんにちは」小さな彼は微笑みました。

 「全くなんて日だい。重なるときは重なるもんだね」

 白い影の「係り」は後ろの壁に掛かる白い竹筒を手に取ると、筒の下から垂れている五色の糸の一本を引きました。それは赤色でした。

 「俺のところのハケンが中州で拾って来たんだ」

 「あんた一体何者だい?」受付の女は窓口に向き直り朱印を押しながら背中越しに聞きました。

 「ぼくは太陽の妖精サンソンだよ。船頭さんはプラネッツって呼んでたけど」

 「プラネッツなのかい? 本当にお前さんがプラネッツならみんなに幸運を分けておやりよ。まだ顔があるうちに微笑んであげな」受付の女は白い左手で窓口の台を叩きました。

 小さな彼は飛び移ろうとしたのですが、やはり飛ぶことは出来ませんでした。

 「おい、余計なことをしないでくれ。混乱したら大変だぞ」竹筒を耳に当てている「係り」は鳴らない舌を鳴らし、窓口へ移動しようとした小さな彼を黒い革靴で遮りました。

 「・・・・・・」白い影の女は後ろを向いたまま細い肩をすくめました。


 「・・・・・・はい。番号は承知しています・・・・・・でしたら申し訳ありませんがいますぐに連れていきます・・・・・・はい」「係り」は竹筒を耳に当てたまま壁に向かって深く腰を折ると、一息置いてからそれを壁に戻しました。

 「まだモメているんだってさ。でも一番早い次の便でこの子も送り返すから直ぐに連れてこいって。冗談で言ったんだろうけど、この子の幸運で解決するか賭けてみるってさ」

 余計なことは絶対にするなよ、とくぎを刺してから「係り」が一旦、持ち場の桟橋に戻り同僚の「係り」や部下の船頭にプラネッツを「ヒカリエ」の事務所に連れて行く旨を説明しにいき、再び東屋へ戻ってくると、窓口の前では覇気のない者たちが粒子以下の覇気を絞り出さんとざわめいていました。窓口の台に上った小さな彼が行列の木札に朱印を押していたからです。

 「お前さんが顔を押してやれば、どんな奴もぐんばになんか連れて行かれないかもしれないね!! ああ、押さない、押さない。順番だよ順番・・・・・・違うよ、お前さんはバンバン押してやりな、少しくらいお慈悲があってもいいじゃないか、だろ?」




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