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サンソンくん  river 編  作者: ハクノチチ
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上昇する白い風船と赤い意地悪

  ー上昇する白い風船と赤い意地悪ー


 ぼくが引っ張ってあげるから、その糸を繋いであげてもいいよ。小さな彼は西に向かう空の下でお尻から細く長い糸を出すクモの子供と出会ったので声を掛けました。

 誰もいない静かな空を飛んでいるとき、後ろから突然に、あっ、ラッキー! という誰かの独り言が聞こえていたクモの子供は、得体の知れない赤い浮遊体に並ばれると、すぐにその提案を断ったのですが赤い浮遊体は鼻歌を歌いながらそそくさとお尻の糸に身体を巻き付けてしまいました。

ずいぶんと丈夫なんだね、小さな彼はわざと後ろへグンッと引っ張りその強度を確かめました。

「ぼくは太陽の妖精サンソン、よろしく。君も西に行くんだね」

「解いてくれよ、飛びにくいじゃないか」風に流されるままのクモの子供は、空中では何の抵抗も出来ません。

「君の名前はなんて言うの?」

「名前なんかないよ。そんなに後ろへ引っ張らないでくれよ」

「名前がないんだ、脚が六本もあるくせに」小さな彼は笑いながらウエスタンを気取り、ハイッ ドゥォ!!等と掛け声をかけ何回も後ろへ引っ張りました。

「君が引っ張ってくれるんだろ」繰り返し、身体ごと後ろへ持っていかれるクモの子供は酔いそうでしたし、ポニーでも子牛でもありませんでした。

「そうだよ。後ろにねっ!!」小さな彼はグンッと強く引っ張り、抵抗する力のない弱者をゲラゲラ笑いました。

 こんな意地悪は地獄へ落っこちゃえばいいのに!!クモの子供は声に出すともっと意地悪をされそうだったので、心の中で叫びました。


 ……下から白い風船がゆらゆら昇ってきたのは陽が傾き始めたころの事でした。後ろの意地悪はだらしのない顔をしてすっかり寝込んでいました。 お昼寝最高っ!!と最後に言った意地悪の声が忘れられなかったクモの子供は、丁度昇ってきた白い風船に飛びつくとほくそ笑みました。

 クモの子供は自分のお尻の糸の先でスヤスヤ寝息を立てている「お昼寝最高っ!!」野郎を風船の糸に自分の糸で縛り付けてから、突然の迷惑にもそもそしていたお尻の根元で切断すると、風船の天辺まで昇り再び長い糸を出して離陸しました。風に吹かれる自由をお尻に取り戻したクモの子供は、上昇する白い風船と赤い意地悪へ向け六本の脚で手を振りました。

 途中で割れれば地獄、割れなければ天国だ!!

 夕焼けの始まった赤い空に飛び直したクモの子供は全く清々しました。



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