表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイバーズ・メモリー(1)  作者: 橘 シン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/102

7-19


 宮殿へ戻ると、領主達の集団に出くわす。

 食事会が終わったんだろうか。


 昨日、挨拶した領主ばかり。

 会釈しつつ通り過ぎるのを待つ。


 集団の最後にファングリー卿がいる。


「やあ。ウィルならマリウス卿達と話をしているよ」

「そうですか」

 迎えに来たと思われてるみたい。


「明日、帰るんだってね」

「はい」

「とんぼ返りか。大変だ」

「領主も補佐官も不在じゃマズイんで」

「確かにな」

 ファングリー卿は苦笑いを浮かべつつ頷く。


「帰りは竜三頭だ。少し早く帰れるんじゃないか?」

「どうでしょうね。帰りの方が荷物が多くて」

「そうか…」

 早いことは早いだろうけど。


「食事会の部屋は近いんですか?」

「ああ。すぐそこだよ。つき当りを右だ。行けばわかる」

「ちょっと行ってきます」

 ここまで来たらついでだ。


 つきあたりを右っと。

 あそこか?…廊下に剣を腰にぶら下げた者数名。他に使用人多数。

 剣を下げてるのは近衛竜騎士隊だろう。

 近衛竜騎士隊は常時武器を携帯できる。(当直の見張りは別として)宮殿ないでも。

 一番隊でもそれはできない。


 近衛竜騎士がいるって事は陛下もいるって事だ。


 近づくあたしに気づいて、前を塞ぐように立つ。

「どこの所属の者か」

 どこって…。

 そう言って来たのはあたしくらいの二十代後半の男性。

 なかなかいい体格。

 

 あたしの事は知っていそうなもんだけど。

 だいたい、後ろに…えっと、ああ、ジェネス・マトゥーアがいるじゃないか。


「シュナイツのヴァネッサ・シェフィールド」

「ああ、お前が…」

 驚きもしない。笑ってるし。


「近衛竜騎士隊の副長をやってる。ケルビム・ハーフナーだ」

「どうも」

 握手をする。

「ジェネスが世話になった」

「世話なんかしてないよ」

「お久しぶりです。シェフィールド隊長」

「そうだね」

 ジェネスとも握手して、その他の隊員とも挨拶する。

 シュナウザー様のお悔やみともに。


「うちの領主がいると思うんだけど…」

「イシュタル卿なら中におられる。迎えに来たのか?」

「いや、散歩中で近くまで来たから」

「散歩か、いい気なもんだな…」

 ケルビムがため息交じりに言う。

「今だけね。明日からはまた護衛しながら、家路だよ」

 陛下の護衛に比べたら、ストレスは小さいかもしれない。 


「イシュタル卿が竜を手に入れたってのは本当か?」

「一回乗っただけらしいですが?」

 この二人はあそこに居なかったのか。

「本当だって、あたしも驚いてるよ。でも、竜は大人で戦闘用じゃないけどね」

「それでも、すごい事ですよ」

 

 などと話をしてると陛下とウィル、リアン、マリウス卿とその他領主数名が出てくる。


「ヴァネッサ。明日、帰るそうだな」

 陛下があたしに気づき話かけてくきた。

「はい」

「もう少し、ゆっくりしていけば良いものを」

「申し訳ありません。早く帰らないとシュナイツに残してきた者達が、やきもきしすぎて寿命が減ってしまいますので…」

「ははは、そうだな。致し方なしか」

 陛下は笑顔でそう言ってくれる。

「道中、気をつけてな」

「はい。お気遣い痛み入ります」

「うむ」

 陛下は秘書らしき事務官と近衛竜騎士ともに去って行く。

 その後、マリウス卿と少し話して彼も去る。


「ヴァネッサ、迎えに来てくれたの?」

「そうだよ。迷子にならないようにね」

「もう。ここと部屋はそんなに離れてないから、迷わないわ」

 はいはい、そうですか。


「食事会はどうだった?」

 歩きながらウィルに訊く。

「最初は僕の竜の話からで…」

 彼は参ってる様子。でも、そいつは仕方ない。

 かなり珍しい事だからね。

 

 後は普通に談笑。


「リアンも?」

「私は相づちしてただけ…よくわからないし」

 行った意味は…。まあ、いい。

 ウィルのそばにいるだけでも、支えになるだろう。


「ィル!…」

「ん?誰か呼んだ?」

「あたしじゃないけど?…」

「ウィル!」

 後ろから聞こえる。

 振り向くと…。

「フィオレット姫…」

「うわぁ…」

 しかも一人で…。護衛すらいない。

 

 姫様はスカートを少し持ち上げ早足であたし達、いやウィルに近づく。

「ヴァネッサ…」

「知らないよ」

「ええ…」

 姫様の目的はウィルだし。


「ウィル!食事会は終わったのか?」

「ええ、まあ…」

「そうか!。では参ろう」

 そう言うとウィルの腕に自分の腕を絡める。

「あ、あの姫様、どこに?…」

「妾の部屋じゃ.」

「いや、それはちょっと」

 ウィルは拒否を示す。

「昨日、二人で話そうと約束したではないか」

 猫なで声でウィルに迫る。

「そうでしたっけ…はは」

「わかっておるだろう?さあ」

 姫様はウィルの腕を引っ張るが、もう片方の腕をリアンが掴んでいる。

「姫様、申し訳ございません。私達は明日シュナイツに帰るのです」

「何!?(まこと)か?」

「はい」

「なので荷物の整理をして、明日の備え休息を取らねばいけません。姫様とお話なんかできる時間なんてないんですぅ!」

 姫様は奥歯を噛みしめる。

「貴様はさっきから何なのじゃ?補佐官如きが、しゃしゃり出るでないと言っておろう!」

「補佐官だからウィルのそばにいるんです!そちらこそ、昨日話したくらいで馴れ馴れしくしないでください」

「何じゃとぉ…」

 姫様は周りを見渡す。

 廊下にはあたし達しかいない。

「調子こいてんちゃうぞ、ワレ。自分なんか、うちの一言で牢屋行きや。一生出られへんぞ。ああ?」

 姫様とは言えないドスを聞かせた声で、リアンに迫る。

「え?…」

 リアンもウィルもこれには驚く…ていうかドン引き。

 あたしもこういう人と聞いてはいたけど、実際に聞いたのは初めて。


「わかったら、どかんかい」

「姫様、落ち着いてください」

 さすがにこれ以上は見過ごせない。

「ヴァネッサ、ワレも楯突くんか?おぉん?」

「誰か来たら、姫様の印象が悪くなりますよ」

 知ってる人にはいいんだけど、知られちゃマズイ人もいるだろうし。


「姫様!…そこにおられましたか」

「ちっ!」

 付き人だろうか?。数名が廊下の奥からやってくる。

「どうしたのじゃ?そんなに慌てて」

「突然、居なくなったら慌てもします。お部屋へお戻り願います」

「まだ、眠とうない。散歩程度良いじゃろ」

 ドスを聞かせた声はどこへやら、いつもの?姫様に戻る。

「夜ふかしして翌朝起きれなくなったのをお忘れですか?」

「ふっ…」

 リアンがちょっと吹き出して笑い、慌ても口を塞ぐ。

 それに気づいた姫様が顔を赤くする。

「くっ、今それを言う出ない!」

「も、申し訳ありません」

 ちょっと恥ずかしいかもね。


「姫様」

 ウィルが話しかける。

「姫様のご希望に沿う事はできませんが、明日の出発にお見送りに来ていただけると、嬉しく存じます」

「見送りか…そうじゃな…」

「と、なれば姫様。そろそろご就寝されませんと…」

「わかった…。ではな、ウィル…」

「はい。おやすみなさいませ」

 少し寂しげな姫様を見送る。


 姫様が居なくなってから、ウィルはため息を吐く。

「隨分、好かれてるね?」

「僕は何もしてないに…」

「大迷惑よ。明日も来るんでしょ?」

 リアンは愚痴をこぼす。

「て、いうかあの人、二重人格なの?」

「そういうんじゃ…。ストレス溜まってんじゃない?」

 王族は公務優先で、自分の思い通りな暮らしはできないと、殿下から聞いた事はある。

 殿下は好き放題やってそうだけど、あれでも公務優先してる…はず…。


「さあ、戻るよ。あたし達も寝ないと」

「そうね」

「その前に荷造りしないと」

 リアンはドレス以外は持って帰るらしい。

 鞄に入ればいいけどね。


 部屋に戻って、あたしは寝ようと思ったら、リアンがあたしの鞄に余裕はないかと訊いてきた。

「はいはい。ありますよ、どうぞ」

「ありがとう、ヴァネッサ」

 リアンはあたしの鞄に服を押し込んでいく。

 鞄は膨れ上がりパンパンに…。


 今度はウィルがやってくる。

「もう鞄に余裕派ないよ」

「は?」

「え?違う?」

「シュナイダー様の兵法書を見せてもらおうかと思って」

「そこのチェストの上にあるよ」

「これが…中見ても?」

「いいよ」

 ウィルは鞄を開け、兵法書を取り出す。

 

「すごい厚み…うわぁ」

 ページを捲り声を上げる。

「びっしり書かれてるわ」

 リアンも覗き込む。

「これを一人で書き上げたのか…」

「部下と一緒にだと思うよ」

「でも、シュナイダー様が主導していた」

「そうだろうね」

 

 ウィルは兵法書から目を離さない。

 真剣な表情で読み込んでる。


「あんた、ずっと読んでるつもり?」

「え?いや…」

「ウィル、シュナイツに帰ってからにすれば?時間あるし」

「うん」

 ウィルは兵法書を鞄に戻し、留め具をかける。


「ヴァネッサ」

「ん?」

「帰りも、よろしく頼む」

「わかってるよ」

 言われなくてもね…。


「それじゃ、寝ましょう。明日に備えて」

「そうだね」

「寝坊したらいけないし」

 リアンはそう言って、あたしを見る。

「はいはい…」

 あえて何も言わない。

 ミャンにも言われたし。


 それぞれ部屋に戻って今度こそ寝る。


 ベッドに入り目を閉じる。が、昨日ような眠気は来なかった。

 明日以降の事が気になる。

 

 大丈夫。

 悪い予感はしない。


 シュナイツまで無事に帰るだけ。


 帰ったら、いつもの日常だ…。


 レスターとガルドはちゃんと指揮してるだろうか?…。


 オーベルとシンディは心配しすぎて、参ってるかもしないね…。


 ライアと…エレナは…。


 アリスとジルも…。


 

 そう考える内に、体の力が抜け眠りに落ちた。


 


Copyright(C)2020-橘 シン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ