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ブレイバーズ・メモリー(1)  作者: 橘 シン


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69/102

5-17


 ウィルには一応、剣術の訓練はしている。だけど、数ヶ月程度じゃたかが知れている。

 ライアは筋はいい、と言っていたけど、あれはお世辞だ


「うわぁ!…」

 ウィルが後ろに倒れ込んだ。

「ウィル!さっさと立ち上げるんだよ!」

 彼は座ったまま後ずさる。

「へっ、聞いちゃいねえよ」

 ちっ。

 賊どもは余裕の表情で薄ら笑う。

「殺さずに遊んどけよ!」

「わかってまさぁ」

 リーダーがウィルをあしらっている賊に話す。


「金ならくれてやる。ウィルを、彼を返しな」

「金は、後でいいんだよ」

 後でいい?。

 ウィルを拉致するわけでもない。何がしたいんだこいつらは…。

 

「お前、竜騎士のヴァネッサだな?」

「あたしが竜騎士のヴァネッサだったら、あんたたちに何の関係があるの?」

「てめえは俺達の間じゃ知らない奴はいねぇ。てめえを殺れば箔がつく」

 あたしが目的。

 あたしを殺れば箔がつく?。馬鹿か?箔がついったって、賊には変わらないんだよ。

 昨日、襲ってきたのも、こいつらか。

「ヴァネッサって、やっぱ有名人なんだ…」

「勘弁してほしいよ…」

 全くさ…。ため息を吐く。


「ヴァネッサが欲しいんでしょ?あげるからさぁ、アタシとウィルは見逃してくんない?」

「野良猫、お前は後で楽しませてもらう」

 そう言ってニヤつく。

「野良猫!?野良猫じゃないし!、か、飼い猫だし?…だよね?」

「あんたねぇ…」

 ただの猫呼ばわりされてるの分かってない。


 なるほど、あたしが目的と。

 やっぱり、かな。昨日のやつはこいつらで確定か。

 にしても、おかしい…。

 ウィルに剣でも突き向けていれば、あたしらは何もできない。簡単に殺れる。

 でも、そうはしない。

 モノホンの馬鹿なのか?。


「行くぜ!」

 賊のリーダーが細みの剣を抜き、突っ込んできた。

 あたしは自分の剣で受け止めたり避ける。

 リーダーの剣は振りは早いが、めちゃくちゃに振り回してるだけ。

 あたしの動きを見てない。

 イケる!。

 一気に片を付ける!。 

 あたしは前へ出る。

「ヴァネッサ、待って!」

 ミャンの言葉を無視した。


 賊へ攻め出る。

 剣を大きく弾き、隙ができる。そこで距離を詰めようとすると、向こうがあたしに合わせるように後ろに引く。引き方がうまいね…。

 ミャンも横で賊の相手をしている。

「はっ…!?」

 左からもうひとり仕掛けてきた。

「あんたから死にたいのかい!?」.

 距離を詰めれない賊は無視して仕掛けてきた賊を相手にする。

 こいつらも剣の腕は大した事はない。

 じゃあ、こいつからと攻めると引く。

 そして、さっき引いて距離を取ったリーダーが攻めてくる。

 的が絞れない。絞らせてくれない。

「後ろ!」

 ミャンの言葉と同時に後ろで剣を弾く音。

「くそっ!」

 一旦、賊達と距離を大目に取る。


「ありがと、ミャン…危なかった」

「いえいえ」

「あんたのやりづらいって意味が分かったよ」

 いい連携攻撃だ。

 的と絞らせず、注意を削いで、隙ができた所で一撃か。

「一人ひとりは大したことないだけどさぁ…」

「だね」

 

 ウィルはまだ生きてる。いや生かさせてる、と言ったほうがいい。


 あたしとミャンを殺ってからか。


 賊とは距離を取ってから、膠着する。

 賊は攻めて来ないし、こっちも迂闊に攻めれない。

 

 向こうが突っ込んできてくるなら、同じ戦法でやろうかと思うけど。そんな気配はないね。

 戦法がバレた以上向こうも迂闊には出て来ないか、それとも隠し玉があるか…。

 どちらにしろ黙って見てるわけにはいかない。


「あたしを討ち取りたいんでしょ?男ならかかってきな!」

 あたしは剣を地面に突き立て、手招きする。

「股にぶら下げた玉と竿が泣いてるよ」

「玉って…ヴァネッサ…」

 ミャンは呆れ顔だ。

「そ、そうだぞ。た、玉が泣いてるぞ」

 賊達の余裕な態度は変わらない。

 ウィルが向こうにいる以上、主導権は賊達にある。


 懸命にもウィルは賊に向かって剣を構えてる。諦めてはいない。

 賊が軽く振り抜いた剣をしゃがんでかわし、ふとももを少し切りつけた。

「痛って!てめえ!」

 賊の蹴りがウィルに入る。

「ウィル!」

「もう我慢できない…」

「ミャン?」

「アタシが突っ込んで惹きつけるから、ヴァネッサはウィルを助けて」

 そう言って、短槍を構える。

「やめな。あんたが全員を相手するのはさすがに無理だって」

「でも…」

「ウィルに頑張ってもらう」

「え?…いやいや、無理だって」

 ミャンは驚きと困惑の表情であたしを見る。

「ウィルが一番優位なんだよ」

 彼が相手にしているのは一人。こっちは六人で、連携はうまいときた

「あれでどうやって賊に勝つのさ?剣術は初心者なんだよ」

「それでも、やってもらう。頭使ってね」

 

 あたしは地面に突き立てた剣を抜き、鞘に収めた。

「ウィル!」

 反応がない。

「ウィル!こっち向けぇ!」

 彼は恐る恐るこっちを向く。

 

 あたしは自分の頭の横を指差す。


 ―あんたは頭を使うのが仕事でしょ。考えろ―


 次に自分の胸を叩く。


 ―気持ちで負けたら、終わりだよ―


 そして、笑顔で親指を立てる。


 ―あんたなら、やれる!―


 伝わったら奇跡だ。


「何しても無駄だぜ」

 賊のリーダーがあたしからウィルを隠すように立つ。

「そうみたいだね」

 あたしは腰から剣を鞘ごと取って、前に放り投げる。

「ヴァネッサ!?」

「あんたも」

「本気で?」

「そうだよ、早く」

「どうすんのさ…」

 ミャンはため息を一つ吐いた後、短槍を前に捨てる。


「あたしを殺りたいんでしょ?さっさとしなよ」

「いい判断だな。どうしたんだ?」

「どうもしないって…」

 賊は警戒しつつ、少しづつ近づいくる。

「手を頭の後ろで組んで、跪け」

「はいはい…」

 指示通りにはするが、ゆっくりと。


 ウィルが戦ってるの見えたけど、やっぱりいいようにあしらわれてるね。

 でも…相手してる賊がおかしい。

 大きく息切れしてる…どうして?…。その事に目の前の賊は気づいてる様子はない。


 賊が剣を振り上げた所に、ウィルが叫びながら突っ込んで行った。

「うわああああぁ!」

「馬鹿!無闇に突っ込むな!」

 言ったところで、遅い。

 ウィルは賊に体当たりし、賊とともに草むらに消えた…。

 

 あたし達の前の賊も気づき振り返った。

「おい!大丈夫かよ!」

 そう声をかけるが…。

 草むらから出て来たのは…。

「ウィル!」

 彼の持っていたショートソードは折れていた。

 ウィルはフラフラしながら、後ろに下がり座り込む。

 草むらからもう一人、賊が立ち上がる。

 そいつの腹には何かが刺さっていた。ショートソードの半分だ。

 刺さったままのショートソード見た後、ゆっくりとこちらを見て血を吐いた後、前に倒れ込む。

 呆然とする賊達。


「くそ!」

 右から三番目の賊がウィルの方へ走り出す。


 しめた!

「ミャン!」

「任せろ!」

 ミャンは素早く短槍を拾い上げ、ウィルへ向かった賊に対して投げる。

 それと同時にあたしは立ち上がり、一番左の賊へ走り出す。


 走りながら背中に仕込んでおいたショートソードを抜く。


 ミャンの投げた短槍が、背中を貫いた。

 右の二人も動き出すが、ミャンが追いかけ足を引っ掛けられて転ぶ。 


 あたしはショートソードを腰だめに構え、賊へ勢いそのまま突っ込む。

 賊の右脇腹にソードを刺し、ねじり込んで地面に倒した。

「ボケっと突っ立ってじゃないよ」

「んん!?ぐぅぁ…」

 ソードを抜き、今度は首に刺す。


 左から二番目の賊が気づき、こっちにくる。

「やってくれたな!」

 左手で剣を抜きながら迫る。

 左利きか。

 あたしは起き上がり、ソードを逆手に持ち替え構える。

「殺してやる!」

 大振りの剣筋。ミレイ以下だよ、あんたは。

「そんなじゃ、あたしは殺れないよ!」

 大きく左下へ振り抜いた腕を素早く左手で掴み、鎖骨の内側あたりを上からソードを刺す。すぐに引き抜いて脇の下から真横にもう一度。

「な…あ…」

 後ずさる賊を蹴り飛ばす。


 ミャンはすでに二人を倒していた。

 残るは一人…。賊のリーダーのみ。

「ちくしょう…」

 悔しくを滲ませ、剣を向ける。

 ショートソードを大きく素早く振り、血を振り飛ばす。

「残るは、あんただけ」

「なんでこんな事に…」

「なんでだって?」

 あたしはリーダーへ近づく。ミャンと挟み撃ちにする。

「バカだから」 

 ミャンの言葉に賊が振り向く。

「ヴァネッサ!」

 彼女があたしの剣を投げたてよこす。それを受け取りショートソードを捨てる。

 受け取った剣を腰に取り付け、引き抜いた。

 ここまで賊は何もできずオロオロしたまま。

「さあ、かかってきなよ。あたしを倒して箔をつけたいんでしょ?サシで勝負だ。ミャン、手出すんじゃよ」

 ミャンにはウィルの所に行くようサインを出す

「あ~い」


「野郎、ぶっ殺してやる!」

 賊が走り込んで来て剣を振る。

 振りも突きも早いけど、単調。

 剣を合わせずにすべて避ける。

「くそっ、なんで当たらねえんだ!?」

「ド下手くそなんだよ」

 剣撃の隙きを突いて、腹に一蹴り。蹲るかと思ったけど、少し後ずさるだけ。根性あるね。まだ剣を振ってくる。弱々しい剣撃。

 あたしは剣で賊の剣で弾き飛ばす。

 そして、両腕、両脚を素早く斬りつける。賊は跪く。

「ぐあっ…殺るなら一思いにやれよ!」

「どうしようと、あんたに関係ないでしょ」

肩口に剣を刺し倒し、地面まで突き通す。

「痛ってえ!」

「聞きたい事がある。正直に言いな」

「なんだよ…」

「昨日、毒矢を射ってきたのは、あんたらかい?」

「毒矢?しらねえよ!」

 剣をねじる。

「ぐああ!ホントだって…」

 みたいだね。

「町であたしらを襲ったのは?」

「俺たちだ…悪りいな…」

「いいんだよ、謝らなくても」

 笑顔で話しかける。

「もう一つ。なんで人質を盾にしなかった?それをやられたら、あたしらは何もできなかった。簡単に討ち取れたはずだよ」

「へっ、俺たちにもプライドってもんがあるんでね。卑怯な事はしねえよ」

「卑怯だって?多勢で襲っておいて…賊は賊らしくしておくんだったね」

 肩口から剣を抜き、胸を足で押さえる。

「竜騎士舐めてんじゃないよ」

 剣先を賊の喉元にあてる。覚悟できてるのか、命乞いしない。

「ほんと、竜騎士をなめちゃいけねぇな…」

 賊が目を閉じる。

 あたしは力を込め、喉元から首を貫いた。


「はあ…」

 大きく息をつく。

 周囲は屍累々。


 あたしはショートソードを拾いウィルの所へ向かった。



Copyright(C)2020-橘 シン

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