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ブレイバーズ・メモリー(1)  作者: 橘 シン


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5-3


 外はひどい雨。遠くで雷もなってる。

 明日は無理か…。


 小走りで宿舎入り口のデッキにあがる。デッキには手すり屋根ある。

 サムがデッキに座りこんでいた。

彼の頭の上ある窓からスチュアートが外を覗いている。

「サム、大事な話があるから中に入りな」

「はいはーいっと」

「返事は一回」

「はい」


 宿舎の中には大きなテーブルあって、それを囲むように座って食事する。

 あたしもたまに混じって食事することもある。

 食事だけでなく戦術や戦略を教えたりことかも。


 竜騎士隊全員があたしに注目する。

「この前、王都から近衛竜騎士隊が来た事は、みんなしってよね?…」

 その竜騎士が持ってきた書状、陛下からウィルへの手紙の内容を教えた。

「…っていう内容でね」

「陛下が来てほしいって…どうするんですか?」

「行くしかないだろうな…」

 スチュアートの質問にレスターが答える。

「そうだよ。行ってくる」

「で、おれたちで護衛てわけですね」

「いや、あんた達は留守番。あたしとミャンで行く」

「二人だけで?…まあ、ミャン隊長は竜に乗れますけど…」

 レスターは納得していない様子。

「あの…」

 ミレイが手を挙げる。

「なに?」

「はい。特段の事情ない場合、最小行動単位は班とする、と教わったのですが…今回の護衛については、その、ヴァネッサ隊長とミャン隊長お二人だけで行く理由は?護衛は多い方が安全と思うのですが…」

「ミレイの言う通りっすよ。班で行きましょうよ」


 竜騎士隊は四人一組で行動するのが基本になっている。

 これは前後左右を一人づつ警戒するため。


 伝令は二人組だけどね。

 ポロッサまで書状を出す時とかも二人で。


「二人で行く理由は目立ちたくないから。物々しく護衛して目をつけられるのはいやなんだよ」

「ですが…多い方が脅しになりませんか?わざわざ狙ってくる事はないかと…」

「それと旅費。シュナイツの財政状況がカツカツなの知ってるよね」

「でも…」

「ミレイ、あんたが言ってる事は間違ってない。今回、あたしの方が間違ってるから」

「…」


 納得いってないのはここいる全員。

 で、さらに反発を食らうであろう事項がもう一つ…。


「それから、リアンも一緒に行くから」

「はあ!?」

 全員が手を挙げ、意義を唱える。

「何でリアン様まで行くんすか」

「ああ、そうだ。呼ばれたのはウィル様でしょ。危ないですよ」

「本人が行きたいって。で、ウィルが連れて行きたいから考えてくれ、それであたしが決めた」

「いやいやいや、そこは断りましょうよ」

「断ったよ…最初は」

「なら、どうして…」

「リアンの今後を考えてね…」

「リアン様の今後?」

 あたしはリアンを過去を話した。口外しないという約束の上で。

 この辺の事を話さないと、納得してもらえないと思ったから。

 

 リアンの過去を知る者は少ない。

 知って変に気を使われるのは本人が気にするだろうからと、シュナイダー様が言っていた。


「そんな事が…」

「だから、シュナイダー様が亡くなった時、あんなに取り乱していたんですね」

 合点がいったのか、みんな静かになる。

「あたしとウィルが王都へ行って、取り乱すなんて事はないと思うけど…不安にさせるのは間違いない」

「だからって危険を冒してはまで、連れて行くのはどうなんです?」

 レスターは身の安全を最優先に考えてる。いや、みんなそう考えてるんだけど。


「ウィルはリアンをシュナイツから離して、シュナイダー様の事とか思い出さないようにしたいって…」

「一時的には忘れる事はできるでしょうけど…」

「あたしはリアンを強くできればって思ってる。トラウマなんか吹っ飛ばすくらいにね」

 うまくいくか分からないけど…。


「虎穴に入らずんば…みたいなもんすか」

「獅子の子落とし、のほうが合ってるんじゃないかな、リアン様の事を考えれば」

 サムとスチュアートがそう話す。

 そんな中、ガルドはあたしが話をし初めてからずっと腕を組んだまま黙っている。


「ガルド、お前が黙ってるなんて珍しいな」

「そうか?」

「余計な仕事増やしてんじゃねえって言いそうな内容だと思うが」

 ガルドは言いたいはずだよ。ウィルの所に行って机をぶっ叩いてね。

 以前の奴だったらやってかもしれない。

 ウィルに対して腹に一物あったのは確か。でも、彼と話す中でガルド自身のウィルに対する何かが変わったんじゃないかな。

 ウィルの剣術の休憩中に話してるのをよく見る。


「どうでもいいのかよ。お前は」

「どうでもいいわけねえだろ」

「だったら…」

「だったら、何だ?ウィル様と隊長が決めた事だ。何を言えってんだ?言って何か変わるのか?あ?」

「いや…そうだが…」

「どうなんです。隊長」

 そう聞いてくるガルドにあたしは首を横に振った。

「変わらないね。決定事項だし」

「だとよ。なら、俺は俺の役目を果たすだけだ」

 ガルドの言葉以降、誰も発言しなくなった。


 ガルドは血の気が多くて、突っ走る事があったけど、少しづつ落ち着いて来てると思う。

 このまま落ち着きすぎたら、ガルドらしくなくなって笑っちゃうけど。


「留守は任せください」

「血の気が多い奴に任せらるかっての」

 レスターがため息交じりにそう言う。

「おれらで、シュナイツは守るんで任せください」

「悪いね。頼むよ」

 物分りが良すぎて、申し訳無く思っちゃうね。


「お土産、楽しみしてますよ」

 サムは笑顔で言う。

 こういう状況でこういう発言するのは、あえてやってるのか?それともバカなのか?。

「はいはい…。土産話なら、たっぷり聞かせてあげるから、楽しみにしてな」

 サムは笑顔のまま、いいっすね~と頷く

 何がいいんだか…。


「隊長がいない間、具体的にはどうすれば…」

「いつも通りだ」

 ミレイの発言にレスターが答える。

「いつも通りですか…」

「無理せず、深追いしない」 

「臨機応変、柔軟に」

 ガルドとレスターがそう続ける。

「そういう事」

 ガルドとレスターなら安心できる。

 この程度の事で狼狽えるようじゃ竜騎士失格だからね。


「レスター、ガルド。あんたら二人で指揮を。喧嘩とか恥ずかしい事するんじゃないよ」

「分かってます。ガルドとはツーカーなんで」

「まあな」

 テーブルを挟んで拳を合わせる。

「ライア、エレナ、ジルにはサポートに回るように言ってあるから」 

 これはレスター、ガルドにとってもいい経験になりそう。

「じゃあ、シュナイツの事頼んだよ」

「了解!」 

 そう言って全員が立ち上がり敬礼する。

 あたしも敬礼で答えた。


 一応、各隊各部所にも顔を出しておいた。

 リアンを心配する声が上がったが、これはあたしを信じてもらうしかない。

 領主不在についてはシュナイダー様が王都に行く時に、二ヶ月くらい不在なる事もあったから、それについて大丈夫だろう。


 で、早速準備に取り掛かる。

 まず、竜に二人乗り(タンデム)用の鞍を取り付ける。


 二人までなら竜は問題なく走る。一人の時より速度は、当然落ちるけどね。 

 それでも馬よりは速い。休憩を考慮に入れてもね。


「僕やリアンが乗っても大丈夫?」

「黙って乗っていれば大丈夫だよ」

 竜の操作は竜騎士しかできないけど、だた乗るだけなら問題ない。それに、乗るのがウィルとリアン。

 知らない人物を乗せるわけじゃないから、竜も警戒しない。

 

「リアンはまだ竜を少し怖がっているみたいだけど、あんたは大丈夫でしょ」

「いや…触るの大丈夫だけど、乗るにはどうかな…」

 ウィルは苦笑いを浮かべる。

 確かに、ぶっつけ本番じゃまずいか。


 ウィル、リアン、ミャンを厩舎へ連れて、竜の試乗をすることにした。




Copyright(C)2020-橘 シン

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