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ブレイバーズ・メモリー(1)  作者: 橘 シン


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39/102

2-19


 公園から市場へと移動する。

 アスカが下見すると言っていたけど…。

「嘘やろ?もう埋まっとるんか!?」

 この特徴的な喋り方は彼女だ。


 アスカがいるのは市場を管理している詰め所。

 彼女は腕を組み、考え込んでいる。

 私はアスカの肩を軽く指で叩く。

「ん、あーエレナかいな」

「どうかした?」

「聞いてえなぁ。ええ場所、取られてもうた…速すぎるで」

 下見の前に詰め所に来るべきだったと話す

 

 市場に店を出す場合、店を出す場所が重要らしい。

 よく分からないが、売上に大きく関わるのだとか。


 出店場所は予約制で翌日の分を前日の今日中に決める。

 午前と午後で別になっている

 基本的に先着順で、後は商人同士で交渉する。


「ここがよかったんやけど…」

「斜向いが空いてる」

「いややねん、ここがええねん」

 どう違うのか、私にはさっぱり分からない…。

「交渉は?」

「いやや」

「なぜ?」

「この人、めっちゃ性格の悪いおばはんやねん」

 予約表に書かれた名前を指で叩きながら話す。

「うちの商品にケチつけるまくるんや。おんどれの商品の方が糞やっちゅねん!」

 彼女はまくし立てる。

 そんな彼女の話に詰め所の人は苦笑いを浮かべる。

「あかんあかん。こんなんイライラしてたらお肌に悪いわ。もうええわ、店は出さへん」

「え…」

 いいのだろうか?。

「午後なら空いているようだけど?」

「ええねん。買い付けのついでのつもりやったし」

 予約はせずに詰め所を離れた。


「エレナの方はどうだったん?」

「さほど情報は得てない」

 ギルドで得た情報をアスカに話した。

「登りなんか?きっついなぁ」

「仕方ない」

「北ルートからリカシィまで売りに来てる農家がいるはずや。帰りは荷台が軽くなるやろし、乗せてもらうのはどうやろ?」

「なるほど」

「さすがにポロッサまでは無理やろうけどな。少しでも楽した方がええで」

 

 というわけで、北方面から来てる農家を探す。

 結果、見つかったのはお爺さん一人。

 他は、帰りは帰りで必要なものを買い込むため、私が乗る余裕がない等の様々な事情で断られた。

 魔法で荷台を軽くできる事を、アスカともに説明したが、興味を示すものの結局は断られる。

「怪しまれている」

「なんでやねん…美少女二人の頼み、聞かんとかアホちゃうか?」


 それで見つかったお爺さんは…、

「構わんよ」

 と、特にこちらの事情も聞かずに引き受けてくれた。

「その代わり、これ全部買ってくれ」

 そう、笑顔で言う。

「そうきよったか…商売上手やなじいさん?」

「ははは。さあ、どうするかね?お嬢さん方」

 

 お爺さんが売っていたのは各種野菜。

 売っている量は多くない。私が背負ってきた鞄一つ分くらい。

「売れ残りやんけ…」

「傷んでいるものは少ないようだけど」

「これでな」

 お爺さんはそう言って、手を広げ私達に見せる。

「50か…」

「500じゃ」

「500!?高すぎるやろ!いいとこ100やで」

 アスカは驚き抗議の声を上げる。

「買う」

「ちょ、エレナ待ちぃや」

 彼女は私の腕を引き、お爺さんから離れる。

「じいさんはうちらの足元見て吹っかけとるんやで」

 声を潜めそう耳打ちする。

「足元?」

「うちら、さっきからこの辺ウロウロして聞き込んでたやろ?それ聞いて事情は耳入ってるはずや」

「なるほど、それで高めに?」

「そうや。どう考えても高すぎるやろ?。それにエレナがこうてどうすんねんな」

「え?あ…」

 確かに。私一人で食べ切れる量ではない。

「うちがこうたるさかい」

「アスカが買っても…」

 アスカは買うというが、どうするつもりだろう?。

 明日は市場に店は出さないと言っていた。やはり、店を出すのだろうか?。

「大丈夫やって。考えあるんや」

 そう言うので、彼女に任せた。

「せやけど、さすがに500で買うのは避けへんとな」

「値切らないと」

「アスカちゃんの腕の見せ所やで」

 値切り交渉開始である。


「じいさん、うちが買うで。でも100な」

「100なら、別にええわい。荷台に乗せる件もなしじゃな」

 お爺さんはキッパリと断ってきた。

「売らんでええんか?今売らんと売れへんで。新鮮な物は次々くるし、じいさんのには目もくれへんよ」

「…そうじゃな」

「どうすんねん?」

「わしは今日は十分売ったから別にええじゃが…そっちはええんかの?」

 私を見ながら、聞いてくる。

「なかなか、やるやんけ…」

 この交渉はお爺さんが有利の模様。

 お爺さんの商品の買わなくても、彼は痛くも痒くもない。

 しかし、こちらは買わなければ荷台を乗ることはできない。

「お爺さん、出来ればもう少し安くしていただきたい。私は北へ…シュナイツへ向いたいのですが、ほぼ登りと情報を得ています」

「うむ」

「出来る限り体力の温存を図りたく、あなたの荷台に乗せてほしいのです。あなたに取っては関係のない話ですが…どうかご再考を」

「確かにわしには関係ない…。この先は大変じゃぞ。おまえさん、どうしてそこまでしてシュナイツへ行きたい?」

「そんなん、じんさんには関係ないやんけ。エレナ、もうええって、行こうや…」

「アスカ、待って。お爺さん、理由を言ったら100まで下げてもらえますか?」

「ほほほ。約束しよう」

 笑みを浮かべひげを撫でる。

「エレナ、そんなんベラベラしゃべるもんやないで」

「別に構わない。あなたにも話しているし」

 話すだけで、安くなるなら得というもの。

「分かりました。お話します。もう少し人気のない所で」

「うむ、向こうでな」

「はい」

「じゃあ、店番頼むぞ」

「うちが?」

「おまえしかおらんしな。頼むぞ、たくさん売ってくれ」

「なんでやねん…」

 憮然としたアスカをおいて市場を離れる。


 お爺さんに私の事情を話した。暴発の件は有耶無耶に。

「私は魔法士として役に…」

「あいわかった、もう良い」

 まだ話の途中だが、止められた。

「でも、まだ全部話していないですが?」

「だいたいの事情は分かった。実をいうとそれほど、興味なくてな、すまんの。わしはおまえさんの意気込みみたいなもんを見たかっただけじゃ」

「はあ…そうですか…」

 私は戸惑ったが、お爺さんがもういいというならいいのだろう。


「おまえさんのは話してくれた。約束どおり100でええぞ」

「え?…いいんですか?」

「あまりもんだしな」

 そう言って私の肩を叩き、市場へ戻り始めた。

「若いうちはやり直しが利く。人生、ずっと平らかでは面白くない。多くはそれを望んでいるがな」

「はい」

「山あり谷ありの方が、振り返った時に面白味がある」

「私はそこまではまだ…」

「そうだろうな。年を重ねていけば、いずれ分かるようになる」

「はい」

 

「エレナ、どうだったん?」

「100で良いと」

「さよか…全部話したん?」  

 アスカは心配そうに訊いて来る。

「全部は話してない。途中で止められた」

「なんやそれ…」

 彼女は脱力しため息を吐く。


「売れとらんなぁ」

「売れるわけないやん、こんな余りもん」

「あんた、商人の才能ないんじゃないか?」

「うっさいわ!」

 

 お爺さんから買った野菜は今日泊まる宿屋兼食事処に持っていくとのことだった。

「あそこなら、なんとかなるやろ」

 押し付けるのである。

「人聞きの悪い事いうなや…有効活用してもらうんや」

 

 お爺さんの荷馬車に野菜を乗せ宿屋へ。

「おかみはーん!」

 裏口のドアを叩く。

「はーい」

「おひさやで」

「あらー、アスカ。おひさー」

 親しげに挨拶を交わす。

「ってなんで裏口?」

「いやーちょっと訳ありなんやけど、これ使ってくれへん?」

「これ?」

 アスカは後ろの荷馬車の野菜を指差す。

「あ、どうも」

「いつも、世話になっとるの」

 おかみさんとお爺さんは知り合いらしい。

 お爺さんがリカシィに来た時はいつもこの宿を使っている。

 お爺さんも常連客。


「別にいいけど…タダ?」

「タダええよ」

 おかみさんは喜んで受け取ってくれた。

「それでさ、あなた…」

 彼女は私を見て呟く。

「エレナやで、色々あってここまで一緒に来たんや」

「どこかで見た気がすんるだけど」

「ここで食事されせていただきました」

「そうそう。マリーダと一緒だったでしょ?」

「何やて!?マリ姉と?どういうこっちゃ?」

 アスカはかなり驚いたようで訊いて来る。

「自分、リカシィはじめてちゃうんか?マリ姉と知り合いって。ちょ…うち、混乱してるわ」

「ここではなく中で話す」

 食事処の席に着き、私の事を話した。

「そうやったんかて…前に話してくた失敗って、大事やったんやな…」

「ごめんなさい。隠すつもりはなくて…」

「別にええよ。そんなん言われへんわ」

「あなたに不信感をもたせた事は否めない」

「そんな事あらへんよ」

 彼女は私に笑顔を向ける。

「じいさんには言ったんか」

 声を潜め訊いてくる。

 私は首を横に振って答えた。

「そうか…。言わんで正解や。弱み握られて、何かいうてくるに違いないで」

 お爺さんに対して不信感を向ける。

「にしても、マリ姉と会っていたんやなぁ。世間は狭いわ」

「ええ。マリーダさんには随分お世話なった。初対面なのに…恩返しができていない」

「そんなんはええねん。向こうは好きで世話しとるさかい、甘えとけばええねん。うちはそうしてるわ」

 恩返しなんてしてへんで、と笑う。


 夕食の時までアスカと話をしていた。

 話をしていたのは大半は彼女だが。

「さあ、そろそろ夕食よ。何にするってメニューは二つだけなんだけどね」

 おかみさんが壁の黒板を指差す。

 メニューは日替わりで朝食が一種類、夕食が二種類。

 値段は安め。で、ここから割引が効く。

 因みに、昼食は出していない。

「うちはトマトパスタで」

「同じく」

「トマトパスタが二つと」

 

 運ばれてきた、料理は二種類。

 トマトパスタと、野菜を茹でたものに何かかかってる。

「ん?温野菜サラダ付かいな?珍しいな、いつも皿一枚やのに」

「それ、さっきあなたが持ってきた野菜よ」

「あ、そうなん?」

「できれば、あそこのお爺さんにも同じ物を…」

「ええ、そのつもりよ」

「ありがとうございます」

「じいさんから買い取ったものやしな」

「そうなの?」

 アスカが事情を話すと、おかみさんが笑う。

「訳ありってそういう訳、だったのね」


 料理を美味しくいただき、部屋へ行く。

 体を拭いてベッドへ潜り込んだ。

「今日でベッドとはお別れ」

「せやな…。ポロッサかシュナイツいかんとないやろな」

 野宿だけはご免こうむりたい。

「準備手伝うさかい」

「ありがとう」

 とりあえず、眠りにつこう。

 寝不足では準備しても無駄になるかもしれない。

 



Copyright(C)2020-橘 シン

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