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ブレイバーズ・メモリー(1)  作者: 橘 シン


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26/102

2-6

 市場にて商品の買付を行う。

 市場は盛況で人だかりが出来ている。

「ここはシファーレンと町周辺からの物と人でいつもこんな感じ」

「昨日、クッキーを買った時はもう少し空いていました」

「午後過ぎあたりからすくけど…なんでクッキー?」

「値段と量を考えた結果」

「500しかなかったんだっけ?」

 そう言って笑う。

「とりあえず王都までは心配しなくて大丈夫だからね」

「はい、ありがとうございます」


 布、糸が売っている一画でマリーダさんは買付を始める。

 色とりどりの布、糸などが所狭しと置かれ、呼び込みの声が聞こえ、その中を商人達が行き交ったいた。

 マリーダさんは品物を触って確かめつつ、露店を回っていく。

 ある露店で足を止め、品物を触り品定めをする。

「これ、ちょっと高くない?」

「そんな事ないぜ。これだけ上物でこの値段はむしろお買い得だ」

「上物?そうかしら…エレナはどう思う?」

「私に聞かれても…」

「うーん」

 当然だと思うが、布の良し悪しは分からない。種類程度ならなんとなく分かるが。

 マリーダさんは鞄からソロバンを出して計算し始める。

「この値段でなら、これ全部買うわ。どう?」

 彼女の差し出したソロバンを店主が覗き見る。

「うーん?…おいおい、冗談だろ?それじゃ売れねえよ。足が出ちまう」

「そんなわけないでしょ?これなら?」

 ソロバンを操作してもう一度見せる。

「…うーん、あー…そうだなぁ…」

 店主が腕を組み悩み始めた。

「これ全部だからね?売れる時にまとめてドーンと、売ったほうがいいんじゃない?」

「分かってるよ」

「ここが駄目なら他行くけど?」

「分かったから、ちょっと待ってくれよ」

 店主もソロバン取り出し計算始める。

 マリーダさんは小さく微笑んで、よしよし、と呟く。

「これでどうだ?これ以上は無理だぜ」

「えー、こうでしょう?」

 彼女は店主のソロバンを操作する。

「いやいや…」

「お願い、お兄さん」

 そう笑顔で言う

 お兄さん?

 若くは見えない。白髪が多少目立っている。

「ほら、エレナも」

 そう耳打ちされる。

「え?はい…お願いします。お兄さん」

 私はそう言って頭を下げた。

 店主は私とマリーダさんを交互に見て、ため息を吐く。

「…分かったよ、これで手を打つ」

「ありがと」

 二人が握手をした。商談成立らしい。



「お世辞でしょ?お兄さんって」

「だろうね。それは向こうも分かってるよ。分かってても嬉しいものなんだよ」

「そんなもんかね…」

 ヴァネッサは納得いなかい表情。

「そういうものなんだよ。人ってやつは」

「ヴァネッサは綺麗ですね、なんて言われたら怪しむ方よね?」

 リアン様は笑いながら、そうヴァネッサに話す。

「絶対、裏があるって思う」

「ヴァネッサにお世辞は効かないみたいだけど、相手を立てる事は悪いじゃないよ。僕もやっていたし、その方が商売がうまくいく方が多かったからね」

 


 買い取った品物を運ぶのが私の役目…なのだが。

「く.っ、重い…」

 持ちやすいよう紐で縛ってくれたが、持ち上がらない。

 私の胴体2つ分…もしかしたら3つ分あるかもしれない。

「大丈夫かよ…俺が運んでやるよ」

「いいえ、これは私の仕事だから」

「そういう契約なの」

「そうなのか?…あんた、厳しいな。顔に似合わず」

「そう?これくらいの量、全然余裕よ」

 余裕?…これが?。

 なんてこと、どうすれば…。

「肩に担いだ方がいいわ」

「ああ。その方がいい」

 と、言われてマリーダさんに手伝ってもらい肩に乗せた…。

「うう…くっ…」

「おっし、じゃあ行ってきて。落とさないようにね」

 そう言われて、荷馬車へと向かう。


 荷馬車まで何とかたどり着き、管理人に手伝ってもらい品物を荷台に乗せる。

「はあ…ふぅ…」

 手で額の汗を拭う。

 冷や汗以外で汗をかいたのはいつ以来だろう?。 

 外套を脱いで荷台に掛ける。 

 貫頭衣では動きづらい、かと言って服を買うわけにも…。

 私は腰紐を緩め、貫頭衣の裾を足首あたりから膝下くらいまで上げる。余った服の生地を腰紐の外側に垂らして、ずり落ちないように腰紐を結ぶ直す。

 袖もまくってしまおう。

 なんだか不格好な気もするが、動きやすさは段違い。足元がスースーするが…。

 マリーダさんの元へ戻る。

 さっきより人が増えた気が…そして甘い匂いがどこから流れてきた。

 気になりつつも、今は荷運びの仕事が残っているので、足早にマリーダの元へと急いだ。


「マリーダさん」

「お、大丈夫だった?」

「はい、何とか…」

「そう」

 彼女は私を上から下まで見て微笑む。

「何か?」

「いいえ」

 微笑んだまま首を振る。

 

 マリーダさんは糸を買い付けるようだ。

 糸は様々な色があり、グラデーションになるよう並べられている。

「縫い糸しては太いですね」

「これは刺繍用よ。向こうが編み物用」

「そうですか」

 彼女の説明に頷く。


 今、彼女は2種類の刺繍糸どちらを買うか悩んでいる様子。

 どちらも似たような若草色。

 右の方が光沢がある。

「右は絹、左が木綿」

 値札が付いている。倍以上の価格差。

「もう、両方買っちまいなよ」

 店主であろう、お姉さん(一応)が、そう声をかける。

「そうしたいんだけど…うーん、今日は絹はいいかな。木綿の方だけ、5束ちょうだい」

 若草色以外にもいくつも買い付ける。

「まいど~」

 先程の布よりは少ないものの、それなりの重量。

「こんなに…」

「それじゃあ、お願いね」

 買い付けた糸の束を荷馬車へと運ぶ。

 このようにマリーダさんが買い付ける、私が運ぶを繰り返し荷台が埋まっていった…。


「これが最後よ」

「分かりました」

「荷馬車で待っていて」

「はい」

 そう言われ、荷馬車へと向かう。

 彼女とは途中まで一緒だったが、市場を出る前に別れた。

 荷馬車で待つこと数分、彼女が戻ってくる。手に何かを持っていた。

「おまたせ~。それじゃあ出発しましょ」

 やっと出発…。

 荷馬車に乗り込む。彼女が隣に座るよう言われる。

「あなたに決めたのは、話し相手も欲しかったからなの」

「そうなんですか」

 彼女は馬を起用に操り、前進させた。

 馬の軽快な足音とともに、周り風景が流れて行く。


「疲れたでしょ?これ食べて」

 と言って渡された紙包み。

 開くと甘い匂いが鼻を通り抜ける。この匂いは荷運びの途中で嗅いだ匂い。

「パイ?」

「そうよ」

 果実を使ったパイだった。手のひらくらいの大きさ。

 人気があるらしく午前中には売り切れるのだとか。

「美味しいです」

「でしょ~」

 朝食をお腹いっぱい食べたが、意外に食べれる。

「甘い物は別腹ってね」

「別腹…なるほど」

「あ、エレナの場合は荷物運びしたからよ」

「はい」

 

 そういえばシンシア先生も、よくパイを焼いてくれた。

「魔法で焼いたのですか?」

「まさか、窯を使ったよ。そうね…今度やってみようかしら。でも火力調整が難しそうね」

 と言って笑う先生。

 そんな事を思い出した途端、涙が溢れる。

「ちょ、どうしたの!?」

「別に…」

「泣くほど美味しかった?」

「はい…」

 涙と一緒にパイを食べきった。



「私もパイ食べたいな…ウィルは食べた事ある?」

「一回だけ」

「ヴァネッサは?シュナイツと王都、何回か往復してるしリカシィ寄るでしょ?」

「ないね、あたしは」

「ほんとに?」

 リアン様は訝しげにヴァネッサに訊く。

「パイが名物なんて今知ったよ。もうパイの話はもういいでしょ」



 リカシィを出て、南へ。

 王都へ向かう道。

 見る景色はシファーレンとは明らかに違う。家々や人々の服装も。

 リカシィに降り立った時に感じた異国感が更に強まる。

 見知らぬ土地…いいえ、新世界へ来たのだ、と思った。大袈裟過ぎる表現かもしれないが…。


実は…余計な事かもしれないが、物の重量を変化させる魔法を突貫ながら作成した。

 この魔法は物質に対して…え?魔法の説明はいらない?そう…。

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