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第1幕ー3


手術が終了した。

ヴェディヴィエールは公平の所へやってくると、公平の様態を説明した。公平は義足ながらも何とか息をしていた。


「君は陸上からきたようだね。陸上はどんなところだった?」


「艦隊が大勢いて、、ちょうど演習の真っ最中でした。

でもキノコ雲が上がって黒い雨が降りそそぎ、悪夢でした。今でも俺と一緒にいたあの子の声が聞こえて。

朱里はどこです。

あの艦隊にミズーリに乗っていたのです。未だに彼女の叫び声が頭から離れないのです。」


公平はベディヴィエールに訴えた。

あのミサイルが放たれた時、彼女は凄まじい爆風に飲まれ意識を失っていただろう。

あの熱線を喰らってはまともに生きられる筈がない。

公平の頭をよぎったのは1945年、8月6日と8月9日に落とされた原子爆弾の存在だった。

そうこれが原子爆弾と同じ破壊力を持つ核兵器なら、恐ろしい。


「君と一緒にいた女性は遺体は発見できなかったよ。

それに君以外のメンバーは全員死亡していた。

恐らくあの艦隊に乗っていた人間で助かった人は居ないだろう。

そしてあのミサイルだが、アレイティ帝国の街、ミエスタに落とされた核ミサイルと同じもので間違いないだろうな。」


ベディヴィエールは冷静に語り始めた。

ここはカスピ海の北、アレイティ帝国の街アクアポリス総合病院であった。アクアポリスはアレイティ帝国の首都であり、湖底軍隊の総合基地があるのだ。

そうここに湖底軍隊が駐在している。


「アレイティ帝国???

まさかカスピ海の底に街があるのですか??」


公平は聞き返した。

するとこの男は海底人ではないかと、思った。

その時、公平の身体に激痛が走った。

恐らく、火傷の痛みが出始めたのだろう。

凄まじい痛みは全身を襲った。

それだけでなく吐き気が出てきた。

その様子を見たベディヴィエールは、すぐに緊急スイッチを押した。


「こちらベディビエール、患者の様態が急変した。

放射性物質を浴びたことによる副作用の症状が出ている。

恐らく火傷の痛みだろうな。

ヴェスター、あの薬はあるか。

火傷を治す特効薬だ。

あの薬を塗れば火傷の症状を抑えることができるだろう。

緊急治療だ。

医師全員を呼んで来るんだ。場所は201号室。」


ベディピエールは、無線を鳴らすと一斉に医師が駆けつけた。

女医のヴェスターも駆けつけた。

そしてひどく苦しむ公平にヴェスターは鎮痛剤を投与した。これにより、症状を最小限に抑える。

看護師のリナリー・リアも、公平の、身体を介護していく。201号室に移ると、公平は全身麻酔を受けた。

そして包帯が少しずつ剥がされていく。

人工看護ロボットが公平の全身に特効薬のエルシェードを満遍なく塗っていく。

そうして、公平は火傷の症状を改善することができた。


「この薬を塗れば、、恐らく症状は改善する。

術後も患者は、特別治療室へ隔離する。

放射性物質を身体から出している可能性がある。

いいな。」


「ベディピエール先生、、陸上人の遺伝子データが、登録されておりません。」


「何??そんなはずは??」


ベディピエールは公平の容体を検査した。

するとウランやプルトニウムなどの成分が一切検出されなかったのだ。


「しょうがない、取り敢えずは、医療薬だ。

極力、患者の容態に差し支えがないように、ここは緊急医療室だ。

助けられるか分からないじゃない。

必ず助けるのだ。

何がなんでもだ。」


ベディピエールは、真剣な口調で看護婦、医師達に語りかけた。

看護婦はベディピエールを手伝い彼の足手まといにならないようにした。

そんな危機的状況の中でも患者の命を助けたいという彼らの思いはひとつだった。

このアレイティ帝国では、陸上人の居住権が認められていない。

もし住むならば、湖底人として姓を変え、労働権を取得しなければならない。

無職労働者は国家法により、、厳重な法処分が下されるのだ。公平は、、延命治療により九死に一生を得た。

しかし、、これから先、、突きつける現実の恐ろしさを知る由もなかった。

特別集中治療室へと隔離された公平は全身麻酔を投与され、しばらく眠りについていた。

公平以外に2人の陸上人が急死に一生を得た。

それ以外の多くの陸上人は死に絶えたのか、カスピ海海戦の時と同様、核ミサイルによる死者は後を経たない。

薬を塗り、公平はだいぶ楽になった。

火傷の傷も不思議と塞がり痛みも消えているような感じがした。

そんな中、ヴェスターという女医と共に1人の男がやってきた。

その男は、軍人の格好をしており湖底軍隊の隊員っぽかった。


「室田公平だな。

私の名はデンス・ヴァレンストリーム、アレイティ帝国の湖底軍隊の隊員だ。

あの核ミサイルの事故から九死に一生を得たみたいだな。

お前の脳波を色々と調べさせてもらったよ。

お前の処分だが、陸上へ返すわけにはいかん。

この国で湖底人として居住権を得でもらう。逆らえば死刑だ。」


デンスヴァレンストリームは、冷たい口調で淡々と言いつけた。


「死刑??ちょっと待ってください。

それだけは勘弁してください。

俺は、、陸上へ帰りたいんです。

俺の大事な婚約者が、みんなが待っているんです。

だから、、お願いします。

陸上へ返してください。」


デンスの冷たい口調での言葉を聞き、公平は必死に説得した。


「ダメだ。

この世界の事を知ってしまった以上は、生かしておくわけには行かない。

それか、アレイティ帝国の士官学校に通い、アレイティ湖底軍隊へと入隊して貰う。

ただし、しばらくはこの病院へ入院してもらうがな。」


デレスは冷たく警告した。その時突然デレスの無線が鳴ったのか、デレスは無線に出た。


「こちらデレス、、どうした??」


「そうか、、分かった。すぐにそちらへと向かう。場所はアクアポリス総合基地だな。了解した。」


デレスは、無線を消すと、ヴェスターへ忠告した。


「先生、、あとは頼んだぞ。俺はアクアポリス総合基地へと行かなければならん。二週間この陸上人の面倒を見てやってくれ。これから正式に陸上人達の処分が決まる筈だ。」


ヴェスターという名の女医は、デレスの忠告を聞き答えた。


「かしこまりました。デレス隊長、、あとはお任せください。」


そういうとデレスは、病室を後にした。そして公平の精神は複雑だった。これから先どのような結末になっていくか想像がつかなかった。


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