第1幕ー2
帝国決戦篇スタートです。
北原は、居酒屋で当時の捜査資料を出した。7年前、北原は、当時朱理の捜査に当たっていた。朱理と公平は重要参考人として警察に事情徴収されていた。成田空港から2人が帰宅した時の彼らの表情が恐ろしく暗かったのを結城は覚えていた。
「三田園朱理、、チャレンジャー号の事件に巻き込まれて死を免れた当時21歳の女の子ですよね。7年前、空港で出会った時の彼女の顔は忘れないもんですよね。」
「朱理ちゃんは、俺の娘達の高校からの友達だったんだ。俺も面識があった。とても仲良くしてくれていたからなあ。いつも笑顔の朱理ちゃんはそこにはいなかったからなあ。守ってやりたかったさ。」
結城は、そこで公平と初めて出会った。死の淵の絶望に立たされていた公平は、取り調べでも黙秘を貫いていた。
「公平君。チャレンジャー号が沈没した時、君と朱理ちゃんは、ホテルにいた。それで間違いは無いんだね?頼む。娘だけじゃ無い。亡くなった人達のためにも俺は真実を暴きたいんだ。その日、船に向かう怪しい人物は見なかったかい?」
「あの日の記憶はもうはっきり覚えていません。前日の夜に酒呑んで、酔っ払って、次の日に突然皆死んじゃうなんて。ただ丁度起きてから1時間後くらいに電話かかってきて、その時に言いました。気持ち悪いから行けないって。そうしたらバーカって言われてムカついたんですけど。その後琹がLINEを送ってきたんです。凄まじい煙が上がってその後、津波警報が鳴って、朱理と避難したんです。
爆発が起きた直後に、津波警報が鳴った。そして、ホテルに津波が押し寄せたのは1時間後であった。
「そうか。琹から確かにLINEが来たのか。あいつは最後に死ぬ前に何か言い残したかったのか?他には、、村尾由香さんや、加納梨沙さん、、武田龍太郎さん、滝澤翔平さん、山下里佳子さん。公平君。君には本当に辛い思いをかけたこれだけを言わせてくれ。綾と琹と仲良くしてくれてありがとう。あの子達は、いつも幸せそうにしてたんだ。君の話をよくしてくれてね。俺は父として何もしてあげられなかった。
「ごめんなさい。刑事さん。あの時船に乗るなって止めていればこんな事にはならなかったんです。俺のせいで。」
すると朱理の表情が強張った。朱理はいつも以上に悲しんで涙を流していた。そして公平の胸倉を掴んだ。
「やめてよ。さっきからそうやって言ってばっかり。なんで、、なんで、、そんな事言うのよ。もう生きる希望も何も無いんだよ。私、、何のために生きてるのよ。何のために、、死にたい。ううううう、、、、
あんな酷すぎるよ。あんな死に方するなんて、綾ちゃんも由佳ちゃんも、、琹ちゃんも、、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
突然朱理は狂ったようにのたうち回った。朱理はPTSDに掛かっていた。もうそれ以来ずっと、否定的な意見ばかり言うようになり、中には自殺しようとする時もあった。彼女の心は、ズタボロに傷ついていた。そして朱理は意識を失った。
公平は彼女を摩って励ましたのであった。
「ごめん。。大丈夫だから、、、朱理。。大丈夫だから。。朱理!!!!朱理!!!!!!大丈夫か???朱理!!!!!!」
結城は立ち上がると部下の北原に言った。
「おい、、北原!!救急班に連絡しろ。彼女を、病院に連れて行け。PTSDだ。治療が必要だ。取り調べは後だ。とりあえず、落ち着かせるんだ。PTSDだ。事故による外的ショックで、意識を失う事もある。救急車を呼べ。さも無いと大変な事になるぞ。」
やがて空港に在籍する救護班が到着すると、朱理は医務室へと運び込まれたのであった。公平は、朱理に付き添うと必死に彼女に呼びかけるのであった。朱理は病院に運び込まれた。そして診療の結果、PTSDと診断された。
公平は帰国後、暫く大学へ行けなかった。病院で、朱理の看病をする毎日が続き精神も不安定な毎日を送っていたのであった。
「公平、、、ごめん。私、、もう眠れないの。不安と恐怖で毎日がパニックでどうしようって、、もう大学にも通えないよ。死にたい、、死にたいって毎日考えちゃうの。病院の食事もまともに美味しいって思えない。どうしてこんな私を助けてくれるの??私なんか、生きる資格もないんだよ。私がミサイルで死ねば良かったのに、、、私のせいだ。」
「もういいんだよ!!朱理、お前は生き残った。ちゃんと生きてるだろ。それだけで幸せじゃねえか。あの日、俺達は生き残って、、自分の幸せを掴んだんだからさ。だから、、、生きよう。な!!!!」
その時の会話を思い出しながら、結城は、日本酒の熱燗を頼むと飲み始めたのであった
「結城さん、、村尾さんも今回の大西洋の調査に参加するんでしたよね。」
「ああ、、あの人はもう刑事を退職されたがどうしても謎を調べたいってな。今回参加されるのは事故で家族を失った遺族の方も含まれている。公安調査官の、三田園警視だってミズーリの事故で朱理ちゃんを失っている。」
「しかし、、普通一度事故が起きた場所に行く筈がないですよね。どうして、三田園朱理と室田公平は、カスピ海に??」
「噂によると事故のPTSDで記憶を失ったんだ。朱理ちゃんは、病院を退院後、チャレンジャー号の事故の記憶をすっかり忘れてしまった。それだけじゃない、、公平君も事故の記憶を忘れていたんだ。俺が何度言っても思い出せなかった。三田園警視は殉職された。その結果、2人共事故の記憶を失っているのに関わらず、カスピ海に行ってしまったんだろうな。」
結城の見解はこのようであった。北原と結城は、居酒屋を出ると外の喫煙所で煙草を吸い始めた。北原がライターを出して、結城の煙草に火を付ける。風で火が強くなると、結城は吸い込んだ煙を激しく吐き出すのであった。
「北原、、明日11時に成田だ。カリフォルニア空港へと向かう。便は12時半だ。村尾さん、、そして被害者の遺族達も来る。カリフォルニアに、海洋大学の研究部の本部が設置されている。いいか、、その本部は間違いなく情報を握っている。突き止めんとな。」
翌日の11時に空港に到着すると北原、村尾、結城の3人の刑事と公安警察、海上保安庁の庁員ら12人で集まったのだった。結城は、写真を眺めていた。
飛行機が飛び立ち、村尾は、結城と隣の席になった。そこには娘達と、村尾の娘が映ったゼミの集合写真であった。
「楽しそうな写真でしょう。娘達にとっては思い出の写真ですよ。」
「結城、、俺はもう思い出したくないんだ。頼むから見せないでくれ。絶対に奴らの尻尾を掴んでやる。」
海上保安庁の職員の公平の父親である室田良作も飛行機に搭乗していた。室田良作は行方不明の公平の真相を掴むべく、公平が死んでない事を祈っていた。
「結城さん、、初めまして。公平の父親の、良作です。今回の事で、私も公平の事を信じようと考えていて、公平は、きっと生きていると信じています。だから、、一緒に真実に辿り着きましょう。」
そういうと良作は会釈をしたのであった。
「室田さん。こちらこそ、宜しくお願いします。絶対に尻尾を掴みましょうね。」
結城も明るく挨拶を交わすのであった。
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