第3幕ー6
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クワイガンとクロスはアクアポリス士官学校の授業に参加した。今日は銃撃演習である。この銃撃演習の指導教諭にはユーティス・ウェルデンバードが担当する事となった。ユーティス・ウェルデンバードはカスピ海戦争の時から前線で活躍していた銃撃の名手である。
射撃場で、mjdー32を連射していた。銃の轟音をヘッドホンでカバーしながら、的に向けて撃っていた。
「失礼します。ユーティス中尉、今日の訓練生は25名ですよ。あー、、また撃っているんですか。」
補佐官のルア・リンは、銃撃場へ入ってきた。
「あー、、ルア君、ノックくらいしたらどうなのかな?」
ユーティスはルアに気が付き慌ててヘッドホンを外した。
「しましたよ。私は、ちゃんと中尉の事も考えていましたし、気づかない中尉が悪いのでは?」
ユーティスは、ルアの反論に腹を立てた。
「んで、今日の訓練生は何人だい?」
ユーティスは、訓練生全員の履歴書に目を通した。1人気になる訓練生がいたようであったのでユーティスは、下を向くと、ルアに質問するのであった。
「全部で25名です。全員新人軍隊員ですよ。しかもそのうちの2人は元陸上人ですよ。軍隊員の中にはかなりの腕前を持つ銃撃の達人もいます。その名は、アルフレッド・ポー・ヴェン、かつてカスピ海戦争時代から、常に前戦で活躍していました。」
「ポーヴェン、、、金の弾丸か、、、」
ユーティスはその名に聴き覚えがあった。かつての戦争の時、何人もの魚人を倒し尽くした銃撃の名手であった、セヌティール・ポー・ヴェンの息子であったのだ。
ユーティスはクールであるのと同様情熱家でもあった。それを知っているのはヴァルデンスやベテルギウス、ベレドゥールなど一部の人間だけである。
やがてクワイガンら、訓練生達が入場してくるとユーティスは、喋り始めた。
「それではこれより銃撃訓練を行います。教官のユーティス・ヴェルデンバードです。宜しくね。かつて俺は、多くの戦場で常に死と隣り合わせにしながら銃撃を経験してきた。もちろん大事なのは、敵を撃つ事、自分の命を守るのは、最優先にしなければならない事だが、そればっかりでは、いつまで経っても成長しない。常にな、身構えてはばかりならその間に背後から、撃たれたり、手榴弾を投げられればそれで命はおしまいだ。臨機応変かつ、的確に、そして迅速に行動出来る能力を身につけることが重要だ。いいね。それではベテルギウス総合司令官より、銃撃の実技演習を実際に行います。」
すると総合司令官のベテルギウス・クロウリーが訓練場へ現れた。
「いいか訓練生共、無駄な事だと思うなよ。これからお前らに教える事はな、戦いの中の基本的な銃撃演習だ。まず視野をきちりと広げるって事だ。常に180度以上の視野を広げる事だ。戦場においては、後方から狙撃されたり、視野外から狙撃されたら命を落とす。だから撃つと言う事に時間を取られ過ぎた1分1秒が、命取りになるんだ。撃つ時の姿勢は必ず身体を曲げる事だ。照準を見過ぎない事だ。常に前方を確認する事だ。照準を定めてから時間をかけすぎた場合は、その時間が命取りになるんだからな。」
ベテルギウス・クロウリーは、試しにmdgー31を持つとかなり離れた位置にある的に照準を定めると撃ち尽くした。撃たれた弾丸は、的の真ん中を貫通した。そして薬莢が飛び散ったのだが、その音は、かなり小さく聞こえた。
「ベテルギウス大尉、、流石だわ!!」
クワイガンは感心した。やがてベテルギウスが、号令をかけると一斉に兵士達は銃撃を始めた。クワイガンは銃撃が苦手であった。照準を定めるのは、得意であったが体力がとにかく無かったのだ。
「おいクワイガンてめえそんな姿勢で撃ったら、敵にやられてしまうぞ。腰を低く、、照準をずらすな!!それからこれは全員に言える事だが、極力連射はすんじゃねえぞ!!本番の戦闘になった時に、連射する癖がついて仕舞えば、弾切れになって弾丸を取り替えるその数秒が命取りになる。極力一発で撃つ癖を立てろ!!いいかマシンガンじゃねえからな。これは普通の銃だ。」
遥か300mの先に的があった。その的を正確に撃ち尽くす1人の訓練生がいた。彼の名はアルフレッド・ポー・ヴェンだ。彼はかなり実戦をく経験済みであった。18歳の時に既に学徒徴兵に参加していた。そこでかなり鍛えられた。
「あんた、すげえな。俺なんか真ん中の的全然当たんねえよ。」
クロスは、銃の構えが基本的に人より劣っていた。彼は陸上人時代、軍人として訓練を積んでいたが、基本的には銃撃の腕は標準の軍人達より劣っていた。
「ごめん、、悪いが話しかけないでくれるかな。こっちは真剣なんだから。」
アルフレッドは照準を構えると取手を引き弾丸を撃ち尽くした。弾丸は真っ直ぐ飛んでゆき、的の真ん中の焦点を貫通した。
「すげえ!!!」
「ふん、これくらいどぉって事はねえさ。俺のあだ名はゴールデンブレッド。金の弾丸とか呼ばれていたのさ。確実に頭を撃ち抜く。あんな奴ら相手になんかしねえんだからな。」
アルフレッドは他の兵士達の銃撃を見下すように言い放った。アルフレッドの様子を見つめながらユーティスは感心した。確かにこの男なら、戦場で役に立つかもしれないと納得できたのであった。かつて自分の師であったセヌティール・ポー・ヴェンの血を引くアルフレッドは間違いなく戦場に必要だ。
「あいつやっぱり天才かもしれない。俺の部下に付けたいんだけどな。」
「ユーティスちょっと一本吸わねえか??」
「大尉、、いいっすよ。一本だけで」
ベレドゥール・ローデンベルグは、訓練生の様子を観察しに来ていたのか、マキシマムスピリットの煙草を用意した。この煙草はこの世界オリジナルの銘柄の煙草でありローデンベルグのお気に入りであった。この世界では、マキシマムスピリットはかなり高価であり、地上で言うアメスピに匹敵する。
「ユーティス、、あのクワイガンって奴はどうだ?銃の腕はどうだ?」
「いや、、彼は正直あまり上手でないですよ。まあ初心者なのが駄々見えですね。奴がどうかしたんですか??」
「いや、記憶を奪ったから、万が一、例の艦隊の事と7年前に沈没した難破船の事で記憶を取り戻しでもしたらどうすりゃあいいんだと考えてよ。それだけだ。あいつらは戦場というものの恐ろしさを解っちゃいねえ。ユーティス、俺もかなりスパルタでやってはいるが、お前は優しい。いいか、優しさなんて捨てる事だ。いいな。」
「わかってはいるんですけどね。大尉。これからミエスタへお向かいに??」
ユーティスは、質問した。なぜなら破滅の帝国の頭が3つある多頭系の鮫魚人達が遂にミエスタに姿を現したと軍本部から連絡が入ったのだ。
「ああ、厄介な事だ。しかも奴らはトリプルヘッドジョーズ。サメ魚人の中でも最も恐ろしく凶暴とされている奴ら。3つの頭で、人間を食い殺す恐ろしい悪魔みてえな奴らだ。俺たち能力者が行かなければな。もし普通の兵士たちが行けば確実に殺されるからな。」
ベレドゥールはタバコの火を消した。
「多頭系のサメ魚人の奴らはクローン軍まで率いているという話だそうじゃないですか。3つ頭が、100体、4つ頭が150体近くいるなんて事も。」
「あー。そうだ。だから特殊機動部隊を要請する。とてもじゃないけど、我々の手には負えないからな。」
べレドゥールは、完全に火を消し去り、1人車の方へ向かった。
(大尉どうか、身体の無理をせずに。)
ユーティスは、そんなべレドゥールの背中を見つめていた。
「それでは今度は、実戦的な訓練に取り掛かろうか。スリーーマンセルになってもらう。1人対2人で、そうだな。防弾チョッキを装着し、弾丸が、貫通したら負けという事だ。一種のサバゲーみたいなものだね。それでは始め。」
クワイガンは、デビンスと、アルフレッドと3人で、やることにした。
「俺は、アルフレッド。宜しくな。あんたら銃の経験は?」
アルフレッドは、クワイガンとデビンスへ質問した。
「実戦経験は全く無いよ。ただ、俺は負けることだけは嫌いなんでね。」
デビンス・ポーターは、アルフレッドからの質問に対して、プライドがありまくりの熱い気持ちを吐露した。
「果て、俺に勝てるかな。」
しばらくして、3人は、銃撃戦を開始した。
ルールは簡単で、2人で1人を撃つ。敵側は、2人に二発ずつ弾丸を撃った方が勝ちというルールである。
サバイバル形式で行われるが、アルフレッドは、既に姿を晦ましていたので、見つけるのが困難だった。
「畜生!!どこに行きやがった!!おい、クワイガン、回り道だ、左だ。奴の気配を感じる。」
「あー分かってるって。」
クワイガンは、左側の草むらに潜んだ。すると向こう側に何やら気配を感じた。
「おー、アルフレッドの奴、どうやら油断してるぞ。もらった。」
クワイガンは、アルフレッドの防弾チョッキ目掛けて、照準を定めて、弾を撃った。
しかし弾は外れてしまった。
「しまった。気づかれた。ヤベェ。逃げないと。」
クワイガンは慌てた。
「おいばか、あいつ何やってるんだよ。」
デビッドは、気づき慌てて、クワイガンを止めに入った。
しかし、既にその時点で、アルフレッドに見つかってしまった。
「2人とも見つけた。覚悟だね。」
アルフレッドの弾丸は、2人に直撃した。
「はー。負けちまったよ。叶わねえな。あんたには。」
「思ったより楽しかったなー。これからもよろしくな2人とも。」
3人の熱い友情がここで生まれたのである。
銃撃演習は1時間半程で終わった。これを何ヶ月か繰り返し今度は実戦で、撃つ練習をするのである。
「それでは終わりにします。お疲れ様でした。」
ユーティスは、号令を掛けた。
クワイガンは、ベンチに座り、休憩をしていた。
「クワイガン先輩お疲れ様です。これどうぞ飲んで下さい。」
アミャーダは、空き缶のコーラを渡してきた。
「これいいのか。ごめんな、アミャーダ
。」
クワイガンは、何やら申し訳ない気持ちになった。後輩の女の子に奢ってもらうというのは慣れていなかったのだ。
「いいんです。クワイガン先輩!!先輩みたいな人に憧れます。私ずっと何も好きな事が見つからない事もあって、だからこそ先輩のこととても尊敬しているんです。」
「俺は人に尊敬されるような先輩じゃないけどな。ありがたいことだ。」
クワイガンは、コーラを片手に飲み干した。
「次って学科だっけ?」
クワイガンは、ドリステンへ質問した。
「ええ、そうよ。まあ楽よ。あんなの聞いているだけでいいんだから。」
ドリステンの言葉にクワイガンの心は少し楽になった。
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